■《ベッカー・クラウゼ/Becker Krause》、先王の墓造りに好機を見出すこと

「先王の墓のため、奴隷を惜しむな!」

 《トルステン・フォン・ベルクマン二世/Torsten von Bergmann II》は揺れやすい民心を掴むためには、王権の象徴を刻みつけることこそと重要であると考えていました。そのために彼が考えた最良の方法は、先王トルステン一世の長男である己が王位の後継者であることを国民の心に刻みつけることでした。また、奴隷の徴用と平民の賦役によって、身分の違いを教え込ませることができるとも考えていました。

1-1-018R《先王の墓/Tome of the Late King》
「あらゆるものの上に立つまで、そう時間はかかるまい。そのときこそ、父上も安らかに眠れるというものだ」

 しかし政治は思い通りに流れる水路ではありませんでした。奴隷を徴用された貴族たちの不満は日に日に募り、特別税を徴収された平民たちも負担を感じずにはいられませんでした。
 ですが最も深刻な問題は、皇室の騎士の士気の低下でした。
 王家を守護する名誉と戦場における指揮の権利によって彼らは健在していたといっても過言ではありません。だというのに、トルステン二世は訓練よりも奴隷の監督を命令し、剣ではなく鞭を取るよう騎士に命令したのです。

 騎馬術が未熟となり、鎧を邪魔に感じるようになった元騎士の《奴隷監督官/Slave Taskmaster》たちは、特に《灰色の奴隷/Ashy Slave》を厳しく扱いました。本来天使でしたが、信仰を捨てさせられて奴隷に貶められた彼女らの存在は、剣を捨てた騎士にとってこれ以上ないほど都合の良い嘲笑の対象だったのです。既に体力が削がれ、仕事を果たすことのできないことを知りながらも、鞭を振るい続けました。
 もはや耐えることのできなくなった彼女らは、ひとりふたりと逃げ出し始めました。多くは自身の境遇をを理解してくれる天使、《ラジア・ベル/Lagia Belle》のいる《エルビン・フォン・ベルクマン/Erwin von Bergmann》の反軍へと身を寄せました。

2-4-189U《灰色の奴隷/Ashy Slave》
「わたしはもうシェイクに帰れないかもしれない。それでもわたしは生きている」

「王家はいったい、どうなってしまうんだろう………」
 不安の色を隠せない《レア・シュミット/Leah Schmidt》とは異なり、革命のために潜伏し続けていた《ベッカー・クラウゼ/Becker Krause》は初めて好機が訪れたことを理解しました。




■《バテュー・カヤ/Batur Kaya》、吊り橋から落ちること

 カイデロンの軍団は恐るべき速度をもってシエリオンへと進撃しました。幽霊と死体で構成されたその軍団の動きそのものは鈍重でしたが、疲労を知らなかったからです。
 シエナの周辺での戦いが停止し、一瞬の安息を得たはずのドライアドと森の住民たちは、新たな脅威の気配を感じて身を竦ませました。

3-0-2EL《ミケイラ/Mikhaila》
アルゼン家一番目の頭首の妻であり死者の女王であるミケイラを知る者は少ない。彼女はいまや死以上の物を望んでいる。

 《魔王ヴィオレット/Lord Violette》、《アール公女/Princess Al》、《ミケイラ/Mikhaila》の3人は、各々が各々の目的を達成するために、各々の方法で戦闘を開始しました。
 戦線の先頭にはヴィオレットの《ゾンビ》と《リッチ》がいました。彼らは強靭であり、あらゆる攻撃に耐え、生き延びながら、目の前に映るものをすべて敵として進撃しました。
 ミケイラ率いる血族たちは味方をも捕食しながら進み、その勢いは《捕食者》でさえもその群れに向かうことは躊躇するほどでした。彼女の姉妹は死体を操り、血族たちが捕食した味方をつなぎ合わせ、新たに兵士を作り出して戦線を補助しました。
 アール公女の魔術師軍団は敵を無力化し、敵軍を混乱に陥れました。

4-0-2EL《アール公女/Princess Al》

 《アニル・ルーレシ/Anil Luleci》と森の住民たちに休息の場を提供すると、《セルヤ・タスデレン/Serya Tasdelen》ら自身は休まずにアルゴスに向かって進み始めました。《メリナ・エモンス/Mellina Emmons》との約束もありましたが、カイデロンの疲れを知らない軍団に対抗するためには、真っ向勝負をするのではなくオベリスクを攻略する以外に勝機がないことを知っていたためです。

