■ザインの使徒と二十の命

 そもそもラストクロニクルにおける対戦(未だこの行為の名称はない。まさか「プレイ・ザ・ゲーム、メイク・ア・ドリーム!」じゃないだろう)が如何なるものなのかといえば、クロノグリフの記述を決定する行為である。

 クロノグリフという名称の元ネタがヒエログリフであることは、開発ブログでも述べられている。もっともヒエログリフとは古エジプトの世界最古といわれる文字で、クロノグリフと直接的な関係があるわけではない。
 クロノグリフに関して連想するなら、むしろアカシックレコードが近い。アカシックレコードは森羅万象、全ての物事が記録(というより、予録)されているハードディスクのようなものだ。簡単にいってしまえば、運命である。

 アカシックレコードとの相違点はといえば、クロノグリフには空白の頁があるということだ。


1-158C 《トウアの技術教本》
「世界中で、ザインが作ったクロノグリフの次に文字が多い本はなに?」
「こいつさ」
~トウア学院の伝統的な冗談~

 クロノグリフを作成したのはザインだが、なぜこの空白の頁が存在するのかは明言されていない。
 重要なのは、この空白の頁こそがラストクロニクルの時代1〜4であり、この空白の頁に書き込むために、プレイヤーであるザインの使徒は戦うことになるということである。
 空白の頁には自由に書き込めるわけではなく、この時代のアトランティカで覇権を賭けて争っていた5大国のいずれかに肩入れして、クロノグリフの記述を決定していく。わかりにくければ、お気に入りのアイドルグループを勝たせるために戦っていると思えばよい。

 プレイヤーはザインの使徒であり、神に近しい亜神ということになる。
 クロノグリフの記述を行おうとしている使徒はほかにもおり、つまりそれが他のプレイヤーだ。
 ザインの使徒同士は直接戦うことはないが、クロノグリフに記述を行う(=カードをプレイする)ことでアトランティカの記述を確固たるものにしていく。
 だがクロノグリフの記述を利用して、相手に攻撃を行うこともできる。


1-123C 《ダークブラスト》
神殿が不可侵のものではないように、ザインの使徒たる亜神にも死という概念はある。軍勢を率いるということは、それらと同じ地平に降りてくるということなのだから。

 《ダークブラスト》のイラストは、神殿(というより教会?)がダークブラストの魔法によって浸食される様子が描かれているが、フレーバーではこれに関連して、ザインの使徒にも死が存在するということが示されている。

 クロノグリフの記述を完璧なもののにしたところで得られるものが何なのか、それは語られていない。
 だが20の命を失った先にあるものは、死だけだ。
 だから負けるわけにはいかない。


■オーラと覇力

 オーラとは何か?
 これに関しては公式ハンドブックに詳しいが、簡単にいえばクロノグリフの記述を捩じ曲げる(覆すわけではない)だ。
 運命に抗う力といってもよく、だからオーラを持つユニットはクロノグリフの記述通り(=単純なPowerの比較通り)にはならない。


1-141C 《跳躍するヘルネブ》
誰よりも高く跳ぶ秘訣? そうだな、勇気だね。 重力にじゃなく、運命に逆らう意志のことだよ。

 運命に抗う力、オーラ。
 イースラでは覇力と呼ばれるこの力が比較的一般に認知されているらしいことは、《覇力発生装置》のフレーバーを見てもわかる。少なくともクロノグリフは研究対象になりえるものであり、ザインの使徒の戦いも、完全に知覚の外というわけではないのだ。


1-159C 《覇力発生装置》
クロノグリフの力を研究する学者たちは、苦心の末に奇妙な装置を作り出した。それは運命の力をねじ曲げ、魂を自由にするのだという。

 オーラの力は、クロノグリフの記述争いに関していえば、実をいえばそれほど強大なものではない
 少なくともオーラに関与できない紫使いのザインの使徒は、それを理解しているだろう。

 オーラはクロノグリフの記述を捩じ曲げる。だが、そこに関与できるのは己のみだ。
 国家全体がクロノグリフの記述を捩じ曲げたのであれば、その国は他の国家よりも優位に立てるだろう。
 だが個人がクロノグリフの記述を捩じ曲げるというのは、飛んでくる矢の軌道を捩じ曲げるようなものでしかない。

 飛んでくる矢の軌道を捩じ曲げても、その矢は止まらないのだ。己には当たらないかもしれないが、後ろにいる誰かに当たる。
 だから、クロノグリフの記述争いに関して、オーラが支配的というわけではない。

 それに、クロノグリフの記述を書き換える力は、オーラのみではないのだ。

■英雄は死なない

 クロノグリフによる支配とそれを破る力は基本的に3種類に分けられる。
 ひとつは上に挙げた通常のクロノグリフの記述による拘束と、それを打ち破るオーラ

 ひとつは時代拘束。つまりユニットのレベル(=クロノグリフに記載されている登場年代)が時代(クロノグリフの記載頁)に達していないならば、行動ができないという拘束だ。
 これもオーラのように、《時の捻じれ》などの魔法で断ち切ることができる。

 最後は存在の束縛である。
 つまり、存在しているはずのものしか存在していないという、至極当然のことを述べる縛りだ。
 しかしこの効力でさえも、ザインの使徒たるプレイヤーは、捩じ曲げることができる。まるきり存在しているはずのないものを存在足らしめることもできるのだ。


1-026U 《聖戦の祝福》
この世界にはときとして、クロノグリフの記述にはなかった新たな英雄が誕生することもある。祈りと想いが、剣や盾と同じ力を持つ魂の世界であるがゆえに。

 召還英雄とは、クロノグリフの記述から外れた人物のことである。
 より正確に記述するなら、クロノグリフのこの世界(=アトランティカ)の項に記載がない人物というべきだろう。

