かくもあらねば/33/04

The End

Si
Lv. 34
S/P/E/C/I/A/L=6/10/4/6/4/9/1
Trait: Fast Shot, Wild Wasteland
Tag: Guns, Repair, Survival
Skill:
[S]: M.Weapon=60
[P]: E.Weapon=30, Explosives=30, Lockpick=100
[E]: Survival=100, Unarmed=20
[C]: Barter=86, Speech=40
[I]: Medicine=30, Repair=100, Science=21
[A]: Guns=100, Sneak=90
Perk:
[S]: Strong Back
[P]: Sniper
[E]: Walker Instinct
[I]: Comprehension, Educated, Hand Loader, Jury Rigging
[A]: Cowboy, Nerves of Steel, Quick Draw, Rapid Reload, Run'n Gun
[Others]: Confirmed Bachelor, Finesse, Grim Reaper's Sprint, Gunslinger, Lady Killer
[Implants]: Agility Implant, Endurance Implant, Monocyte Breeder, Sub-Dermal Armor
Equipment: Lucky, Mysterious Magnum, Ranger Sequoia, Anti-Material Rifle, Flare Gun, Elite Riot Gear, Elite Riot Gear Helmet
Kuto
Lv. 44
S/P/E/C/I/A/L=3/6/3/10/4/7/9
Trait: Good Natured, Looser Cannon
Tag: Speech, Barter, Explosives
Skill:
[S]: M.Weapon=39
[P]: E.Weapon=35, Explosives=100, Lockpick=100
[E]: Survival=100, Unarmed=35
[C]: Barter=100, Speech=100
[I]: Medicine=65, Repair=50, Science=75
[A]: Guns=35, Sneak=100
Perk:
[S]: Weapon Handling
[P]: Mad Bomber, Splash Damage
[E]: Roughin' It, Travel Light, Tribal Wisdom
[C]: Ferocious Loyalty
[I]: Demolition Expert, Educated, Hit the Deck
[A]: Mister Sandman, Silent Running
[L]: Better Criticals, Mysterious Stranger
[Others]: Adamantim Skeleton, Black Widow, Cherchez La Femme, Explorer, Intense Training, Spray'n Pray
[Implants]: Luck Implant, Monocyte Breeder, Sub-Dermal Armor
[OWB] Brainless, Cardiac Arrest, Reinforced Spine
Equipment: A Light Shining in Darkness, H&H Tools Nail Gan, Red Glare+++,  Marked Patrol Armor

「わたしの友だちというのが、あなたが妖精だと言っていた女性であると言ったら、信じてくれますか?」
 Deivdeの北西部である。Ulyssesの本拠まであと少し。Eybotも案内をやめ、既にUlyssesのところへ帰還してしまった。あと少しで、Sumikaのことを引き合いにSiを騙したあの男の顔が拝んでやれる。制裁が下せる。


 だが目の前にも、Sumikaのことを知っていると騙る存在が現れた。
 Kutoは言った。彼女はBig Mountainという場所でSumikaに会ったのだと。その場所は戦前から脈々と研究され続けてきた科学技術の宝庫であり、Sumikaは記憶が欠損していたものの、人間の身体を得ることができたのだと。そしてKutoとともに、Siをずっと探していたのだと。
「信じられませんか?」
「信じられない」
 とSiが答えると、Kutoは視線を地へと伏せた。予想できていた返答だったのだろう。


「そろそろお休みになったらどうですか」
 とKutoは言って、火から少し離れた。Siは頷いて、寝袋に転がり、少しの間星空を眺めてから、寝た。四時間ほど寝てからKutoと見張りを交代して、それからは火の番をしていた。銃をひとつずつ分解して、清掃した。太陽が昇る頃、Kutoが目を覚ました。簡単に食事を取ってから、襲い掛かってきたMarked Manたちを蹴散らして、Ulyssesの本拠へと向かった。


Discovred: Ulysses Temple

 Ulyssesの本拠地、どうやらミサイル発射のためのサイロらしきその施設にはロボットやタレットが設置されていたが、これまで相手にしてきたMarked ManやDeathcrow、Tunnelerたちに比べれば全く問題にはならなかった。
 内部を探索したSiたちは、ED-EとかいうEybotと同種のEybotが保管されている場所に辿り着いた。SiとKutoを案内してきた、あのEybotだ。Kutoが急いだ様子でそれを解放する。


