Old World Blues
旧世紀網膜博物館


 ここは何処?
『ここはBig EmptyBig Mountainに作られた、輝かしい科学の象徴。輝かしい挑戦を行ってきた科学者たちの総本山。新たな世界の担い手たちの家。解けぬ問題はなし、解決できぬ疑問はなし。世界大戦さえも、Big Emptyにとっては新たな挑戦に過ぎない。われわれは永遠の探求者だ』

 わたしは誰?
誰だっていいだろう。おまえが誰か、などということはこの場所では無意味だ。なぜならおまえは実験体であり、われわれが科学者なのだから』

 わたしは、誰?
”どうやら名前を入力してやらなければいけないようですね”
『なんでもいいだろう。Xだとか。おい、おまえはXだ』

 わたしは誰?
-名前だと本人が認識できるものじゃなきゃ駄目なんだろう-
*なんて我が儘なLobotomiteだ! 自分の立場を理解しているのかね?*
@[&#^.#]@
“そうですね、Dr. O。確かに彼女の持ち物に手掛かりがあるかもしれません。Dr. Klein、どうですか?”
『ああ、これだ。名前らしいものが読み取れるな。殆ど消えかけているが……、よし、おまえはCeciliaだ』



「わたしはCecilia………」
 Cecilia。
 その名前が自分の本当の名ではないことは確かなのに、不思議と懐かしい響きがした。

Welcome to the Big Empty

Cecilia
Lv. 1
S/P/E/C/I/A/L=4/10/4/5/8/6/3
Trait: Logan's Loophole, Wild Wasteland 
Tag: Energy Weapons Science Survival
Skill:
[S]: M.Weapon=12
[P]: E.Weapon=39, Explosives=24, Lockpick=24
[E]: Survival=27, Unarmed=12
[C]: Barter=14, Speech=14
[I]: Medicine=20, Repair=20, Science=35
[A]: Guns=16, Sneak=16
Perk:
Equipment: Patient Gown

 女が座っている。



 女といっても、立ち上がっても子どもほどの身の丈しかないような小柄な女である。焦げ茶色の瞳は大きく、幼い顔の造りをしており、一見すればまだ十代前半といっても通じそうな容姿である。だが肩まである栗色の髪の下の表情は幼さ以上のものを孕んでおり、その女が単なる幼い少女ではないということを示していた。

Trait: Logan's Loophole (レベル30制限)

(ここは……、どこ?)
 彼女は立ち上がった。というのも、座っている理由が解らなかったからである。なぜ座っていたのか、いったい何に座っていたのか、そもそもここは何処なのかさえも判らなかった。振り返ってみれば、己が座っていたのは清潔ながら冷たい感じのする長椅子である。ずっと座っていたためか、尻が冷たい。
 下半身に手をやると、彼女は自分が背中の開いたPatient Gownを着ていることに気付いた。太腿半ばまでしかないほどに丈が短く、しかも下着を着けていないので、恥ずかしい。しかし周囲には誰もいないようだし、Patient Gownを着ているならばここは病院設備を備えた場所であり、この服装は正当なはずなので、恥ずかしがることはないのかもしれない。

Added: Patient Gown


(身体が重い………)
 彼女は己の身体を擦った。どうも身体に違和感があった。
「手術跡?」
 薄らと目立たないが、目を凝らせば身体に切開の痕のようなものがある。指でなぞってみると、判り易い。
(手術したばかりなのだろうか?)
 彼女には、何も思い出せなかった。何も。自分が誰なのか、ここが何処なのか、何も。

 ぐるりと周囲を見回してみる。展望台のような場所で、硝子越しに地上の風景が見える。病院というよりは、まるで発電プラントか何かの工場のようだ。展望台のようなこの場所は、不思議な青い光に包まれている。
 展望台を一周してみる。ロッカーや長椅子のほかにはエレベータがただひとつだけあり、どうやらこれが展望台からの唯一の出入り口のようだ。意を決して箱の中に入ってみると、ボタンを押さずとも動き始めた。

(わたしは……、だれ?)
 エレベータを降りた先はドーム状の部屋だった。中央に、まるで戦術会議にでも使うようなボードコンピュータがあり、壁にはAuto Docなどの戦前機械が埋め込まれている。左右には更に部屋があり、右手側の部屋には冷蔵庫や植木鉢が、左手側の部屋にはさらに扉がふたつ続いていて、ひとつの扉は開けられなかったが、もうひとつの扉の先は、どうやら寝室のようだ。何処もかしこも清潔で、しかし生命の伊吹が感じられない冷たい空間だった。
 また、エレベータから見て奥方向にも通路が続いていた。彼女は憑かれたように歩いた。


(わたしは……、だれ?)
 通路を抜けてもうひとつエレベータを昇った先は、奇妙な空間だった。
 広々とした空間の壁はコンピュータに埋め尽くされている。見たこともないような高度な設備だ。そして中央には、奇妙な形状の機械が5つ。
『おい、Lobotomiteがいるぞ! Dr. Dala! この糞っ垂れが何か仕出かす前にどうにかしろ!』
 ひとつの機械が叫ぶ。モニタを三つ備えており、それぞれに左右の眼球と口の映像が映し出されている。不気味だ。


”Dr. Klein……、わたしの考えが正しいなら、この個体はどうやらあの個体のようです”
 と違う機械が言う。
『あの個体?』
”Vaultで拾ったあの個体ですよ”
『ああ、あれか』
”可愛いものじゃないですか。ほら、こちらを見ています。可愛いTeddy Bearです”

 女は躊躇った。機械たちは口々に何かを言っていて、彼女の言葉を聞く様子はない。それでも、目の前の機械以外に、応答してくれそうなものはない。
「あの……、ここは、どこですか? わたしは、だれですか?」
 決死の想いでの彼女の問い掛けに対し、機械が返したのはこんな言葉だった。
-Lobotomiteが喋った! 英語だ! こちらを認識しています!-
『ああ、確かに。このLobotomiteは脳がないにも関わらず、会話や感受能力を失わなかったようだ。元が元だからなのか、特殊な事例だな』


(脳がない?)
 そういえば、この機械たちは、Lobotomiteとか言ったか。ロボトミー。日常的に使用しない単語だが、彼女はその単語が意味するところを知っていた。戦前に、主に前頭葉を対象として行われていた脳の除去手術。

*Dr. Klein! 不可侵領域からの通信が……*
『またあいつか……』
 機械たちがざわめく中、彼女はぼぅっと考えていた。自分の脳は切除されたのか? 己の名も、過去も思い出せないのはそのせいなのか?

「久し振りだな、Big MTのThink Tankの馬鹿どもよ!」
 と背後の大型モニタに、目の前の機械たちとほとんど同じような、しかし所々が壊れて痛々しい機械の姿が映し出される。


「わしの可愛いRoboscorpionたちがおまえたちを殺すために這い回っているぞ! 全ての科学はわしの、このDr. Mobiusのものだ! がーっはっはっはっは、さらばだ!」

(脳が、ない?)
 ここは、どこ?
 わたしは、だれ?
 脳がないはずなのに、頭が酷く痛み始めていた。

Perk: Brainless (薬物耐性+25%、DT+5%)

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