▮《魔王ヴァイオレット/Load Violette》、血族に対する追跡を行わせること


 《ヴァイオレット/Violette》は《次期聖女/The Next Saintess》であるイクウェルがなぜ迷路の森へと入っていったのかを知るために、森のあらゆる場所に目と耳を植え付けました。
 新たな魔王となった彼女は、《ベリアル/Bellial》を戻すためならば、手段を選ぶつもりはありませんでした。

 墓に入った死者を起こすのは彼女にとって得意分野でしたが、魂を吹き込むことは魔王にとっても難しいことでした。
 そこでヴァイオレットは、生きている者が魂を失う過程にも関心を持つことにしてみました。
 そう、たとえば、天の声を伝える役割を受け持ったにも関わらず、信仰心を失って冥界へと降りてきた《堕天使/Fallen Angel》について。

3-2-079U《堕落した信仰心/Corrupted Faith》
「灰色翼たちはより貪欲になっている。あなたの救い以外に彼女らの堕落を止める手だては無いだろう」

「肉体と魂、どちらが外でどちらが内だと思う? その役割を変えてみたら、いったいどうなるだろう?」
 いつものように主人を傍で護衛していた《チェルシア/Chelcia》には、主人のその言葉の意図が理解できず、咄嗟に返答することができませんでした。
「きみに死ねと言っているわけではない。そう堅くなるな」
 滅多に冗談を言わないヴァイオレットの口調に、頭を下げたチェルシアの口から安堵の溜め息が漏れました。
「最近、血族に慌ただしい動きがあるようだ。ヴィンセントを呼べ。隠密裏に行動をするには、やつほど適格な者はおるまい」
 一見、無関心に見えて、同じ血族の尾行をさせないように、という主君の意図を理解したチェルシアは、彼女へのより一層の忠誠を誓うのでした。


▮《セダ・アーズ/Seda Arzu》、蔓枝を伸ばすこと


 《シールの庭園/》を蔓壁で覆ったドライアドたちの行動に、森の住民たちは不安を募らせていました。

3-2-090C《蔓垣の監視/Vine Wall Surveillance》
ドライアドはシールの庭の周囲に巨大な蔓壁を作り上げ、その背後で計画を進行させていた。

「いったいあの中では、何が起きているのだろう?」
 蔓壁のあちこちには、女王の蔓花が開花し始めていました。ドライアドの女王がすぐ近くまで来ているという兆しです。

3-2-085R《女王の蔓花/Queen's Vine Flower》
ドライアドの女王が現れるとき、希少な花もまた蔓壁に現れる。


「蔓壁の内側で何が起きているかわかった!? 早く戻って、アニルに知らせなければ――」
 蔓塀を見渡した《蔓垣の尖兵/》が後方へと走り始めましたが、すぐに地割れが起こり、エルフを飲み込んでしまいました。

3-2-083C《蔓垣の尖兵/Advanced Vine Wall Guard》
「蔓垣の内で起きたことを防がなければ!」

 尖兵の到着を待っていた《アニル・ルーレシ/Anil Luleci》でしたが、同族であるエルフの身に起きた出来事に関して予感がありました。
 苛立ちながら広場をうろうろして、これ以上待てないということを感じ取った彼女は、森の仲間たちを呼び集めました。
「森のために力を貸して。危険が差し迫っているの。それも、わたしたちの中から」

 アニルが呼びかける以前から危険を察知していた動物たちは、すぐに首を縦に振りました。
 しかし正体の判らない、しかも歩くでも走るでもなく地を這う脅威に対し、どのように戦えばよいのか理解できる者はひとりもいませんでした。

「兎に角、シエナを守らなければ。シエナを中心に集まって」
 アニルの呼び声に呼応し、神聖なる樹の周囲に森の住民たちは集まり始めました。 
 フェアリーは枝にとまり、狼は周囲をぐるぐると回り、ゴリラは吼えて叫びました。彼らは互いに争うことなく、興奮しながらも平静を失いませんでした。
 しかし日が沈み、蔓壁があちこちに生じ、女王の蔓花は広がり続けましたことが、ドライアドの女王の接近の信号であるということは誰も気づきませんでした。


▮《エリザベス・ブランドリー/Elizabeth Brandley》、編成改革を行うこと


 天使長会議での激論の中ではさまざまな意見が挙げられましたが、《エリザベス・ブランドリー/Elizabeth Brandley》は周囲のすべての反対を押し切り、大小の組織を大幅に改編しました。そして同時に、さまざまな既得権を得ました。

「エリザベスさまは大天使の仕事に任ぜられてからまだ長くはない……。それなのにあのようでは、不満が広がるばかりではないか?」
 司祭のうちでも、このような不満を表す者は絶えませんでした。

 天使組織の改編の報せを耳にした《アナイス・テイラー/Anais Taylor》は、エリザベスのやり方に到底同意できませんでした。
 代わりに彼女は、《アイリン・ベル/Irene Belle》に向けていた想いをただひたすらに募らせ、これまで以上に異端排除に没頭し始めました。
 社会的に高い地位の者でさえも、一度異端に分類されれば如何なる弁明の余地も無しに、アナイスの槍によってその息の根を止められました。《エロン・ホワイト/Eron White》の《イエバン・ナイツ/Ievan Knights》とともに、アナイスは異端者にとって神より恐ろしい存在となっていました。

3-2-099R《アナイスの一撃/Anais’s Blow》
アナイスには、エリザベスの方針を受け入れることができなかった。その代わりに彼女は己の意志を異端討伐とアイリンへの慕情で紛らわせた。

 しかしこの強硬な弾圧によって、異端者たちはシェイクのあちこちに隠れ、かえって根絶することが難しくなってしまったのでした。

「いま、シェイクのあちこちでは弾圧が行われています。イエバさまは隣人を愛せよと仰いましたが、憎悪せよとは言わなかったはずです。それなのに、いまの教団は腐ってしまいました!」
「異端という理由だけであなたがたがこのように死ななければならない理由があるはずがありません。イエバさまの光は、皆を平等に包むのです」
 統一されることのできなかった支配階級よりも、民衆の痛みを庇う彼らの話に次第に感化され、レイネは徐々に異端の領域に変貌していきつつありました。




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