• 目次
    • 朝日が昇りそしてまた落ちる
    • 北の王が死んだ
    • 輝くもの天より墜ち
    • 5人の英雄と7200万本の剣
    • それはわたしと雀が言った




■朝日が昇りそしてまた落ちる

 少女の人生は、それまでも十分に非凡といえるものだった。
 五大国の一柱である聖王国グランドールの教皇、《聖女教皇 ファムナス》を母に持ち、予知の才があったことから幼い頃から教皇になることを使命づけられていた。
 《邪光の獣 ニルヴェス》の出現を受けて同盟を組んだイースラに、半ば人質のように留学させられた。
 そんなふうに非凡ではあったが、しかし少女は少女のままだった。もしこのまま、戦いが災害獣とだけしか行われていなければ、少女の名は歴史書に埋没したままだっただろう。


4-100R 《異変察知》
最初の異変は、トウア学院に遊学していたグランドールの姫巫女が感じ取ったそれであった。それはやがて、複数の巫女たちの幻視や予知夢にも波及していった。

 だがあらゆる災害を超える脅威の予知夢を見たとき、少女は《聖女教皇 ファムナス》の娘であるイルミナから、《予兆の姫巫女 イルミナ》になった。

 破壊の歴史はグランドールの《予兆の姫巫女 イルミナ》の予知夢から始まった。
 遅れてイースラの《アリオンの巫女》たちが災害獣を超える災害を予知し、その信頼度は徐々に高まっていく。


4-019R 《絆のメダル》
「夢を見るのです。光と水の間に結ばれし絆が、時を経て広がり、やがてはこの地をすべて束ねる希望の柱となる……そんな夢を。」
~アリオンの巫女~

 予知が現実になったことを最初に目撃したのは、グランドール、アリオンの《慈光塔の番人》であった。


4-007C 《慈光塔の番人》
地平線の彼方に、陽光とともに最初の異変を見出したのは、非常な繊細さと慎重さで知られるその塔の見張り番だった。



■北の王が死んだ

 話は少し前後する。
 《予兆の姫巫女 イルミナ》や《アリオンの巫女》が災厄の予兆を感じ取ったとき、世は戦乱の真っただ中であった。
 とはいっても、それまでの歴史のように、アトランティカ五か国による戦いではない。
 異世界からやってきた災害獣との戦いである。
 ここで、その戦いについて少し見ておく。

 まず聖王国グランドール。これは第4弾に引き続きイースラと協定を結び、アリオンを結成。
 《聖王子 アルシフォン》や《海凪の皇女 ナナツキ》を中心として、《邪光の獣 ニルヴェス》との戦いを展開。倒すには至らなかったものの、一時的な撃退に成功したことが記されている。

 次にガイラント。
 ガイラントを襲ったのは《猛り地の獣 ガムラドゥ》であったが、《大地の呼び声 ナーシア》らドルイドたちによって、その力の一部を《神山の龍脈》に封印された。


4-024U 《神山の護衛隊》
邪悪なものは、一歩たりとも近づけさせぬ。猛り地の獣の恐るべき力……その一部を封じたこの山にはな!

 とはいえあくまで封印できたのは一部であり、外部から力を加えれば、また《猛り地の獣 ガムラドゥ》が力を取り戻す可能性は高い。

 イースラでは《蒼眞の剣華 ミスルギ》が率いる蒼眞勢の力によって《海魔の獣 エインハース》をあと一歩のところまで追い詰める。
 しかし逃走をする《海魔の獣 エインハース》を追う蒼眞勢の船団の前に突如として巨大な《海王鯨》が出現。蒼眞勢は追撃の手を止めることを余儀なくされた。


4-087U 《海王鯨》
エインハースを追撃した船団は、島と見まごうばかりの巨大な鯨に遭遇した。
それが巻き起こす大波に、船は一隻、また一隻と飲み込まれていった。

