■《トルステン・フォン・ベルクマン二世/Torsten von Bergmann Ⅱ》、決戦の刻を知ること

「奇襲だ! 」

 深い眠りについていた《トルステン・フォン・ベルクマン二世/Torsten von Bergmann Ⅱ》は叫びに飛び起きました。

4-4-171C《寝室の警備兵/Bedchamber Guards》

「お逃げください! 反軍がここまで迫ってきます!」
 《寝室の警備兵/Bedchamber Guards》の声は未曾有の事態に焦りを隠せない様子でしたが、事態を把握した当の若き王はといえば、まるですべてを予測していたかのように却って平気になってしまっていました。



■《レア・シュミット/Leah Schmidt》、友人の裏切りを知ること

 王宮と司令部に対し、同時攻撃が行われていました。報せを聞いていち早く司令部に戻ってきた《レア・シュミット/Leah Schmidt》は、想像以上に多数の群衆が殺到していることに驚愕しなければなりませんでした。相手は《エルビン・フォン・ベルクマン/Erwin von Bergmann》の軍勢だけではなく、コロッセの市民も相当数混じっていました。民心がすでにトルステン二世から離れたことを悟ると同時に、レアの中でエルビンに対する怒りは大きくなっていきました。

(王族の戦いに、無辜の市民を犠牲にする正当性があるのか?)
「解散させろ! 家に帰らせなさい!」
 レアは指令を発しましたが、その間も司令部と王宮の周りには次々と人が集まり続けました。そしてその中心には、馴染みとなった戦友であるはずの《ベッカー・クラウゼ/Becker Krause》の姿さえあったのです。

「ベッカー、おまえまでも……、どうして?」
 唯一信頼できると思っていたはずの友人までもが敵将となって現れると、レアは状況の不利よりも戦いの正当性について混乱し始めるのでした。

4-4-166U《レアの葛藤/Conflict of Leah》



■《トルステン・フォン・ベルクマン二世/Torsten von Bergmann Ⅱ》、反軍の先鋒が赤鉄の騎士であることを知ること

 王宮を占領するために迫りつつあるエルビンの傍らには、数ヶ月前にアリーナで赤鉄鎧を下賜した騎士も含まれていました。己の心を魅了した腹心が、実際は《反軍の先鋒/Spearhead of Insurgent》であったということを知ったトルステン二世は茫然自失となりました。想像以上に多くの将軍がベッカーらと意を共にしていたのでした。

4-4-174R《反軍の先鋒/Spearhead of Insurgent》
「自分が尊敬していた赤鉄鎧の英雄が実は反軍の先鋒だったことを知り、トルステンは唖然とした」

「さぁ来い、エルビン。だがこの戦いがおまえとわたしの最後の戦いになるだろう」
「兄さんを失いたくはない。ふたりで新しい帝国を作ることはできないのか?」
「ひとつの国にふたりの王は不要。さて、どれほど強くなったのか見てやろうじゃないか」


■《エルビン・フォン・ベルクマン/Erwin von Bergmann》、戦いの終わりを知ること

 トルステン二世の剣は軽く鋭い剣でした。彼の派手な動作と相まり、戦いというよりはまるで舞踊のような剣戟が繰り出されました。一方、エルビンの剣は錆付き刃毀れしていて、どれほど持ちこたえるのかさえ疑わしいほどでした。

0-2-191U《鍛冶屋/Blacksmith》
「そういやエルビンはあの錆びた剣を持って逃げてたんだって? はっ、あの小僧、良い選択をしやがったな」

 しかし見ていた誰もが目を見張りました。エルビンの剣の腕前は侮れないもので、雪原を破り、生きるために振り続けてきた剣はまるで主人と一体化したかのようにエルビンの意のままに動きました。

「強くなったな、弟よ。どれほど持ち堪えられるか――!」
 兄弟は死力を振り絞って相対しました。そしてトルステン二世の剣は主人を守り続けることができず跳ね飛ばされ、エルビンの一閃が兄の身体を断ったのです。

0-2-199R《錆びた剣/Rusty Sword》
その剣は時代とともに錆びついて欠けていった。だがかつて第二次大陸戦争においては、皇帝の剣プラウテと対になる剣だった。

「大陸をエスファイアの赤い旗に染めたかった……。ついにわたしの目の前のすべてのものが赤く見える。泣くな、エルビン。王は他者の前で弱みを見せてはならない………」
 兄弟の短い再会は、二度と会えぬ形で幕を下ろしました。エスファイアに新たな王が誕生した瞬間でした。



■《セルヤ・タスデレン/Serya Tasdelen》、オベリスクの破壊とともに旅を終えること

 アルゴスに到着した《セルヤ・タスデレン/Serya Tasdelen》と《タティアナ・カモラネシ/Tatiana Camoranesi》はオベリスクの壮大さと堅牢さに驚くしかありませんでした。高く鋭い尖塔の入口はどこにあるのか、いや、そもそも入口が存在するのかさえわかりませんでした。塔の上の《盲目のカラス/》は薄気味の悪い鳴き声を出し、カラスを使役する月魔女のタティアナさえも攻撃してきました。

「空虚の力の鍵はあの中にありそうですね」
「いまはとにかく、シエナを攻撃してくる死体を撃退するためにもオベリスクを破壊しなければ……」

 あの巨大な柱を力で崩すには、勇猛な《バテュー・カヤ/Batur Kaya》の力が役に立つはずでした。しかし〈森の放浪者〉は吊り橋から落ちて傷を治癒しています。セルヤとタティアナ、エルフと神族のふたりだけで、いったいどのようにすればオベリスクを破壊できるでしょう?