「Transportalponderがない………」
 とEyebotのコンテナを開けて確認していたKutoが暗い顔で呟く。
「なんだ?」
「Ulyssesに奪われた、あの銃です。あれがないと………」
「大切なものだとか言っていたが、ありゃなんなんだ」
「あの子がいる……、Big MTにワープするための銃です」とKutoはEybotのコンテナを閉じて答える。「Big Mtは、徒歩で行けるような場所じゃありませんから、あの銃がないと………
 Siはただ、頷いて返した。そうか、とも、まだそんなことを言っているのか、とも言えなかった。


 さらに進んだ場所に、ミサイルの発射場があった。ミサイル射出のための管制コンピュータ、廃棄された弾頭、そして発射台にセットされたミサイルが目に入る。そのミサイル発射台の前に、コートを着た男が立っていた。
「ついにここまで辿り着いたか、Kuto」
 振り向いたその男の口には、放射性物質を吸い込まないための防塵マスクが嵌められていた。そしてその声は、紛れもない、いままでEybotを通して聞いてきたUlyssesのものだ
「Kuto、おまえはDivideを見てきた。あれがおれの家だ。おまえのおかげで崩壊した、おれの帰る場所だ」
「Transportalponderを返してください」
 Ulyssesから10mほどの距離をとった場所から、Kutoが強い口調で言う。
「あの銃は、おまえが家に帰るためのものだろう。かつての家、おまえが生まれ育った家ではなく、いま、安寧の地としている家だ……」Ulyssesは、ただKutoだけを見つめて言う。「おれの家はこうなった。感謝しているんだ。嘘じゃない。おかげで、何をすべきか知ることができた。おまえが運んできてくれたもののおかげで」


「Transportalponderを……」
「だからおれは、おまえにも同じ想いをさせてやりたい。おまえを感動させてやりたい。だから、あの銃はもう使う必要がないんだ」
「おい」とSiはふたりの会話になっていない会話に割り込む。「ミサイルが発射態勢に入っているな。何処に撃つつもりだ」
「まさか………」Kutoは珍しく、色をなくした表情で呟く。「Big MT?」
 UlyssesはSiを無視して、Kutoに語りかける。「なぁ、Kuto。自分の家が滅茶苦茶になったとき、おまえは何を思う? 何を感じる? たぶん、おれと同じ想いを抱くだろう。おれと同じになるんだ

 SiとKutoは、同時に銃を抜いて、言った。
「Ulysses……、あんたを殺す」
 Siの.45-70ガバメントとKutoの.45オートからほぼ同時に発射された弾丸は、いつの間にか投げつけられていたFlush Bunに突き刺さっていた。


 閃光が降り注いだ瞬間、Elite Riot Gear Helmetの機能で光量の絞られたSiは、ほとんど経験的に横へと跳び退りながら、Ranger Sequoiaの残り4発の弾丸をめくら撃ちした。その行動は間違っていなかった。相手が反撃してくるのが早すぎただけで
 Siは頭に衝撃を受けて吹っ飛んだ。背後にあったミサイル発射コントロールパネルに叩きつけられる。
 弾丸の雨がやってきた。SiはKutoと違ってElite Riot GearとElite Riot Gear Helmetに身体が守られているとはいえ、それにも限界がある。弾丸は肉に食い込み、血が流れた。
 それでも安定しない視界の中、Siは.44口径のMysterious Magnumを抜き撃った。

 狙い違わずUlyssesの顔面に突き刺さった弾丸は、しかし彼の命を奪うことまではできなかった。
「.44口径だぞ………」
 信じられない思いでSiは吐き捨てた。
 弾丸はUlyssesのマスクで止まっていた。火薬の量を増した.44口径の衝撃を全て頭に受けて、しかしUlyssesは首の骨が折れるどころか仰け反ることもなく、踏みとどまったのだ。

 Siは横で倒れているKutoを抱えてコントロールパネルの陰に隠れた。
 Kutoが頭から血を流していた。もう、駄目だ。まだ身体は温かいし、重要臓器が傷つけられたわけではない。だが、脳がやられたのだ。もはや、Auto-Docに連れて行っても無駄だ。死んだのだ。
「糞っ」
 周囲からEybotやMarked Manたちが集まっていた。このミサイル発射場の全ての生き物が、機械が、Siに敵意を向けているように感じられた。
「Ranger、おまえはKutoと反目していたのだろう?」
 Siは弾丸の嵐を掻い潜りながら、Marked ManとEybotを撃退していった。ひとり、またひとりと倒しながらも、Siの身体が傷ついていく。その中で、脳を無理矢理に鷲掴みにするようなUlyssesの言葉が聞こえた。