 ゼフィロンでは《雷帝 バルヌーイ》の死力を振り絞った咆哮により、《壊嵐の獣 オグ・シグニス》を撃退。
 他の獣が一時的に力を失ったに過ぎないことから、《壊嵐の獣 オグ・シグニス》も完全に倒し切っていない可能性があるにも関わらず《雷帝 バルヌーイ》は力を失ってしまった(死亡したとは書かれていない)。
 しかし雷帝の座を受け継ぐ存在として、《雷帝二世 ガイブニッツ》が登場しているため、国力は衰えていない(ちなみに、彼が「二世」であることから、それまでの《雷帝 バルヌーイ》の統治が非常に長かったことがわかる)。

 最後にバストリアであるが……。


4-074C 《廃都の生き残り》
災厄の軍に徹底的に破壊された王都には、今や死体とそれを漁る盗人しかいなくなってしまった。

 王都が壊滅した。



■輝くもの天より墜ち

 話は災害獣を上回る災厄の話に戻る。
 《慈光塔の番人》によって目撃された災厄の正体は、異世界において支配者争いに勝利した男のなれの果て、《滅史の災魂 ゴズ・オム》であった。


4-121S 《滅史の災魂 ゴズ・オム》
ある世界、ある男がついに覇者となり、その名をそこに刻んだ。しかし、なおも力を求めた彼は、クロノグリフの記述に彼の世界とは異なる別章のものがある可能性に気づいた。そして……。

 ある世界、おそらくアトランティカと同じような場所で勝利を収めた男、《滅史の災魂 ゴズ・オム》は、それだけでは満足せずに、アトランティカにやってきたのだ。さらなる勝利を求めて。

 いわば彼は、ザインの使徒の行き着く先である。
 果たして、アトランティカの争いを終えた先に未来はあるのか。ただ《滅史の災魂 ゴズ・オム》のような歩く災厄が出来上がるだけではないのか。
 そういった話は他に譲る。

 重要なのは、《滅史の災魂 ゴズ・オム》の力はひとつの世界を総べるほど強大であったということである。
 彼は世界を総べることで得た力、クロノグリフの改竄能力を存分に使ってアトランティカを変え始めた。


4-104R 《クロノグリフの暴走》
ゴズの改竄は、世界の構造を大きく歪ませた。災厄との戦いの果てに何が待つのか……あらゆる命が不安に怯えつつ、大陸の未来を見守るしかなかった。

 クロノグリフの改竄による影響は、アトランティカのさまざまな場所で影響を現し始めた。


4-047C 《特攻する狂飛龍》
ゴズの魔力に狂った飛龍たちが、運搬していた雷火薬ごと飛雷宮のひとつに飛び込んだ瞬間、ゼフィロンの空は赤く照り輝いた。その炎は、遥か地上のウルスハの大平原からも見ることができたという。

 《滅史の災魂 ゴズ・オム》は眷属を引き連れては来なかったが、クロノグリフを改竄することで、この地で新たな眷属を作り出した。


4-022U 《黒岩熊》
「その新手の眷属の腹を殴った感触といったら、ほとんど岩のようだった。だが殴り返されたときには、確かに相手が熊なんだって実感できたよ。」
~轟き山の修行僧~

 彼は強大だった。誰よりも強く、誰よりも恐ろしかった。その気になれば、彼ひとりででもアトランティカを総べることは可能だっただろう。
 だが彼は念を入れて、クロノグリフの記述に干渉したのだ。


4-028C 《虹色カメレオン》
ナーシア率いるドルイドたちは、ゴズによるクロノグリフの改竄が、世界に影響を与えているという証拠を探した。それはすぐに珍妙な生物の姿で見つかった。

その結果として、《滅史の災魂 ゴズ・オム》は己の首を絞めることとなる。



■5人の英雄と7200万本の剣

 《滅史の災魂 ゴズ・オム》は全知全能の存在ではない。でなければ、《虹色カメレオン》のような珍妙な生物は産まれない。《黒岩熊》のような危険な眷属だけが生み出されるはずだ。


4-105U 《玉虫勾玉》
交魂の英雄たちに力を与える奇跡の魔導器……その出現は、皮肉にもゴズによるクロノグリフへの干渉が生み出した、因果律の反作用の結果ではないかと推測する者もいた。

