日誌/剣の街の異邦人 その6

■これまでの贖罪への道
→その1
→その2
→その3
→その4
→その5
縛り:血統種の傷(血統種との戦いで死亡した場合、その死亡ぶんの生命点を療養で回復させることはできない。ただし瞬間療養・アイテム使用による回復は可)



 湖の廟と氷結の廟の探索を終え、リウの力で嵐の廟へ向かってから数日。

 血統種、《誇り高き一族の末裔、ミハイル》や《考える死神、カロン》を倒し、回収した純血晶はマリリスのもとへと集められた。
 彼女が神になる準備が徐々に整いつつあった。


 が、それを快く思わないアルムのメデル商会が動き出した。
 それと同時に、異邦人による異邦人ギルドへの襲撃があった。異邦人ギルドに攻撃を仕掛ける異邦人など、ひとりしかいない。キョウだ。


 異邦人の魂を糧に動く機械龍、《ゲオルギウス》と《キョウ》による連携は凄まじいものだった。
 今までの《キョウ》なら、彼が後衛にいる間に遠距離からチクチクと攻めていけば良かったのだが、今回は前衛の《ゲオルギウス》が連続で攻撃を叩きこんでくるのだ。おまけに《キョウ》も積極的に前に出てくるのだから、安穏と攻撃してはいられない。
 これまで通りの戦略しか取れないなら、全滅していただろう。


 が、新たにマリリスから授けてもらった神気、《光のヴェール》で状況は一変した。
 《光のヴェール》が遠距離からの物理攻撃を防げば、《ゲオルギウス》が後衛に下がれば攻撃は届かない。前衛にいたとしても、こちらの後衛を狙ってくれれば、その攻撃は無駄となる。
 そうした無駄の空隙を突き、盾役のナイトのビルに《デバインアーマー》を、矛役のレンジャーのサロメとトムに《デバインウェポン》をかける。
 《地竜の手》と《足止め》で命中回避を下げて、《フォースガード》でこちらの効果が剥がれないようにすれば、あとはこちらの戦場だった。

 終わった戦いだ。
 だから、キョウのことは、もういい。終わったのだ。


 問題はそのあとの事態だった。アルムたちによって、リウが攫われたのだ。
 マリリス曰く、器の者としてのリウの魂を糧に、アルムは自らが神として目覚めるつもりらしい。


 アルムたちが逃げ去った雪と森の廟へと向かい、モノリスから長しえの箱舟に乗り込む。
 番犬のような血統種《死路に伏せる番犬、フェンドル》を倒した先には奇妙な石像が3体と稼動していない魔石があるばかりで行き止まりだった。どうやら石像から転送されるエリアにスイッチがあるらしく、それを押さねばならないらしい。面倒なことこの上無い。


 さらにそれらのスイッチを守る血統種の討伐は、面倒どころの騒ぎではなかった。

 スキルが使えない禁技廟の《重臣剛魔、オル・フィック》は、楽な部類だった。
 何せ《光のヴェール》を張ってしまえば、あとは無駄な攻撃の間隙をついて《デバインウェポン》と《デバインアーマー》で強化しておけばいいのだ。スキルが使えなくても問題ない。《キョウ》や《ゲオルギウス》と戦ったときと同じだ。


 毒霧で周囲が包まれている毒縛廟の《魔妃、キスキルリラ》は、逆にあちらが《光のヴェール》めいた障壁を纏い、こちらの遠距離攻撃を防ぎにかかってきたが、もともとこちらのパーティーで遠距離物理攻撃を仕掛けるのは、それ専用の装備に変更できる者以外だとクレリックのローズマリーしかいない。彼女も基本は支援に回るのが常だ。
 ならば相手の妨害は殆ど意味が無く、スペルもスキルも使えるとなれば、《サキュバス》ともども《マスターキャスト》からの《オメガインパクト》で焼き払い、あとは全員で殴れば終わりだった。


 問題はスペルが使えない禁魔廟の血統種、《不死不滅の双鬼、ノーブルメイデン》だった。

 2体の《不死不滅の双鬼、ノーブルメイデン》はヴァンパイアを呼び、ヴァンパイアはファミリアを呼ぶ。呼ばれたファミリアは《不死不滅の双鬼、ノーブルメイデン》やヴァンパイアを庇い、《不死不滅の双鬼、ノーブルメイデン》とヴァンパイアは《青薔薇の花粉》で全体攻撃を仕掛けてくる。花粉には毒や混乱が付与されており、状態異常自体は《精霊の壁》で防げはするものの、ダメージそのものは防げない。
 スペルが使えれば、楽なのだ。《青薔薇の花粉》によるダメージは、一撃でこちらを殺す程度のものではない。ならば《ハイマルチキュア》で回復しながら、全体を《オメガインパクト》で焼き払えばよいのだから。

 だがここは禁魔廟。それは叶わない。
 ダンサーを経験したクレリックのローズマリーが《トリックユーズ》から《聖なる大瓶》で攻めたり、《大精霊の実》で回復したりするのだが、ジリ貧だ。
 そうこうしている間に、レンジャーのサロメが死んだ。メインアタッカーの彼女がやられては、攻めようが無い。これで終わりか。