いまだったら、逃げられるだろう。ああ、勿論Marked ManやEybotに囲まれているし、ここから逃げられたとしてもおれは追っ手を差し向けるだろう。だが、おまえはひとりなら逃げ切れるはずだ。10年経ったとしても、Rangerとしての実力は衰えていないはずだ」
 .45-70ガバメント弾を扱うRanger Sequoia、.44口径のMysterious Magnum、そして.357口径のLucky。友から預けられた拳銃たちは、これまでSiを何度も守ってきた。いまも。
 だが今回ばかりは、あまりに相手が多すぎた。


「Kutoの言葉を信じているのか? おまえの妖精が、Big MTにいるとかいう世迷いごとを……」くっくとUlyssesが笑う。「ああ、おまえは正しい。正しいよ。妖精はいる。だが、じきに死ぬ。ミサイルじゃあ殺せないだろうがな。Kutoに言った、Big MTを狙っているというのは嘘だ。このミサイルじゃあ、航続距離が足らない。狙っているのはMojaveだ。だが、このTransportalponderがあれば、話は別だ」

 Ulyssesは玩具のような、青い筒を背負った銃のようなものを取り出した。KutoがTransportalponderとかいっていた、Big Mtへワープするための装置。妖精がいる場所へ、辿り着くための道具。

「Si、その銃はLuckyという名だというのを覚えているか?」
 戦いの最中、Siが思い出したのはDidi、かつて幼い頃に生きる道を指し示してくれた少尉の言葉だった。



 彼とはHoover Damの戦いが終わったあと、一度だけ会った。戦前技術によって、彼の失われた視覚は復活していた。SiとDidiは、失った時間を埋めるように語り合った。
Luckyには、所有者を守る魔法がかかっている。おれがかけた。おれの中には、1/16だけインディアンの血が流れていて、1/8だけアイルランド人の骨が埋まってるからな……、魔法は得意なんだ」とDidiは一度笑ってから、真剣な表情になった。「おれだけじゃない。Johnnyとかいうおまえを拾った人がくれた.44口径も、Rangerから貰ったっていう.45-70ガバメントも、同じだと思う。おまえを、おまえとTinkerを守るために、魔法をかけた。それを忘れないでくれよ」

 SiはLuckyを抜き、撃った。忘れなかった。だから迷わなかった。


 .357口径の弾丸は、狙い違わずTransportalponderを握るUlyssesの手を射抜いた。
 床に落ちた玩具のような銃を回収するために、Siは走り出していた。Ulyssesが12.7口径のサブマシンガンを向けるのが見えたが、それでも躊躇しなかった。

 Siはこれまで生きてきて、学んだことがひとつある。
 それは、昨日までの自分と今日までの自分が同じとは限らないということだ。
 自己連続性のような、殆ど自明とも感じられるが、確かめようのない形而上学的な問題は、きっと戦前の哲学では何度も何度も議論されたことなのだろう。既に論理的な合意も得られているのかもしれない。
 だがSiは、生きる中でその結論に辿り着いた。

 30年ほど前、Siには「かくあらねば」という夢があった。
 あのときは、夢はこれしかないと思った。かくあらねばと思った。だから、その夢が失われたとき、すべてが終わったと思った。あと為すことができるのは、復讐だけだと思った。

 しかしいつも同じ自分だったかといえば、そうではなかった。いろいろな自分がいた。その中で、その瞬間瞬間で、考えて、進んできた。失敗することもあった。それでも前に進んできた。経験を積んで、変わった。新たな夢を抱いた。
 人は変わる。
 Kutoも、10年前の彼女と同一だとは思わない。ただ、同一だと考えていたほうが都合が良いから、同一のものとして扱っていただけだ。だから、彼女のことがけして信用できなかったわけではなかった。むしろ敵だらけのこのDivideで、彼女の存在は心強かった。信じられなかったのは、彼女の語った技術だけだ。いまのSiにとって、Kutoはただの女だった。
 そしてそのただの女が困っているのならば、たとえ既に死んでしまったとしても、助けてやらなくてはいけない。