 もともと、ふたつの魂を持つ力――交魂能力はアトランティカでは昔から確認されていた。
 だがその力は弱く、また数も少なかった。《滅史の災魂 ゴズ・オム》が現れるまでは。
 《滅史の災魂 ゴズ・オム》の出現によって、いや、より正確にいえば彼がクロノグリフを改竄したことで、その余波はアトランティカ全土に伝わり、新たな英雄を生み出した。交魂英雄を。

 交魂の英雄、《傭兵女帝 ベルスネ》は、バストリアでは忌み嫌われていたベルシ森のダークエルフの女王であったが、《ロヴォスの暗黒祭壇》を使用、呪われた力を解放するベルシの冥府門を開く。


4-077C 《黄泉帰りの死者》
傭兵女帝の決断により、ベルシの冥府門はついに開かれた。災厄の王に対抗する闇の力を求めて……。

 さらに彼女は傭兵としての人脈を生かし、本来であれば表舞台に出ることのできないような者たち、たとえば《盗賊王 ギルスティン》に応援を要請した。


4-072R 《盗賊王 ギルスティン》
なるほどベルスネよ、そなたの頼みは理解した。災厄の王がこの地から奪った平穏、私と部下どもが奪い返してみせよう。ただし、それなりの報酬はいただくがね。

 廃都となった王都で反撃の狼煙を上げる。

 一方でイースラは《海魔の獣 エインハース》の追撃を一時中止。
 《海風の皇子 テイハ》の帰還とともに、国力が増大したイースラは、アリオンの結束をさらに強めるため、もはや人質としての役割は必要のなくなった《予兆の姫巫女 イルミナ》をグランドールへ送り返した。



■それはわたしと雀が言った

 さて、この先の話をどこから始めるべきだろうか。

 バストリアの王都が廃都になる直前から話をするのがいいかもしれない。
 バストリアはけっして、災害獣との戦いに後れを取っていたわけではない。最初の災害獣、《疫魔の獣 イルルガングエ》との戦いでは、いずこともなく現れた黒衣の騎士、《黒騎将 ウーディス》の尽力によって、災害獣を倒す直前までかこつけたのだ。

 だが、バストリアは負けた。
 バストリアの黒の覇王が暗殺されたのだ。
 

4-079R 《暗殺》
「これは世界に混沌をもたらす一撃だ……黒の覇王よ、身をもって知っただろう? 暗殺の刃とは、最大の機会に最大の効果を狙って、その懐の内から突き立てられるものだと……。」
~黒騎将の嘲笑~

 ちなみに暗殺者の手はグランドールにも差し向けられていたようだが、《予兆の姫巫女 イルミナ》に同行していた彼女の友人兼護衛であったヘルネブの少女剣士が、グランドール聖王家の王を暗殺者から救い、勲章と聖武具を賜ったなどという話がある。

 だがバストリアでは、そんな都合の良い話はなかった。いや、もし護衛などがいたとしても、無駄だっただろう。なぜなら、暗殺者は《疫魔の獣 イルルガングエ》と戦っていたはずの英雄、《黒騎将 ウーディス》であったのだから。
 なぜ救国の英雄だったはずの《黒騎将 ウーディス》が黒覇王を暗殺したのか?
 そもそも茶番だったのだ。
 彼は《滅史の災魂 ゴズ・オム》によって送り込まれた、作り出された英雄だった。


4-080C 《邪悪なる召喚》
ゴズは大陸の秩序を乱すべく、クロノグリフを改竄し魔力で作り上げた英雄を送り込んだ。呪疫の獣の力の一部ですらも捨て石とし、世界により巨大な混乱をもたらすために……。

 折悪く、というより、そもそもがそうした重要な局面を狙ったのだろうが、《黒騎将 ウーディス》による黒の覇王の暗殺が行われたのは、アトランティカの五か国が《滅史の災魂 ゴズ・オム》に対抗するための対談を行う直前であった。

