• 《ギネヴィア》
    • 《赤ずきん》
    • 《曹操》
    • 《石川五右衛門》
    • 《ロキ》
    • 《ケイローン》
    • 《チェシャ猫》


10-002R《ギネヴィア》
ヨーロッパ史/民話(アーサー王伝説)

 古代ヨーロッパの騎士道物語、アーサー王伝説に登場する王《アーサー》の妻。
 《ギネヴィア》はウェールズ語で「白い幻」「白い女神」を意味するが、これは不吉な名であり、物語として見るとその結末を象徴しているともいえる。

 アーサー王伝説そのものが民話や偽史書による伝承に近いものであるため、その出自や性格、結末には曖昧な点が多い。

[T]このユニットが戦場に配置されたとき、このユニット以外のユニットを1体選ぶ。それの上に婚約カウンターを1個置く。
[F]対戦相手の婚約カウンターが置かれているすべてのユニットのパワーとATKをそれぞれ-500、-1し、あなたの婚約カウンターが置かれているすべてのユニットのパワーとATKをそれぞれ+1000、+1する。
 アーサー王伝説の魁ともいえる、12世紀の聖職者ジェフリ・オブ・モンマスによる偽史書、『ブリタニア列王史』によれば、毒殺された父、ユーサー・ペンドラゴンに代わり、15歳にしてブリタニア王として即位をした《アーサー》は魔法使い《マーリン》の助言を受け、異教徒の巨人の襲撃に遭っていた隣国ログレス王国属国カメリアードの救援を行う。
 その際に出会ったのがローマの高貴な家系出身であり、容色全島に並ぶものがなく、「完璧な容姿」と表現されるほどに美しい女性——《ギネヴィア》であった。
 《マーリン》は「宮廷最高の騎士と不義をはたらくだろう」と予言をして結婚に反対したものの、《アーサー》は彼女と婚儀を挙げ、国を平定。ひとつの平和が訪れる。

 平和な時期からしばらくして甥のモードレッドに政治を任せ、とある戦に出陣した《アーサー》だったが、彼が城を離れた時期を見計らってモードレッドが叛旗を翻す。
 彼は《ギネヴィア》を妻とし、王位を簒奪。《アーサー》との死闘を繰り広げることになる。
 その後、死んだと思った《アーサー》帰還の報を聞いた《ギネヴィア》は修道院へと身を隠したが、その後に死亡したといわれている。

 また、その後にさらに肉付けされたアーサー王物語では、《アーサー》と《ギネヴィア》の破局が騎士《ランスロット》との浮気が原因であったとされている。
 この場合はキリスト教的価値観によって教会からの破門を恐れた《アーサー》の努力により、一応のよりを戻すが、最終的には《ギネヴィア》はやはり王位簒奪者モードレッドの妻になって《アーサー》を裏切る。彼女との結婚は、やはり予言によって反対されるべきものだったのだ。 

 このように《アーサー》と結婚しながらも、最終的にはモードレッドの妻となり、《アーサー》を裏切った《ギネヴィア》だったが、(《ランスロット》との浮気に関してはともかく)多くの物語中ではモードレッドの妻となったのが彼女の意思だったのか、それとも無理矢理に婚姻を強制されたのかは不明である。
 またジェフリの『ブリタニア列王記』や12世紀の詩人ワースの『ブリュ物語』によれば、《ギネヴィア》は《アーサー》の子こそ為さなかったが、貞淑な妻であり、《アーサー》に尽くしたと書かれている。

 果たして《ギネヴィア》が果たして貞淑な妻だったのか、《アーサー》を裏切った売女だったのかは議論の余地が残るが、12世紀末のグラストンベリ修道院で行われたと記録される——これも偽書あるいは捏造である可能性が高いが——《アーサー》の遺骨発掘に関しては補記しておきたい。
 修道院の墓地の片隅からは《アーサー》とその王妃のものと思しき遺骨が発見され、その墓にはこう刻まれていたという。
『ここアヴァロニアの島に著名な王アーサーが、彼の第二の妻ヴェネヴェリア(注:《ギネヴィア》)とともに埋められ横たわる』。

