第三行
The Ghost Haunts at Midnight
真夜中のお楽しみ

Name: Azalea
Clan: Toremere
Sex: Femele
Disciplines: Auspex (1), Dominate (1). Thaumaturgy (2)
Feats:
-Combat: Unarmed (1), Melee (1), Ranged (2), Defense (2)
-Covert: Lockpicking (2), Sneaking (3), Hacking (2), Inspection (3), Research (3)
-Mental: Haggle (2), Intimidate (2), Persuasion (2), Seduction (4)
-Soak: Bashing (1), Lethal (0), Aggravated (0)
Equipment: Tire Iron, Light clothing
Humanity: 10
Masquerade: 5

 Azaleaはここ数十分ほど、「ああ」「神さま」「Arthur」の3語しか喋っていない。両の手を胸の前で組み、殆ど祈るような調子で歩を進める。何か物音がするたびにびくりと震え、二、三歩あとずさってから祈りの言葉を呟く。
「ひっ」
 声にならぬ声が漏れたのは、背後で物が倒れる音がしたからだ。振り向けば、花瓶が落ちて粉々に砕けていた。室内で風もないのに、どうして?
 その理由を、Azaleaは知っている。


 場所はOcean Houseホテル。既に閉鎖され、現在では下水道を通じてしか行けなくなったホテルである。
 Azaleaがこの場所を恐れている理由と、この場所を訪れた理由はほぼ同一だ。
 このホテルには、幽霊が出る。

「そう、本物の幽霊
 とAzaleaにこのホテルに行くように依頼をした人物は言った。彼女の名は、Therese Voerman。クラブ、Asylumのオーナーである。
 Azaleaはこのホテルにやって来る前、Bertram Tungの居場所の手掛かりを訊くために、彼女のもとを尋ねたのだ。
妹が失礼したわね。あの子はああいう子だから………」
 とAsylumの2階、オーナー室で出迎えたThereseは言った。彼女はAzaleaがPrinceの命令で動いている吸血鬼であることを知っていた。
「いえ……、Jeanetteのことだったら、べつに
 とAzaleaは応じた。JeanetteというThereseの妹には、Asyumのバーで話しかけられたのだが、正直なところをいえば苦手なタイプの人間だと感じた。

「それで、Tungのことなんだけど……」とThereseは話を本筋に戻した。「あなたにTungの情報を渡すだけじゃ、わたしにとってはメリットがない。だから取り引きといきましょう。わたしの抱えている厄介な仕事を、代わりに対処してほしいの
 すっぱりと切り出すThereseを見据えて、AzaleaはMercurioによる3人の人物評を思い出していた。


Thereseは力のある女だ。美女で、だが肝が据わってる。Jeanetteのほうは……、Thereseとはだいぶ違う。おれはThereseのことは好きじゃないが、彼女の生き方は尊敬してる。だがJeanetteは……、あんまり良い噂がない。一言でいえば、野生的な、蟲惑的な女だよ。こういう言い方はなんだが、男をベッドに連れ込んで無理矢理によろしくやるような女だ」
 たぶんそのときMercurioはAzaleaのことを、Jeanetteとは程遠いような女だと思っているのだろう。見た目にも、ちっぽけで、痩せていて、胸もないし、たぶんコールガールをやっていたと言っても信じてもらえないだろう。
「Bertrain Tungのことは知らん。だがThereseと競い合っているだけはある。悪い噂は聞かないくらいの、やり手な男だ。この3人をあんたは相手にするんだ。気をつけるんだな」

 Azaleaは深呼吸をしてからThereseの瞳を見据えた。
「話を聞かせてください」
 ありがとう、と言いながらThereseはコーヒーをポットから注いでAzaleaに寄越した。「仕事っていうのは幽霊退治
「幽霊退治って、どういうことですか?」
 Azaleaはコーヒーにミルクをなみなみ、砂糖をたくさん入れて掻き混ぜる。


そのままの意味……、って、あなたはまだ産まれたてだったわね……。忘れていたわ」Thereseはブラックのまま、己のカップに口をつける。「幽霊だとか、狼男だとか、木乃伊人間だとか、そういう生き物……、生き物といっていいのかどうかは判らないけど、そういう存在は確かにいるの。幽霊の類は、生前の所有物をその執着している場所から取り除けば消えるって云われている。あなたに頼みたいのは、そのこと。Ocean Houseホテルってところに行って、幽霊の遺品を取ってきてほしいの」
 Azaleaはコーヒーを少し吹いてしまった。零すことはなかったが、喉から鼻の穴に入った。噎せる。
「お化けは苦手?」
「そういうわけじゃあ………」
「じゃあ、よろしくね。取り引き成立
 そう言ってThereseは下水道の鍵を渡した。Ocean Houseホテルへの道は既に閉鎖されているため、下水道を通じてしか行けないらしい。

Retrieved: Sewer Key

 Azaleaは下水を通ってホテルへ向かった。ホテルの入口の鍵は閉まっていたが、解体用の簡易管理施設なのであろうプレハブに、入口の鍵があった。



Retrieved: Ocean House Front Door Key

「雰囲気あるなぁ………」
 などと強がれたのも最初だけだった。


 何せ、暗い。変な物音がする。物が動く。
「Arthur………」
 かつての恋人の名を呪文のように唱える。怖い、助けて、Arthur。

 そんなふうにおっかなびっくり探索をしていたところで、目の前が急に真っ暗になった。物凄い物音がし、浮遊感。すぐに足元に衝撃。
 Azaleaは慌てて血力を総動員する。

Discipline: Auspex (Wits+1)

 Auspexによって明るくなった視界で、Azaleaは周囲を見渡した。足元に木の破片が散らばっている。上を見ると穴が空いていて、そこだけ明るい。どうやら腐っていた床板を踏み抜いてしまったらしい。怪我はしていない。
 上まで昇るのは無理そうだったので、そのまま探索を続ける。この階は地下室のようで、一階よりもさらに薄暗く、怖い

 Auspexの視界を以ってしても、世界がまったく明るく見えるわけではない。恐怖は和らがない。Azaleaは背中を壁につけ、ほとんど張り付くようにしてゆっくりと移動した。
 そんなふうに緊張していたから、通路の十字路で、こちらに向かってくるような足音を聞き逃すことはなかった
(誰かいるの………?)
 警戒するAzaleaの目の前を女性が通り過ぎた
「あのっ……!」
 Azaleaは通路を曲がって、女性を呼び止めようとした。
 だがそこには誰もいなかった。


 ぎくりとした。いままで不審な物音や振動はあったが、ここまではっきりと幽霊を見るのは初めてだったから。

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