《ベリアルの契約者 エブリン/Evelyn, the Contractor of Belial》、
血族の言い争いに背筋を冷たくすること

 船を得たカイデロンの軍勢は堂々とカルペン湖の中に入っていきました。飛んでくる砲弾を悪魔が手掴みにし、飲み込んでしまえば、もはやラプリタの息の根は止まったようなものでした。
「いよいよラプリタだ。あそこを占領してしまえば、月の梯子に昇るのも簡単だろう。あの場所に力の残滓があるとは思えないが、ああも隠されている場所にいったい何があるのかは確かめねばなるまい」
(強くなることのほか、どんな目的があるというのだ? とにかくいまは互いに邪魔をしあうこいつらを上手く使わなくてはな)
 強さと畏怖を求めて魔王《ベリアル/Belial》と契約をした《ベリアルの契約者 エブリン/Evelyn, the Contractor of Belial》は、《アルゼン家の一代目頭首/First Head of Ahreujen》の言葉を聞き流しながら、そんなふうに思いました。

5-3-52H《ベリアルの契約者 エブリン/Evelyn, the Contractor of Belial》

「ラプリタに入ったなら、まずは〈夢の道標〉を探しだして殺すだけだ。いったいなんの話をしている?」
 と《死の花 ミケイラ/Mikhaila, Flower of the Dead》は一代目頭首を睨みました。
「数百年ぶりに訪れたチャンスだ。我々はこの機会を逃すべきではない」
「どうせラプリタを占領してしまえば、梯子などいくらでも昇ることができよう。我々の子はそうではない。いつ、どうなるかわからない子どもを放り出して、梯子だ? 正気か? そんな思いでよくあの子を育てようなどと思えるな?」
「それはおまえが気にすることではない。わたしが考えるべきことで――」
「わたしに命令するな」
 言い争いをするふたりを交互に眺めて、エブリンは勇気を振り絞って言いました。「あー、落ち着いてください。船が壊れそうだ」
「……おまえたちはおまえたちの思い通りにしていればいいさ。わたしの子さえ見つけられれば、すぐにアルケンを離れるんだから」
 ミケイラにはエブリンの表情は眼中になく、船ではお互いを喰い合いかねないような空気だけが流れていました。



《メリナ・エモンス/Melina Emmons》、
その魔力を示すこと

「現在、カイデロンの軍勢が船を駆って我々の元へ向かってきています。船の護衛は悪魔とゾンビ天使の編成です。大砲を撃っても悪魔が防いでしまうため、船の破壊は不可能です。あと5分ほどで船着場に到着するでしょう。内部での戦いを準備させます」
「そう……仕方ないな。準備を――」
 見張り兵の報告を聞いて、《魔力の支配者 シェンマ/Sciamma, Ruler of Spell》は戦いを避けられないことを悟り戦闘準備を命令しようとしたときのことでした。
「先輩、かなりお疲れみたいですが、大丈夫ですか? まさか無限の魔力のシェンマさまさまが、この程度の軍勢も対処できないで、わたしを待っていたなんてことはありませんよね?」
 そんなふうに戦況が動こうとしていた瞬間に現れたのは、ほかでもない《メリナ・エモンス/Melina Emmons》でした。「おい、きみ! この子を早く治療してあげて!」と背負っていたマリーを衛生兵に預けた彼女は、シェンマとともに尖塔の上に登りました。

「カイデロンの悪魔どもよ、聞くがよい。いまからでも湖から出ておまえたちの国の戻るのであれば、攻撃はすまい。だが、もし諦め悪く我々とこのラプリタを攻撃しようとする者は、この湖の魚の餌となるだろう!」
「黙れ! 魔術師!」とメリナの宣告に対してカルペン湖から返答をしたのはミケイラでした。「おまえがわたしの子を誘拐したのだろう! 声高に糾弾される愚かなことを仕出かしたのはおまえたちが先だ!」
「何の話だ! わたしはカイデロンの土地など一度も踏んだことなどない」
「我々が島に入れば、おまえたちもしぜんと理解できるだろう。四肢が裂かれる頃には思い出すだろう。覚悟しろ、〈夢の道標〉!」