 なお、この《ギネヴィア》らしき頭骨には白骨化してもなお見事な金髪が波打っていたということなので、頭皮に対する裸地の面積が通常よりも減退している方はこの強靭な頭髪を見習うべきだろう。 


10-023R《赤ずきん》
民話/童話

 おとぎ話というものは、そういう人間世界の事実と方則を教える科学的な教科書である。そうして、どうするのが善いとか悪いとか、そんな限定的なモラールや批判や解説を付加して説明するにはあまりに広大無辺な意味をもったものである。それをいいかげんなほんの一面的なやぶにらみの注解をつけて片付けてしまうのではせっかくのおとぎ話も全く台無しになってしまう。
 おとぎ話はおとぎ話でよいのである。
『寺田寅彦随筆集 第四巻』寺田 寅彦 (著), 小宮 豊隆 (編集), 岩波書店; 改版 (1963/01) 「さるかに合戦と桃太郎」p222より

 《赤ずきん》は赤いずきんを被った少女である。

 グリム童話では「たまらなく可愛らしい女の子」であると表現されており、他のグリム童話では少女の表現が「素晴らしい」「気だての良い」「優しい」といった内面に向いているのとは対極である。
 彼女に声をかける狼やベッドでの食べられることが、同衾を示唆であると考察される場合もある。

 世界で広く親しまれている童話のひとつであり、19世紀のイギリスの小説家、チャールズ・ディケンズは《赤ずきん》を「初恋の人だ」と述べている。

[T]対戦相手のCBが発動したとき、このユニットを手札に戻してもよい。そうしたならば、あなたの戦場に勢力橙、レベルⅡ、パワー2500、ATK2、【獣】のトークンユニットを1体配置する。
 《赤ずきん》の由来となっている頭巾は赤のビロードで、お婆さんから送られたものである。とてもよく似合っていたため、彼女はほかのものを被らず、そのために《赤ずきん》と呼ばれていた。
 そのお婆さんであるが、村から歩いて30分離れた森の中に住んでおり、病気で弱っていた。
 そのため《赤ずきん》はお婆さんのために、ケーキとワインを持たせられ、届けることになる。

 果たして病気の祖母に対しての届け物がなぜケーキとワインなどという重量物なのか、なぜ村から離れた場所に住んでいるのか、という疑問に関しては、あるいは《赤ずきん》という物語が暗喩する猥雑な世界を示唆しているのかもしれない。
 道中に声をかけてくる狼もそのひとつだ。彼は野獣にも関わらず、「こんにちは、赤ずきんちゃん」と紳士的に声をかけてきて、《赤ずきん》も「こんにちは、狼さん」と事も無げに挨拶を交わす。
 
 さて、たまらなく可愛らしい《赤ずきん》を見た狼は彼女の目的を言葉巧みに聞き出し、若くて柔らかそうな娘だ、婆さんよりずっと美味そうだ、などと思いながら思考を巡らせ、赤ずきんを寄り道させようとする。
 《赤ずきん》は母親から、寄り道したりせずに真っ直ぐにお婆さんの家に向かうように、と言い含められていたが、「綺麗な花畑があるからお婆さんのお見舞いに持っていくといい」という狼の甘言に釣られて寄り道をしてしまう。

 その寄り道の隙をつき、狼はお婆さんを襲撃、腹に納めて入れ替わり、《赤ずきん》を待ち受けるのだ。
 このように、相手がCBという寄り道をすると、【狼】は入れ替わりながら現れるのだ。

 童話ではその後、《赤ずきん》も食べられてしまうものの、お婆さんの容体を心配した猟師が腹いっぱいになって寝こけている狼を発見し、腹を捌いてふたりを救出することに成功する。
 その後、狼の腹には石が詰められ、腹を縫われる。目を覚ました狼は猟師を見て慌てて逃げようとするものの、石が重すぎて倒れてしまい、そのまま死亡、これにてハッピーエンドと相成る。