 そんな覚悟は、しかし必要無かった。攻撃が飛んでこなかったからだ。その間に、《不死鳥の羽》でサロメを蘇生し、状況を立て直すことができたからだ。
 攻撃が飛んでこないのは、こちらの加護を除去してきたからだ。それ自体は困るのだが、相手の《不死不滅の双鬼、ノーブルメイデン》と《ヴァンパイア》全員がそんな行動を取ってきたとなれば、それは殆ど相手が何も行動しなかったのと同じで、むしろありがたいものだった。

 やがて理解したところでは、つまり、こういうことだった。こいつらは、決まった行動しかしないのだ。同じ行動しかしてこないのだ。

 そうとわかれば、余裕が生まれる。改めて《ホーリーウェポン》で対不死の加護を付与し、《不死不滅の双鬼、ノーブルメイデン》が眼前に出てきたところに《十字突撃2》を叩きこむ。二度、三度。
 その間にサロメがもう一度死んだ。これで彼女の生命点は1だ。だがそんなことはどうでも良い。殴る。何度も殴る。後衛に逃げても、弓と矢とで殴る。庇われても気にせず殴る。


 2体の《不死不滅の双鬼、ノーブルメイデン》を順々に葬ったあとは、あとは残った《ヴァンパイア》と《ファミリア》を掃除するだけだった。

 これで3体の血統種を討伐し、3つのスイッチを押せた。魔石が力を取り戻し、進行できるようになった。


 進んだ先で、ぼくらは2体の敵と戦うことになった。 《アルムメデル》と《ルキフェイブ》だ。
 だが《アルムメデル》も《ルキフェイブ》も、こちらの《光のヴェール》を突破する手段を持たないのだ。


 だから、終わりだ。《キョウ》と《ゲオルギウス》と戦うときのやり方で、簡単だった。


 それで、終わりだ。

 元の世界への扉が開き、異邦人たちはみんな元の世界へと帰った。元の世界では犯罪者とされる分類である彼らにも、帰りたいという意志はあるらしい。
 だがぼくは、帰りたくは無かった。帰れば、上司に火を点けて殺した犯罪者の中年男になってしまう。

 だからぼくは、マリリスのもとに残った。
 この決断が正しかったのかどうかは、もう少し時間が経ってみないとわからない。



(終)



  • 黒の罪びとたち
    • Lv.25 サロメ(Lv.28ファイター→レンジャー)
    • Lv.29 ビル(ナイト)
    • Lv.29 トム(Lv.15ニンジャ→Lv.14サムライ→レンジャー)
    • Lv.31 ローズマリー(Lv.14ダンサー→Lv.13サムライ→クレリック)
    • Lv.32 クレリック(クレリック)
    • Lv.22 ヒバシリ(Lv.30ウィザード→Lv.15ニンジャ→クレリック)

    • 神気
        • 聖なる光1
        • 十字突撃1→2
        • 精霊の壁1→2
        • 光のヴェール
        • 閃光退却
        • 天竜の翼1
        • 剣の絆1→2
        • 地竜の手1
        • 黒金の壁1→2

      • 消失者
        • Lv.5 ベル (ニンジャ)
        • Lv.8 ナオイエ(ニンジャ)
        • Lv.18 ヒルデ(ナイト)



       というわけで終わり。
       《不死不滅の双鬼、ノーブルメイデン》に苦戦したぶんだけ、ラスボスは楽勝だった感が。まぁ後を気にしないで全力出せるわけで。

       最後なので、キャラ育成をどういうふうに考えていたのかについて。

      《サロメ》

       メインアタッカー。
       ファイター→レンジャーで《狩りの極意》+《ジェノサイド》だ! という方針で行こうとしたらラスボス倒すまでにレベルが足りなかったという阿呆なパターンに陥った子。
       ちなみに最後の装備がメインは《デモンズハルバート+1》で、まぁそれはよいとして、問題はサブ装備の《隼の弓》でした。最後までCランクかよ!
       常時パンツ見えてるキャラとかlack先生は業が深い。

      《ビル》

       タンク。
       盾ナイト。それだけの人。
       ナイトしか経験していないので、範囲攻撃も集中攻撃も無く、9割の行動が《鉄壁の守り》でした。まぁ盾ナイトなんてこんなもの。

      《トム》

       サブアタッカー。
       わりと職をふらふらした結果、隠れて《足止め》してから《暗撃》するだけの人に。
       スキル構成自体はそこまで悪くなかったけど、全体的に装備が弱い役職ばかりだったので攻撃面がちょっと貧弱。あとモブ顔。

      《ローズマリー》

       サポーター。
       いちばん育成が二転三転したキャラ。とはいえダンサーの《剣を結ぶ歌》もサムライの《二刀流》もクレリックの《ホーリーシールド》や《ハイマルチキュア》も、どれも役に立ちました。
       余談だが、初期メンバーから最後までパーティーに加入していたのは主人公を除けばこの子だけだったりする。

      《ロメ》

       ヒーラー。
       特に何も考えずのヒーラー。盾ナイトと同じく特筆する部分は無し。

      《ヒバシリ》

       スペルユーザー。
       途中ニンジャ経験しているのは《スキルトークン》が欲しかったのでついでに《空蝉》目的で転職したのですが、《空蝉》に割くスキルスロットが無く、またどうせだいたいの攻撃は《光のヴェール》で防げるので意味が無かった。
       クレリックスペルも覚えようとしてクレリックに行った結果、最終メンバーが騎狩狩神神神という謎構成になった『剣の街の異邦人 黒の宮殿』なのでした。



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