 SumikaはSiが人助けをすることを好んだ。
 個人による人助けは自己満足だが、他人の人助けを喜ぶのはSumikaがSiのことを想っていてくれたからだ。善い人間になれるように。
 彼女の期待に、Siは応えたかった。
 だから拾い上げた玩具のような銃、Transportalponderを拾い上げて、それを弾丸から守るためにKuto目掛けて投げた。何が為されるというわけでもない。ただ、Ulyssesのもとにこの銃を置いていては駄目だと思ったから。Big MTという場所を壊してはいけないと思ったから。

「終わったな」
 12.7口径のサブマシンガンから発射された無数の弾丸がElite Riot Gearを破壊して、Siの身体に突き刺さった。
 手が撃ち貫かれた。もはや反撃は叶わなくなった。
 足が砕かれた。逃げることさえもできなくなった。
 だから、終わったな、という感想は、われながら適当だと感じた。


「いいえ、まだです」
 銀髪の女が立っていた。
 銃弾は頭を貫通していて、しかも12.7口径、つまり0.5インチに相当する大型弾だ。脳はぐちゃぐちゃなはずなのに、Kutoは両の足でしっかと立ち上がり、Siの投げたTransportalponderをキャッチしていた。


 彼女は銀色の銃を構えた。
 魔を滅ぼす銀色の弾丸は吸い込まれるように、驚愕の表情のUlyssesの頭部に突き刺さった。妄執に憑かれた男は仰向けに倒れ、動かなくなった。


「Kuto………?」
 Siは目の前の光景に、信じられない思いでKutoに言葉をかける。Kuto、おまえ、と。
「痛ぁ………」と彼女は恐る恐るという様子で自分の頭の傷口に指をやる。「うわぁ、やばい、すごい穴空いちゃってるような………」
「おい、Kuto、おまえ………」
「あー、すいません、牧師さま、驚かせちゃいましたね………」とKutoはこちらに歩み寄りながら、軽く笑った。「実はBig MTってとこで脳を取っちゃったので、このくらいの怪我なら平気なんです。どうです、わたしが言った技術のこと、信じてもらえました?

Perk: Brainless (頭部の重傷を受けない; Kuto)

「この光景を見て、信じないやつはいねぇ」
 Siは差し出されたKutoの手を握り、立ち上がった。身体中が痛い。全ては現実だ、とSiは思った。やっぱり人は変わるものだな、とも。


 そのあとは、いろいろと大変だった。
 Ulyssesが死んだが、Marked ManやEybotたちは撤退しなかった。牧師は重傷で動けず、KutoがRed Glareのロケット弾で全員を爆殺した。
 しかもUlyssesは置き土産とばかりに、ミサイル発射のコードを実行していた。ミサイルの目標はBig Mtではなく、Mojaveだったが、放っておくこともできなかった。幸い、ED-Eに似たEybotの機能で、ミサイルの射出シークエンスを止めることができた。Eybot自体は犠牲にはなったが。Kutoは少しだけ、10年間のパートナーだったED-Eのことを思い出した。


 牧師にはTranspotarponderを渡して、一度別れた。Big MTに一度に転送できる人数はひとりだけなので、Sumikaが健康診断でSinkから動けない以上は、牧師に直接出向いてもらうしかない。

「ああ、そうだ。名前、聞いていいですか?」
 と別れ際にKutoは訊いた。
「Siだ。Silas Makepiece
「かっこいい名前ですね」
「よく言われるよ」
 そう言って、Siは笑ったのを覚えている。

Perk: Divide Survivor (SPECIAL+1)
         Kuto: Luck 9→10
         Si:     Luck 1→2

 SiはUlyssesに呼び寄せられるまでは、南部の村で牧師をやっていたというから、きっとその村に戻るのだろう。Ceciliaも一緒に。ひとり旅の多かったKutoだが、Ceciliaとは仲良くやれていたと思う。それだけに、彼女との別れは少し寂しく感じた。
 とはいえ今生の別れというわけでもない。生きていれば、また会える。Siとも。


 Kutoは崖の少し高くなったところから、朝陽が昇るのを見ていた。今日も一日が始まった。
 そして今日の新しい自分も、たったいま始まったのだ。

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