[T]あなたの時代が発展したとき、あなたの戦場に勢力橙、レベルⅡ、パワー2500、ATK2、【獣】のトークンユニットを1体配置する。
 また、「別の話では」という書き出しで、グリム童話には《赤ずきん》の異なるバージョンも載せられている。

 その中では《赤ずきん》は狼を相手にせず、おばあさんの家に直行する。狼はあとをつけてきて、おばあさんの家の屋根に上り、《赤ずきん》が帰るときを狙って襲撃しようと企む。
 そのことを察知したおばあさんは、家の前の大きな桶にソーセージの茹で汁を入れて狼を誘き寄せ、匂いに釣られて桶の中に落ちた狼はそのまま溺れ死んでしまう。
 時間のとともに誘き出された【狼】であったが、その命は短く儚かった。


10-052R《曹操》
中国史(155~220)/小説(三国志演義)

 後漢末期の武将。字は孟徳。幼名は吉利、阿瞞など。
 毛宗崗による小説の三国志演義では義絶(この場合、絶は凄まじいことを示す)の《関羽》、智絶の諸葛亮二並び、奸絶の《曹操》として三奇(3人の突出した存在)として数えられる。
 漢詩を愛し、中国最高の詩人とも評されることもある子、曹植などとともに三曹とも呼ばれ、孔融ら建安七子とともに詩文の才能を競い合った。

[F]対戦相手のソウルヤードにマルチソウルのSSがあるならば、あなたの勢力紫のすべてのユニットのATKを+1する。
[F]あなたの勢力紫のすべてのユニットのパワーを対戦相手のソウルヤードにあるマルチソウルのSS1個につき+500する。
 《曹操》は20歳前後で後漢王朝に仕え、黄布族討伐で戦功を挙げる。屯田政策を行い地力を蓄えながら、献帝を奉じて袁紹や《呂布》に対抗。
 建安五年(200年)に官渡で袁紹を打ち破ったのちには最大勢力となり、劉備を攻めて《関羽》を捕らえたが、建安十三年(208年)の呉の孫権との戦で《周瑜》らの火計を受け、大敗した。
 これにより戦力を大きく削がれ、天下への王手は取り消しとなったものの、常に天下の三分の二を手中に収めており、蜀の劉備や呉の孫権——あるいはそれらの連合よりも優勢であった。

[F]あなたの勢力紫のすべてのユニットのパワーを+500すると共に、それらは『 速攻 』を持つ。
 《曹操》、黄初元年(220年)、没。
 《曹操》の遺言に「天下の情勢はまだ落ち着いていないため、将兵たちはむやみに持ち場を離れず、己の職務をまっとうせよ。骸には平服を着せ、棺には金玉珍宝(きんぎょくちんぽう。きんたまちんぽではない。金銀財宝、珍品骨董の意)を入れるな」と遺した。

 この時代においては奇矯ともいえるほどの実利を重んじる考え方は、神仙術を使うという方士や古い考えを重んじる儒教者とは対立したものの、彼のその考え方が人材育成や軍事行軍の役に立った。

 『三国志』(演義ではなく正史)を著した陳寿は、権謀術策の限りを尽くし、高い思想や智謀を持ちながら感情を抑えるのがうまく、それでいて部下をうまく用いた「抑可謂非常之人 超世之傑矣」(他を超越した存在であり、稀代の英雄というべき人物だ)であるとして《曹操》を高く評価している。

 最終的に三国を制したのは魏の後継ともいえる晋であるが、前身の魏帝国の《曹操》による影響はけして小さくはなかったといえるだろう。

《曹操》は最後まで《曹操》であった。



10-067R《石川五右衛門》
日本史(?〜1594)