 もともとシエリオンからカイデロンへ移動するような生き物はそうそういないため、舗装された道などありません。自然に形成された茂みの下は湿地帯で、徒歩で通行するには時間が使ってしまいます。
 幸いなことに《タティアナ・カモラネシ/Tatiana Camoranesi》の呪術によって、軽いセルヤは危険な場所を簡単に渡ることができましたが、体重の重い《バテュー・カヤ/Batur Kaya》はそうはいきません。彼はまるで沼を壊すかのように地を踏み鳴らして突進していきました。〈森の放浪者〉という彼の異名がよくわかる野性を印象付けました。

 しかしカイデロンの軍勢を目前というところの峡谷まで辿り着いたとき、事故は起こりました。セルヤとタティアナが渡ったときには丈夫そうに見えた吊り橋の綱が、バテューの重みに耐えられず切れてしまったのです。

「バテュー!」

4-3-133C《腐った綱橋/Rotten Rope Bridge》

 悲鳴ではなく咆哮を発するバテューはまさしく野獣そのものでしたが、森の英雄はすぐに落ち着きを取り戻しました。どうしていいのかわからず立ち尽くすセルヤとタティアナに、アルゴスに進むようにと命じたのです。
 崖の下に傷ついた仲間を置いたままで進むふたりの歩みは、それまでよりも一層速く、先を争うかのようでした。



■《カイン・ゴンザレス/Cain Gonzalez》、異端者の本拠に潜入すること

「異端に黙秘権はない。おまえたちの本拠地を答えよ」

 《エリザベス・ブランドリー/Elizabeth Brandley》に対抗するために、シェイクの大神官たちは独自に異端の指導者を生け捕りにする必要性を感じてしました。エリザベスの権力の巨大化に対抗するためには、目に見える成果が必要だったのです。
 逃走しようとした異端者を《セバスチャン・ハロード/Sebastian Harold》が捕らえ、彼と親しい《カイン・ゴンザレス/Cain Gonzalez》がその尋問を担当しました。エリザベスや《アナイス・テイラー/Anais Taylor》とは異なり、カインは天使よりもむしろ人間と交友を持つことを好む人物でした。

3-1-059E《カイン・ゴンザレス/Cain Gonzalez》
「セバスチャン、きみはこのイエバの作りもうた世界をどう思う? わたしには何を信じるべきなのかがわからない」

 尋問によって異端の本拠地がレイネであることを知ったカインは、自身が直接潜入する作戦を強行しました。翼さえ折り畳んでしまえば、天使だとは誰も信じないような容貌のおかげで、自然に異邦人の土地に溶け込むことができたのです。




■《アナイス・テイラー/Anais Taylor》森への救援を開始すること

 一方、出陣していたアナイスと羽たちは迅速にシエリオンに到着してはいましたが、想像以上に強力なカイデロンの大軍勢に怯まずにはいられませんでした。

「無暗に動くのは危険だ。待機し、必要な支援だけを行え」
 慎重なアナイスの動きにシエリオンの住民たちは歯噛みしましたが、事実その小さな支援は切実であったため、何も言えませんでした。

4-2-37C《森への奇跡/Miracle toward Forest》
森のあらゆる生命が救援を望んでいた。




■《ピエトロ・フリゴ/Pietro Frigo》、夢の道標の反論を叱責すること



4-4-214R《完成したクローン人間/Complited Clone》

「クローン人間を作って何をするつもり?」
「わかりませんか、メリナ? 人間を作り出せるようになれば、我々は神の領域に到達するのです」
「夢を見ない存在を人間だとは思わないわ、ピエトロ。あなたとカロラが作った化け物は、注入された思考をするだけのロボットと何ら変わりはない」

4-3-162U《叱責/Rebuke》 4-3-163U《反論/Rebuttal》

「夢がそんなに重要なものですか、二度梯子を上がった〈夢の道標〉、メリナ?あなたであっても、最後にはミアの知識を盗まれてしまった」
 己の不手際を指摘されたメリナは、論争から退くしかありませんでした。




■《カロラ・ロッシ/Carla Rossi》、完成された研究結果を行使すること

 ファミリアとホムンクルスを率いて出陣したカロラは、ドライアドの繁殖力に興味を抱いていました。岩を穿ち、根を下ろしたドライアドの戦士たちは己が踏み潰した土地を破壊してもしっかりと立ち、ドライアドの魔術師たちは新たな生命を作り出すのです。誰が見ても、強靭な生命である彼らを通常の武力で制圧するのは容易なことではありませんでした。

4-3-138U《岩を穿つ戦士/Rockroot Warrior》

 しかしカロラによる魔法と科学の融合は、すでに命を自在に操ることのできる段階に達していました。己が先頭に立ち作り出してきた実験体をさらに融合させ、爆弾や魔法をも超える破壊力を生み出しました。
 どれだけドライアドが頑強であろうとも、粉々にされては甦ることができません。彼らの破片は自動人形によって拾われました。新たな実験材料を確保したカロラは、ぞっとするような艶美な笑みで満足を示しました。



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