 ゲーム中における時代1〜4というのは、そもそもクロノグリフに記述がない空白の頁であることは先に述べたが、前後との関連性がないわけではない。
 また、ゲーム中ではゲームの使用上、時代1~4は連続しているが、これに相当するページは連続しているわけではなく、散らばっているのだ。
 だから如何に空白の頁があろうとも、そこに登場するべき人物は登場するべくして登場する。

 しかし召還英雄は、その前後のクロノグリフと照らし合わせてみても、明らかに不自然な人物として登場する。
 それもそのはず。彼らはその呼称の通り、別世界から召還されてきた人物だからだ。
 アトランティカが存在するのはヴァルハラ宇宙の中で、召還英雄の記載があるのはヴァルハラ宇宙の別の世界である。同じ恒星系にある別の惑星から連れてこられたようなものかもしれない。

 《聖戦の祝福》のフレーバーでは、こうしたクロノグリフの記述にはない召還英雄の存在が、グランドールでは祝福として受け入れられているということが述べられている。
 亜神であるザインの使徒の戦いについて、アトランティカの人々がどの程度まで理解しているのかは不明だが、少なくともザインの使徒がクロノグリフを捩じ曲げて召還する英雄たちの立場はある程度理解しているようだ。


1-079S 《ハンニバル・バルカ》
気づくと、彼の愛した祖国、苦難をともにした兵士と戦象たちの姿は消えていた。だが、彼の知る地図にない国々、そして見たこともない戦いのありさまは、その鋼のような心に新鮮な闘志をかきたてた。

 一方で、その召還された人物がどういう状態かというと、そもそも彼らの存在は魂の再現であり、同一存在ではないとハンドブックでは述べられている。
 ある意味当たり前で、カルタゴの歴史書では戦場に出てきた途端に速攻で敵一体をブロック不可能にする《ハンニバル・バルカ》なんて描かれていない(もっともこの効果自体、ゲーム的なものであり、アトランティカでも実際には軍師としての《ハンニバル・バルカ》の作戦がブロック制限として再現されているのだろうが)。
 
 ところで、アトランティカ側では召喚英雄という存在が認知され、受け入れられているというのは《聖戦の祝福》で見たが、召喚英雄側ではどう感じているのだろうか?

《ハンニバル・バルカ》のフレーバーからは、彼には以前の記憶が(完全なものではないだろうが)あるということを示している。
 しかも戦う覚悟を決めているということは、ザインの使徒によって、ある程度の指向的な思考を植えつけられている状態なのだろう。天啓を受けているような状態なのかもしれない。

 ところが《真田幸村》の場合は、連れてこられた、というのとは少し違う。
 彼は自分の死(もしくは死にそうな状態)を自覚しているのだ。


1-068R 《真田幸村》
彼は不敵に笑った。どうやらこの六文銭では、三途の川の渡し賃には少し足りなかったらしい……やがて彼は馬にひと鞭くれて、駆け始めた――再び、彼が愛した戦場を。

 先に述べたように、召喚英雄はあくまで魂の再現であり、そのものではない。だから死を自覚していることはまったくおかしくないのだが、「召喚英雄とは何か?」ということを考えるうえで、《真田幸村》のフレーバーは非常に重要なものだといえるだろう。

 もしかすると、召喚英雄というのは北欧神話でいうところのエインヘルヤルに近い概念なのかもしれない。

 北欧神話では、第二世界ミッドガルドで死した英雄は、オーディンの命を受けた戦乙女ヴァルキューリたちによって第一世界アースガルドへと運ばれる
 そこで彼らはエインヘルヤルになり、死んでもすぐに生き返る肉体を得、昼は互いに戦い、夜は宴会を開き、三度の冬のあとにやってくる炎の巨人たちを迎え撃つために剣と腕を磨くのだ(ちなみに《ブリュンヒルデ》はヴァルキューリのひとりで、彼女の物語はワーグナーの『ニーベルングの指輪』で語られる)。
 目的やその性能は大きく異なるものの、別の世界へと連れていかれ、そこで戦わせられる英雄というのは、北欧神話のエインヘルヤルそっくりだ

 ちなみにエインヘルヤルが訓練し、寝泊りをするのはオーディンの館で、ヴァルハラという名である。アトランティカが存在するのがヴァルハラ宇宙であることを考えると、召喚英雄=エインヘルヤルというのはあながち間違った考えではないのかもしれない。




2 コメント :

  1. 面白い! 最後のエインヘルヤルは、発想的に多分そのとおりでしょうね。
    そのうち、「実は女性だったアーサー王」とかがコラボで出てきそうな(笑)

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    1. 召還英雄=エインヘルヤルとすると、ザインの使徒(=プレイヤー)=オーディンというのが足枷になるかなー、と実は思ってます。
      一方的に連れてきて戦わせてるので、ザインの使徒はあんまり良い人ではありませんね。

      >>そのうち、「実は女性だったアーサー王」とかがコラボで出てきそう
      女性アーサー王というのは『Fate/stay night』でいいのでしょうか? (洋版『魔界転生』ということしか知りませんが)
      既に男性《アーサー》がいる状態での女性《アーサー》というのが召還英雄の設定的に可能なのか(召還英雄は魂の鋳型に現世での魂を流し込んだものですが、その魂が同一世界で複数存在し得るのか)はEPICシステムを考えても微妙なところですね。
      ただ、この世界の《アーサー》ではなく、ヴァルハラ宇宙の別世界の《アーサー》ということにすれば魂が複数存在しても問題がなくなるので、コラボでなくとも出てきてもおかしくはないかもしれません(実は女だった、というのは比較的ありがちな設定ですし)。

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