 《石川五右衛門》は天下御免の大泥棒である。

『 速攻 』
[F]このユニットは防御されない。
 《石川五右衛門》の出自は定かではなく、川内石川村(現在の大阪府下河南町)の生まれであるだとか、滋賀の片田舎の出身であるだとか、丹後伊久知城主の息子であるだとか、諸説ある。

 その中でも最もユニークなものは、伊賀上野の生まれの石川文吾が、忍者百地三太夫に弟子入りしたものの、不義密通を働いたために師に破門され、追放されて京都に流れ、大盗賊《石川五右衛門》になった、というものである。
 果たして真実は定かではないが、速攻を持ち防御されない《石川五右衛門》を見れば、忍者との因果関係は明らかだろう。


[T]このユニットが攻撃したとき、対戦相手のデッキの上からカードを1枚公開する。そのカードがこのユニットよりパワーの高いユニットカードならば、このユニットを犠牲にする。
 さて、今を去ること400年。時は豊臣、太閤秀吉の時代。
 圧政下に苦しむ庶民のもとに現れた大盗賊、《石川五右衛門》。

「絶景かな、絶景かな、春の眺めは値千金」

 大盗賊《石川五右衛門》、富に宝では飽き足らないのか、はたまたいくら物を盗もうと、土地を猿に抑えられては意味がないと考えたか、太閤秀吉の命までも盗まんと、夜の伏見城へと忍び込んだ。
 しかし千鳥の香炉が鳴り、警備に取り囲まれ、ついには召し捕らえられてしまう。こうなってはいかに大盗賊、《石川五右衛門》といえど、手も足も出ない
 いや、まだ舌は出る。猿顔に盗人と罵られ、《石川五右衛門》、返して曰く、「おぬしこそ、天下を盗み取ったる大盗賊だ」。これには猿殿様、大激怒。

 かくして文禄三年(1594年)8月23日、《石川五右衛門》とその一族郎党は京都三条河原で釜茹での刑に処されたそうな。
 辞世の句に曰く、

   石川や 浜の真砂は 尽くるとも
           世に盗人の 種は尽くまじ

 こうして釜茹でにされた《石川五右衛門》にちなみ、鋳鉄の風呂釜のことを五右衛門風呂などと呼ぶことになったそうな。どっとはらい、とっぴんぱらりのぷぅ。

 なお《石川五右衛門》であるが、歌舞伎や浄瑠璃として好まれて人の耳にはよく知られているが、その実在を証明する資料は少ない。処刑に使われた釜は戦前まで東京の刑務協会に保存されていたが、その写真に映る釜は人を茹でるには明らかに小さい。

 しかし当時スペインから日本にやってきていた貿易商、アビラ・ヒロン著『日本王国記』の写しがローマ図書館に残存しており、ここには文禄三年の夏に油で煮られた男はほかでもないIxicavagoyemon(《石川五右衛門》)であったと記録されている。




10-102R《ロキ》
北欧神話

「ガイヒ?」とスカジはききました。
「お嬢さま、わたしの睾丸ですよ!」とロキは言うと、革ひものもう一方を陰嚢の後ろにくくりつけたのです。山羊は新しい草をかじるために、わずかに離れていきました。そこでつないである革ひもはぴんと張りました。
「朝早かったんです、お嬢さま」とロキは言いました。「あっ! とても早かったんです。ヨタカがまだ鳴いていましたよ……」<いたずらも者>は両手を口にあたて、目を閉じました。そして不思議な、やさしく振動するような音をたてたのです。「るるる……るるるる……るるるる……おっと!」山羊が突然革ひもを引っぱったので、ロキは大声で泣きわめきました。
『北欧神話物語』 キーヴィン クロスリイ・ホランド (著), 山室 静 (翻訳), 米原 まり子 (翻訳), 青土社; 新版 (1983/10), 「九 ニヨルドとスカジの結婚」p101より