 しばらく悩んだ末に、ふたりはその方法を見つけ出し、互いを一瞥して首を縦に振りました。セルヤは《新緑の剣/Sword of Verdant》を抜き、高く掲げました。すると暗いアルゴスへ向かい、緑色の光が飛んでいきます。《森の精霊/》がオベリスクの周囲に付着し始めたのです。命とは無縁であるはずの沼地に生命力が育ち始めたことは、無生物であるオベリスクさえも驚くほどの現象でした。

「エルフは巨大な岩を崩すときに、この方法を使う」
「でも、それだけではこの巨大な塔を崩すことはできませんね」
 タティアナは鎌で虚空を薙ぎ払いました。オベリスクに付着していた《森の精霊/》に青い稲妻が走り、轟音を立てて爆発しました。何にも破壊されないように見えた巨大な柱が氷河のように割れ、崩れ始めました。そして、破壊された柱の中心部には黒い宝石が輝いていました。

「これがオベリスクの力の源泉ね」
「でも、触れるのは危険そうです」
「そうでしょうね……、さて、わたしはバテューを探しにいこう。たぶん、傷を負っているだろうから」
「わかりました。わたしはメリナのところに戻ります」
「良い旅だった……、楽しかった」
「わたしもです」



■《アイカン/Aikhan》、友人を辛うじて護りきること

 同時刻。シエナの周囲では森の住民たちがカイデロンの軍団と交戦していました。終わりなしに押し寄せてくる死体と幽霊の軍勢の中で、《アニル・ルーレシ/Anil Luleci》にできるのは飛び回り、《シエナの種/Seed of Siena》を育つように補佐することだけでした。種は育ち、敵軍の足を縛り、それがシエナを守ることに繋がったのです。しかし敵兵の間を潜り抜けようとしていたアニルは、死体が振り回した鎖の一撃を受けて倒れてしまいました。

「こいつら!」

4-3-142U《アイカンの一撃/Aikhan's Blow》

 傷ついたアニルを握りしめて戦場を抜け出そうとする《アイカン/Aikhan》の咆哮は木霊となって響きました。治癒師を探すアイカンを追う亡霊には実体がなく、彼の拳骨はただただ空を切るだけでした。
「面倒なやつら!」
 そんな苦境の最中、突如亡霊たちがひとつ、またひとつと昇天し始めました。
「やったね、セルヤ……、ありがとう」
 傷ついたアニルの表情に笑顔が浮かびました。

 兵力の殆どが消滅してしまったカイデロン軍は戦闘を止め、後退していくのでした。



■《カイン・ゴンザレス/Cain Gonzalez》、異端者の本拠地襲撃に成功すること

 レイネへの潜入した《カイン・ゴンザレス/Cain Gonzalez》は、難なく異端者の本拠地を探し出すことに成功しました。すでに異端者と反乱軍の領域となったこの場所では、彼らはその所在を隠すこともなく、邪魔するものがいるだなんて予想すらせずに闊歩していたので、簡単でした。

 カインは己に従う羽たちとともに、神殿を強襲しました。彼らは力で制圧し、力で相手の意志を折ることに長けた天使たちでした。殲滅ではなく生け捕りを目的とする今回の作戦に特に適合した部隊だったといえるでしょう。

 神殿を守ろうとする信徒たちは信仰を惜しむことなく抗おうとしましたが、戦いにおいて信仰はそう役には立ちませんでした。しかし彼らが道を遮ろうとしている間、《クロエ・ヒートヤード/Chloe Hildyard》と《ジェイミ・ハロード/Jamie Harold》は地下に連結された下水道から退避することに成功していました。

4-4-206C《下水道へ退避/Sewer Evacuation》



■《クロエ・ヒートヤード/Chloe Hildyard》、火に呑まれること

「クロエさま、どうか生き残り、わたしたちの希望となってください」
「みなさん、ありがとうございます。イエバさまの恩寵が共にあらんことを………」
 ジェイミの手に導かれて走るクロエの足音が下水道に響きました。翼が役に立たない地下をカインと追撃者が追いかけてくる音も聞こえてきます。出口に向かって駆けていたクロエは、しかし最後にはジェイミの歩幅に合わせることができず、倒れてしまいました。

「あっ………」
 悲鳴もあげられずにクロエは身体を起こしました。ジェイミの背中を探そうとしましたが、彼はすでに暗闇の中に身を隠したあとでした。
「どこにあいるのですか、ジェイミ? わたしはまた捨てられたのですか?」
 《見捨てられた時期聖女/Forsaken Next Saintess》の頬を涙が伝いました。まだ幼い少女であるというのに、その間に経験したことがあまりに多すぎたのです――数多の出来事が頭を掠めていきました。身体を包む聖女のマントがひどく頼りないもののように感じました。

4-2-201U《見捨てられた次期聖女/Forsaken Next Saintess》

「救いを受けなければならないのは……他の誰でもない、わたしだったのですね………」

 救いたかった世界から追われ、騙されたクロエには、いまさら逃げるところも隠れるところもありませんでした。追跡者が彼女の華奢な手首に手錠をかけました。しかし、彼女は両手を上げて通路を仄かに明るくしていた灯りに近づきました。
「世界を明るくする光になろう。次の生で………」
 クロエの身を包んだマントに火が移りました。

「なんと……、馬鹿な!」
 あっという間の出来事に対し、カインはただ己の拳で膝を打つことしかできませんでした。

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