展覧会/『CARTE』/Ep3-1《漂う風》

▮《レア・シュミット/Leah Schmidt》、巨人暴走事件の手がかりを掴むこと


「レアさま、お聞きになりましたか? 先日の巨人暴走事件に反乱軍が介入しているという噂が……」
 副官の報告を受けた《レア・シュミット/Leah Schmidt》は、当惑の感情を隠すことができませんでした。
「誰がそのような話を?」
「焼却炉の兵士たちが痕跡を発見したと」
「馬を準備させて。直接話を聞く必要がある」

3-1-003C《焼却炉の兵士/Incieration Plant Guard》
「レアさま、数日前の話なのですが……、彼らは巨人の死体を見たそうです」

 焼却場へ向かう間に眺める町は、あちこちに崩れた民家を再建する復旧作業のまっただ中でした。
(まただ。また反乱軍のために、このように数多くの人々が死傷した。エルビン、もうわたしはあなたをこれ以上……)
 手綱を握り締めるレアの手に力が入りました。

 焼却炉で燃やされるのを待つ死体の襟首には、ベルクマン王家の紋章が掘られていました。
(エルビンが本当に巨人を煽動したのか? ならば、なぜあのときに避難民に紛れて逃げようとしたのだろう?)
 あまりにも鮮明な証拠は、かえって彼女に疑問を齎しました。


▮《トルステン・フォン・ベルクマン2世/Torsten von Bergmann Ⅱ》、赤鉄色の英雄に勲章を授けること


 同じ時刻、《トルステン・フォン・ベルクマン2世/Torsten von Bergmann Ⅱ》は演壇に立っていました。
「勇猛なるコロッセの市民よ! ご存知の通り、暴動を起こした巨人は我々の前に跪いた!」
 闘技場に集まった群衆は歓声をあげました。
「我々の軍は一度は劣勢に立たされた。が、そのときにも勇猛果敢に戦ったこの騎士に、勲章とともに赤鉄甲を下賜するものとする!」

3-1-004R《赤鉄鎧の英雄/Hero with Crimson Iron Armor》
「巨人の反乱の中で特に勇敢に戦った騎士には、新しい鎧が与えられた。果たして彼は、本当にそれに値するのだろうか?」

 闘技場の入り口が開き、緋色のマントを纏った騎士と奴隷たちが入場し、向かい合いました。《席鉄鎧の英雄/Hero with Crimson Iron Armor》は疾風のように馬を走らせ、奴隷の首を搔き切るや、素早く向きを変えて奴隷の心臓を突き上げました。騎士を讃える歓声は、より一層大きくなったのでした。


▮《クロエ・ヒートヤード/Chloe Hildyard》、異端処断者に遭遇すること


 《エロン・ホワイト/Eron White》は異端の初段に余念がありませんでした。

3-3-158C《異端の幼い信者/Heretic Little Believer》
異端者の子どもたちが最初に学ぶことは、本当の身元を隠すことだ。

「あなたがた異端の死体は、安息を取る資格さえない。すべてを燃やし、浄化する」
 《イエバン・ナイト/Ievan Knight》が過ぎたあとの道々には、死体がうず積もっていました。

「……クロエさま、あの死体のことは忘れてください。逃げなければ、われわれが捕らえられることになるやもしれません」
「待ってください。まずは怪我をした方々を……」

3-2-097R《救いの預言者/Prophet of Salvation》
「あなたの信仰が、あなたの死であってはいけません。イエバさまの光のもとでは、すべての命が平等なのですから」

 護衛騎士の影に身体を隠しつつも、《クロエ・ヒートヤード/Chloe Hildyard》は冷静さを失いませんでした。彼女が手を翳してみせると、信徒の傷はすぐに回復しました。
「き、傷が……! ありがとうございます、クロエさま。あなたはまさしくわたしたちの聖女でいらっしゃいます」
「クロエ、時間がありません。早くここを抜け出さないと」
「みなさん、必ず生き残ってください!」
 《ジェイミ・ハロード/Jamie Harold》の手に引き摺られ、クロエは姿を消しました。

3-2-093C《逃げた異端者/Runaway Heretic》
異教徒たちはシェイクの奥へと隠れていったため、彼らを見つけることは困難になりつつあった。


▮《エリザベス・ブランドリー/Elizabeth Brandley》、大天使に就任すること


 聖所セノトではシェイクの天使たちによる会議が行われていました。
「彼らを弾圧するのではなく、改心させなければなりません。
 誤った道を進んだとはいえ、彼らもまた、イエバさまの信徒なのです」
 《アナイス・テイラー/Anais Taylor》は《エリザベス・ブランドリー/Elizabeth Brandley》に向かって異議を提起しました。
「待ってください。わたしには、もう何が真実かわかりません。教団も異端も、どちらもが間違った話をしているように思えます」

 論争から退いて座り込む天使もいましたが、新たな大天使長は態度を曲げませんでした。
「天使の組織にも改編が必要なようですね。イエバさまの意を正しく伝えるためには、より強い羽が必要です」

2-009EL《エリザベス・ブランドリー/Elizabeth Brandley》
アイリンに代わって大天使に就任したエリザベスは、シェイクの権限を掌握した。

 ざわつく会議場の雰囲気とは異なり、ただひとりエリザベスだけが落ち着いて議論を支配していました。彼女にとって、この席は己の決定を知らせるだけの場所なのです。


▮《タティアナ・カモラネシ/Tatiana Camoranesi》、三英雄を送り出すこと


「知識の欠片を取り戻す人材が必要なのです、メリナ」
 《タティアナ・カモラネシ/Tatiana Camoranesi》が顔を拭い、カラスの毛で作ったマントを羽織りました。彼女の小柄な身体は、それで一匹のカラスと同じになりました。

「正直なことを言えば、わたしが直接同行したいのだけれど……」
 《メリナ・エモンス/Melina Emons》は欲求通りにタティアナに同行することはできませんでした。というのも、《ピエトロ・フリゴ/Pietro Frigo》と《カロラ・ロッシ/Carla Rossi》が何らかの危険な実験を行っていることが明らかな以上、アルケンを離れることはリスクが大き過ぎるということを直観的に理解していたからです。

3-1-042C《禁断の研究家/Forbidden Scientist》
消失してしまった神よ。あなたが何処から来て何処へ行くのか。そう、禁忌の場所だ。トゥルースシーカーだけがそこへ到達することができるのだ。

 自分の代わりに、と思いついた人材はふたりいました。

「呪われた者たちを相手にするためには、強力な戦士が必要ね」
 メリナは《秘密の守護者/Guardian ofSecret》を呼びつけると、要求を伝えました。
「セルヤとバトゥーを呼んでちょうだい。誰にも知られないように、ね」

3-1-045R《秘密の守護者/Guardian of Secret》
「この世界に生きるあらゆる生き物よりも多くの秘密が存在するのです。最良の方法は、すべての秘密とともにやってくるでしょう」

 《アニル・ルーレシ/Anil Luleci》の要請によって黒の光に関する手がかりを捜索していたふたりが、ちょうど彼らの知識では理解し得ないことを質問するためにメリナに会おうとしているたところでした。
「神々が消失したときに起きたという、黒い光のことをご存知ですか?」
「もちろん」
「わたしたちは、その光に感じた不吉さの正体を明らかにしようとしています」
「知識の欠片を取り戻して梯子に上がったときに、その答えを捜すことはできるわ」
「いいでしょう。すぐに登れるようにしてあげますよ」

 タティアナの肩の上にカラスが這い上がりました。カイデロンに向かう三英雄の背中を見送るように。

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