 《ロキ》は北欧神話に登場する巨人族。主神オーディンの義兄弟といわれることもある。

 北欧神話に登場する巨人族には、スクリューミルやウドがルドロキの配下の巨人たちなどのように本当に巨大なものも存在するが、アース神族ら神々とそう変わらない体型のものもいる。《ロキ》は他の神々と変わらぬ体型である。
 13世紀の詩人であり、現在の型式へ北欧神話を再編したともいえる著作物『散文のエッダ』を著したスノリ・ストルルソンは「ハンサムで顔が美しいが、邪悪な気質で、気分がとても変わりやすい」と述べている。
 のちに主神オーディンを飲み込む第一平面の狼フェンリル、半身が腐った第三平面の冥界の女王ヘル、そして第二平面ミッドガルドを一巻きにするミドガルド蛇ことヨルムンガンドの父である。


[CB]カードを1枚引く。
 『ずる賢い者』『トリックスター』『変身者』『空を旅する者』などの様々な異名を持ち、その名の通りに神々に混乱と恩恵をもたらし、時にアース神族に青春を齎すフレイヤやイドゥンを誘拐する一方で助け出し、時にトールの妻であるシフの髪を切り落とすものの償いとして立派な鬘や魔槍グングニルを作り出し、結果的にアース神族最強の武器となる《ミョルニル》の作成にも繋がる(もっとも《ロキ》ばそれを妨害しようとしたが)。


[F]対戦相手のマルチソウルの、すべてのユニットとすべてのSSは回復フェイズに回復しない。
 《ロキ》がアース神族の役に立った話としては、たとえば『アースガルドの城壁造り』がある。

 オーディン率いるアース神族は、かつてヨルド率いる豊穣神の一族であるヴァン神族と争っていた。
 和解とともに戦争は終結したが、ヴァン神族の魔法によって打ち壊された城壁は壊れたままであり、外敵の襲撃を考えると危険な状態ではあったが、神々は己が肉体労働をして城壁を修復することを嫌がり、長いこと城壁はそのままだった。

 あるとき、馬に乗った男がやってきて、アース神族にとある提案をする。それは、18ヶ月城壁を補修する代わりに対価としてあらゆる神よりも美しいフレイヤ神と、さらに太陽と月を寄越せというものだった。
 当初、アース神族はこの不敬な申し出を一蹴しようとしたが、《ロキ》がとある提案をした。それは、男が最初に提案した期間の1/3である6ヶ月だけを与え、対価を支払わないままで半ば完成した城壁を手に入れよう、というものだった。

 男はたったひとりで――しかし《ロキ》の横槍もあり、馬を使うことは許可されて仕事を始めた。
 だが神々の予想よりも遥かに男は力を持ち、男の馬スヴァルディルファリは頑強であった。男と馬は巨大な岩山を運び、丸石を削り出した。城壁は瞬く間に建てられていき、もはや完成直前というところまで漕ぎ着けた。

 事が自分たちの予想を遥かに超えていたことを悟ったオーディンは《ロキ》を脅し、男の妨害を命令する。そこで《ロキ》は美しい雌馬に姿を変え、男の馬を誘惑した。
 馬を奪われた男は作業ができなくなり、城壁作りはあと一歩というところで未完成に終わった

 怒りに打ち震えた男が変装を解くと、彼は邪悪な巨人族であった。
 だが正面切っての戦いとなれば、《ミョルニル》を持つ《トール》に勝るものはいない。巨人は一撃で頭蓋を砕かれ、冥府の国ニヴルヘイムへと落ちていった。

 なお、男の馬を誘惑していた《ロキ》は数か月後に8本の脚を持つ仔馬とともに帰ってきた。この灰色の馬はスレイプニルと呼ばれ、あらゆる馬よりも速いこの馬は主神オーディンの愛馬となった。

