(あれは……、Vertibird!?)
 戦前の飛行機械だ。昔、つまりVaultに入る以前のことだが、雑誌で読んだことがあったため、Lynnはすぐにその機械の名前を思い出すことができた。確か、『これが最新兵器だ!』とかいう題だったか。


 中から出てきたのは、以前に見たBrotherhood of Steelによく似た鋼鉄の鎧、Power Armorを着た人々であった。BOSのものより、威嚇的なデザインに見える。手に手に銃を携えており、無駄のない動きを考えても、軍隊の兵士であろうことは間違いない。
 彼らは排水溝の中にいるLynnには気づかず、規律のある動きでJefferson記念館に入っていく。

(Jamesたちが危ない!)
 Lynnは直感的にそう思った。早く戻らなくては。
 来た道は、なぜか排水溝の蓋が開かず、戻れなくなっていたが、もう一方のロックが解除されていた。殆ど転がるようにして、排水溝を降りる。


 急に足元の感覚が無くなる。
 Lynnは宙に放り出されていた。

 まずい
 そう思う間もなく、叩きつけられる。幸い、下は床ではなく、地下の貯水池になっていた。放射線は心配ではあるが、とりあえず怪我は無い。全身痛いが、動ける。大丈夫だ。
 貯水池から、這いずるように出て、深呼吸。頭が冷えて、しかし次の瞬間には心が凍った。

 頭に冷たいものが押し付けられていた。Energy兵器の銃口だった。
「施設内で人間を発見。確認に入る」
 銃をLynnに突き付けていた男は、外から見たときのようにPower Armorを着ていて顔が見えなかったが、声は聞こえた。冷たい言葉を吐くなり、Lynnを蹴りつけてきた。壁まで吹っ飛び、仰向けに倒れる。
「男。十代後半から二十代前半。主任研究者ではないことを確認。助手の一人と思われる。対象ではないため、処分する
 引き金を引くのに、一瞬の躊躇もなかった。レーザーの発光が見えるその前に、Lynnは通路に飛び込んで逃げた。レーザーは足の皮膚を焼いたが、致命傷には至らない。

「くそ、変身………、変身だ」
 Lynnは足を引きずって通路を逃げながら、譫言のように呟く。変身さえ、変身さえできれば、倒せるのに。
 だが、危機に面しても、どこもかしこも変わらない。なぜ。

 Power Armorを着た男が追ってくる。傷む足では、逃げられない。戦うしかない。だが、変身もできないのに、どうやって?
 Lynnの目に飛び込んできたのは、部屋の真ん中で死んでいたSuper Mutantであった。Super Mutantの、その腕。その腕に握られている、Combat Shotgun。
 
 Power Armorが迫っていた。
 通路からPower Armorの頭部を覗かせたその刹那、LynnはSuper Mutantの死体が握っていたCombat Shotgunを掴み、Power Armorの男に向けた。頭に撃つ。跳ね返る。撃つ。崩れる。撃つ。撃つ。撃つ。


 Power Armorには、一切の外傷は無かった。だが、Power Armorの男は崩れ落ちた。
 動かないそのPower Armorの隙間から、どろりと血が溢れ出てきた。弾丸の衝撃が中まで貫通し、首が折れたか千切れたかしたようだ。


 Lynnは足を引きずって、地階へと上がる。
 だが階段を登り切ったところで、再度Power Armorに出くわした。先ほど倒した男と同じく、威嚇的なデザイン。同じ言葉。同じ攻撃。銃は落としてしまい、今度は逃げられそうもなかった。

 だがレーザーがLynnを射抜くことはなかった。逸れた銃口から伸びた光は、天井を焼いた。
 攻撃を妨害したのは、一匹の立て耳の犬だった。飛びかかってきたDogmeatが、Power Armorの男の銃に噛みついていたのだ。
 まさしく言葉通りに歯の立たない相手立ち向かったDogmeatは、すぐさま振りほどかれ、床に叩きつけられた。哀れな鳴き声を上げて気絶する。

 Power Armorは何事も無かったかのように銃を構え直すと、まずDogmeatを焼き払おうとした。
 鼓膜が破れそうな射撃音が響く。

 Dogmeatは気絶したままだったが、何処にも穴が開いておらず、焼け爛れてもいなかった。
 Energy兵器がこんな射撃音を響かせるわけないのだから、Power Armorの男が撃ったわけではないのは当然だ。男は、殆ど側転するように吹き飛んでいた。
 Lynnはその瞬間を見ていた。彼のPower Armorのヘルメットに、鈍色の弾丸が突き刺さるのを。

 弾丸の斜線を辿れば、赤い肌の少女がSniper Rifleを構えていた。

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