 父親が殺害されたのを知った黒太子は《呪毒の霧》に紛れて逃走。


4-081C 《呪毒の霧》
傭兵女帝と対立していた黒太子は、突如として反旗を翻したウーディスの追撃を逃れるべく、呪いの霧に紛れて姿をくらました。そして災厄の王との戦いの間、彼は表舞台からその姿を消した。


 そして各国の代表たちは、《黒騎将 ウーディス》のような存在を恐れて二の足を踏むことになった。

 そこで各国の長たちは、主導者たちが直接出向くのではなく、賢者とその護衛のみが会議に出向くことにした。怪しい人物が入ってこれぬよう、大陸中央の小島に席を設けて。


4-101C 《五賢の知恵》
邪悪な意図でばらまかれた不信の種は、恐ろしい力で大陸の団結を妨げるかのように見えた……だが、賢者たちはその知恵を集めることで、正しき道を見つけ出した。

 《五賢の知恵》に描かれている5人の賢者のうち、右奥の浅黒い肌と尖り耳を持った女性は明らかにダークエルフであり、バストリアの賢者であることは予想できる。
 左側の騎士鎧を身に着けた人物がグランドールの賢者なら、消去法で手前の有翼人はゼフィロンの賢者ということになる。また奥の筋肉質の男性はガイラントの賢者であろう。
 残りのひとり、白髪の老人はイースラの賢者であり、名をミマナという。

 《傭兵女帝 ベルスネ》をはじめとする交魂の英雄と、ミマナら賢者たちによって、徐々に《滅史の災魂 ゴズ・オム》との戦いの準備が整い始める。
 そして交魂英雄の中には、《予兆の姫巫女 イルミナ》の姿もあった。

 イースラは楽しかった。ずっと姫として、巫女として扱われていた彼女は、イースラのトウア学院で学ぶことで、初めて日常というものを感じた。友と呼べる存在を得た。
 巫女としての素質を開花させた彼女に、平凡な日など訪れない。
 もはや戻れぬ場所を背にして、なぜ戦わなくてはならないのか? 


4-119S 《予兆の姫巫女 イルミナ》
私……この水と神秘の皇国で過ごした日々を、当たり前の日常の素晴らしさを、決して忘れません。絶対に、絶対に……!

 負けたら、その日常が壊れてしまうからだ。
 自分は決して戻れない、しかし大切な日常が失われてしまうからだ。

 だから、負けるわけにはいかない。


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6 コメント :

  1. なかなか面白い! ラスクロ4弾の背景世界の情報が手っ取り早くまとまっていて、いい記事ですね。

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    1. 第4弾は第3弾以上にストーリー関連のフレーバーが多い一方、ハンドブックと被っている情報も多いので、途中から「あ、これハンドブック読めば纏める必要無いかも」と思いました。

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  2. 黒が悲惨すぎて乾いた笑いしか出ないよ・・・w

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    1. まぁそのぶんベルスネさんが方々で頑張っているので……!
      あと個人的な感想としては、黒の王太子がゴズ・オム騒動のあとの重要なキャラクターになりそうなので、1-2弾くらいあとに黒の話がいろいろ出そうな気がします。良い話じゃない気がするけど。

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  3. 黒太子と言えばエドワードだけど史実の人間だから召還英雄に分類されるだろうしやっぱり別人なのかな
    何にせよ1弾から名前が出てるのでそろそろ出てほしいですね

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    1. エドワード黒太子は史実的にはかなりの強キャラだし、エピソードもわかりやすいキャラだと思うので、そのうち出て来るかとは思いますが、さてどうでしょう。

      黒の覇王はあっさり死んでしまったのでアトランティカの人間でしょうが、黒太子に関しては実子だとは明言されていない(はず)ので、いちおう召還英雄の可能性も無くもないですね。
      「呪毒」で逃げたってあたりはペストとかの関連性も見えるようなかんじがしないでもないような。
      なんにしても、黒太子は《呪毒の霧》で述べられている以上は、ゴズとの戦いに決着がつくまでは出てこなさそうです。

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