 このように、混乱を招きながらも最終的にはその手で問題を解決をしてきた《ロキ》であったが、
善と悪が共存していたその性質は、だんだんと邪悪な皿に傾き始める。


[F]このユニットはEPICユニットとLEGACYユニットに防御されず、それらの効果に選ばれない。
 バルドルという神がいた。

 オーディンの息子であり、誰よりも美しいこの神は、恐ろしい夢と死の予言にうなされていた。
 そこで彼の母、フリッグは世界中のあらゆるものにバルドルを傷つけないという誓いを立てさせることで、彼の不安を解消しようとした。火も水も石も金属も、ありとあらゆるものはバルドルを傷つけない誓いを立てた。ただしヴァルハラの西に生えた小さなヤドリギの樹のみ、まだ幼かったためにバルドルを傷つけない約束を交わすことができなかった。

 《ロキ》はこのヤドリギの樹を削り出し、槍を作り出した。そしてその槍をバルドルのきょうだいであり、盲目の神ヘズに渡すや、彼がバルドルにその槍を投げるようにと仕向け、バルドルを殺した。

 もはや《ロキ》の邪悪性を看過できなくなった神々は彼を捕らえようとしたが、《ロキ》は鮭に姿を変えて逃げ回った。誰にも彼を捕らえることはできなかった。

 ――たったひとり、誰よりも勇敢であり、誰よりも力強く、誰よりも《ロキ》と仲の良かった雷神を除いては。


 鮭に姿を変えて飛び上がった《ロキ》の尻尾を掴んだのは雷神《トール》であった。彼は滑りぬけようとする鮭を必死につかんだ。彼の怪力であまりにも強く掴まれたため、魚の尻尾は今でも平たいのだという。

 こうして、《ロキ》は捕らえられ、息子である狼、ヴァーリとナルヴィの腸で縛り付けられた。
 彼が縛り付けられた岩の上には毒液を垂らす蛇が吊られた。蛇が毒を垂らす毒を、《ロキ》の妻であるシギュンが木の器で受け止めた。しかしその器が毒液でいっぱいになり、捨てようとしているとき、彼は毒に無防備な状態で晒され、激しい苦痛で悶えた。この身悶えは地面を揺るがすほどで、これが現在も続く地震の正体である。

 なお、『アースガルドの城壁作り』のエピソードで述べている通り、彼はしばしば姿を変えるが、ときに性をも変え、女性にもなる。これは主神オーディンとも共通する性質である。




PR-082《ケイローン》
ギリシャ神話

 《ケイローン》は半人半馬のケンタウロスである。
 多くのケンタウロスが無作法物で喧嘩早いのとは対照的に、《アポロン》や《アルテミス》の教育を受けた《ケイローン》は慎み深く、音楽や医学、予言に通じており、そのことから《アルテミス》の神託を受けたアキレウスなどの英雄たちは兄弟子ともいえる立場の《ケイローン》に師事を仰いでいる。


『 ソウルバースト[橙] ⇒ このユニットカード以外のあなたの『 ソウルバースト 』を持つSSを1個選ぶ。それを手札に戻す。 』
 その弟子の中のひとりに、アスクレピオスという人物がいた。
 彼は幼いころに母、コロニスが死亡したため、父である《アポロン》の手から《ケイローン》へと預けられ、育てられた。
 アスクレピオスは《ケイローン》から医学を学び、成人する頃には比類する者のいない立派な医者となった。彼の医術は人知を超えたものであり、死人さえも生き返らせることができたという。

 アスクレピオスが死者を生き返らせてしまったため、地獄には死者が来なくなってしまった。これに激怒したのは地獄の王ハーデスであり、彼はゼウスにアスクレピオスへの対処を頼んだ。
 天空神ゼウスは――ゼウスはアスクレピオスをキュクロプス(サイクロプス)に作らせた稲妻でアスクレピオスを撃ち殺した。黒焦げの遺体となってしまったアスクレピオスは、もはや誰にも生き返らせることができず、こうして死者は死者に戻ったという。


[T]あなたのユニットが対戦相手の効果によって戦場から手札に戻ったとき、ユニットを1体選ぶ。それをソウルヤードに配置してもよい。
 強く賢い《ケイローン》は。すべてのケンタウロスの中でも最も賢く、最も正しいケンタウロスであった。それゆえに彼が死んだとき、ゼウスは彼を惜しんで星座に変えた。

 《ケイローン》は人馬宮となり、今も天頂で輝き、英雄たちを見守っている。




PR-086《チェシャ猫》
童話

 ここまで長々とご苦労さん。
 おれはルイス・キャロルによる童話『不思議の国のアリス』に登場する猫だ。え? 知ってる? そうかい。
 だが《チェシャ猫》って名前が「チェシャ猫のように笑う」(grin like a cheshirecat)って慣用句から来ていることは知らないだろう?
 え? 《チェシャ猫》って言葉の説明にはなってないって? ああ、チェシャってな、イギリスの州のことでな、チェシャ州ってのがあるんだよ。
 え? じゃあ「チェシャ猫のように笑う」っいう意味はどういう意味かって? こうやって、《チェシャ猫》みたいに笑うことなんじゃないかな?
 え? じゃあ《チェシャ猫》ってのはどういう猫かって? おっと、話が元に戻っちまった。


[T]光碧CAのユニットがあなたの戦場に配置されたとき、以下の2つから1つを指定する。・ユニットを1体選ぶ。それに1000ダメージを与えてもよい。・コスト6以下のストラクチャを1個選ぶ。それを破壊する。
[T]このユニットカードがCAヤードから捨て札置き場に置かれたとき、このユニットカードを戦場に配置してもよい。
 まぁ、話がぐるぐる戻っちまうのも仕方がない話さ。なにせおれは狂っているんだ。ああ、狂っているんだ。くるくるって狂っているんだ。その証明をしてやろうか?

 いいか、例えば、犬は狂っていないだろう? で、その犬はっていうと、あいつら、怒ると唸って、嬉しいと尻尾を振るんだ。知ってるだろう?
 で、おれはっていえば、嬉しいと唸って、怒ると尻尾を振る。つまり犬とは逆だ。
 狂っていない犬と逆なんだから、狂っているってわけ。だからダメージを与えたり、ストラクチャを破壊したりくらいは許してくれよ。


[CB]このユニットカードを犠牲にする。
 それじゃあさようなら。ごめんなすって(・ω・)


参考文献

  • 『アーサー伝説―歴史とロマンスの交錯』 青山 吉信  (著), 岩波書店 (1985/08)
  • 『アーサー王伝説 (「知の再発見」双書)』アンヌ ベルトゥロ  (著), 松村 剛 (監修), Anne Berthelot (原著), 村上 伸子 (翻訳),  創元社 (1997/10)
  • 『決定版 完訳グリム童話集〈2〉』Bruder Grimm (著), グリム兄弟 (著), 野村 ヒロシ (編集), 筑摩書房 (1999/11)
  • 『〈子供〉の発見―グリム・メルヘンの世界』カール=ハインツ・マレ (著), 小川 真一 (翻訳), みすず書房 (1984/01)
  • 『三国志 英雄の名言100』川口 素生  (著), ベストセラーズ (2002/03)
  • 『三国志 英雄たちと文学』 渡邉 義浩 (著), 人文書院 (2015/7/10)
  • 『関羽 神になった「三国志」の英雄』渡邊義浩, 筑摩書房, 2011
  • 『NHK歴史への招待 (3)』, 日本放送出版協会 (1994/05)
  • 『北欧神話物語』 キーヴィン クロスリイ・ホランド (著), 山室 静 (翻訳), 米原 まり子 (翻訳), 青土社; 新版 (1983/10)
  • 『ギリシア・ローマ神話―付インド・北欧神話』ブルフィンチ (著), Thomas Bulfinch (原著), 野上 弥生子 (翻訳), 岩波書店 (1991/1/24)
  • 『ギリシア神話―ギリシア・ローマの神々と英雄の黄金伝説』マリオ・ムニエ (著), 原章二 (著), 八坂書房 (1979/11)
  • 『図説 不思議の国のアリス(ふくろうの本)』 桑原 茂夫 (著),  河出書房新社 (2007/04)

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