 塔から降りると、メリナは溜め息を吐いてからシェンマに向き直りました。
「やむを得まいな……。先輩、マナを貸してください」
「きみに扱えるほどのマナを提供するのは大仕事だな。それにしても、きみに触れるのは久しぶりだ」
 シェンマの手がメリナの背に触れるや否や、青いオーラがメリナの周囲を取り巻きました。そしてメリナの詠唱が始まると、湖は彼女に応えました。穏やかだった湖の水面は怒涛のようにひとつ、またひとつと船を飲み込み始めたのです。

5-3-158R《魔力の爆発/Spell Explosion》

 辛うじて水から逃れられた者たちさえも、剣と槍のように鋭い水が飛んできて身体を分断されてしまいました。怯えた兵たちは後退を叫び、エブリンが乗っていた船もすぐに退却を始めました。もちろんミケイラは憤慨しました。己の失った子があの島にあるという確信を持っていた彼女は手におえませんでした。
 ようやく岸に辿り着いてみると、生き残った兵は元の1/4にも満ちませんでした。



トルステン一世、
息子たちと最後の晩餐を囲むこと

 防衛戦の成功に祝うアルケンでしたが、被害がなかったのは首都ラプリタだけであり、周辺の復興作業は必要でした。またシェイクはというと首都セノトを含むすべての地域に被害を受けており、被害者の数も五ヶ国の中で最も多かったのでした。しかし、被害を受けたぶんだけカイデロンへの敵意を募らせるのはまたシェイクであり、無理をしてでもカイデロン征伐への装いを整えつつありました。

5-4-213C《引き続く信頼/Continious Trust》

 シェイクでは、〈羽〉と呼ばれる天使たちをすぐに補充することはできなかったため、《イエバン・ナイト/Yevan Knight》を補充することを決定しました。補充兵の中には《最年少イエバンナイト エロン/Eron, the Youngest Yevan Knight》の姿もありました。連合軍の士気は満ち満ちており、共通の目的に向けて動き始めました。
 連合軍は軍をふたつに分けました。エスファイア軍の一部とシエリオンのエルフ、アルケンのキメラはエスファイア国境のカイデロン軍へと向かい、残りのエスファイア軍とシエリオンのドライアド、ドルイド、およびアルケンの一般兵はシエリオン国境側のカイデロン軍へと向かうととともに、海を超えて奇襲するシェイクの天使たちと挟撃するという作戦でした。

 出発前夜、トルステン一世は息子たちと戦争を話をしながら食事をしてワインを飲みました。その翌日のことでした――キメラを率いて連合軍に加わった《ピエトロ・フリゴ/Pietro Frigo》がエルフを率いる《セルヤ・タスデレン/Serya Tasdellen》に掴みかかられたのは。セルヤはピエトロの配下の者がトルステン一世を毒殺するために食べ物に毒を盛るところを目撃していたのでした。
 ピエトロは主張しました。この第三次大陸戦争においては、他国の被害増大の中で唯一無傷だったエスファイアは強力になりすぎてしまったのだと。カイデロン撃退後の大陸の戦力バランスを不均衡にしないためには、エスファイア王を殺すしかないのだと。セルヤはピエトロの仕出かしたことを剔抉することができず、黙認する形となりました。
 ピエトロがトルステン一世に服用させた毒は、普段なら不活性でしたが、活発に行動しようとすればするほど強力に身体に食い込む毒でした。



《ラジア・ベル/Lagia Belle》、
エスファイア王の呪念によって魔王を刺すこと

 出陣後、トルステン一世、ピエトロ、セルヤ、《アイリン・ベル/Irene Belle》らのエスファイア・アルケン・シエリオン・シェイク連合軍は、カイデロンのハネスに到着しました。ハネスの前で魔王《ベリアル/Beliall》と対面した連合軍は、魔王ただひとりを打ち倒すために《ラジア・ベル/Lagia Belle》、セルヤ、《ミュラ・タスディバル/Murat Tasdivar》、《レオン・クラウゼ/Leon Krause》、メリナ、そしてアイリンらその場にいた全戦力を投入しました。

5-4-XC《勇気と絶望/Courage and Despair》

 最初にミュラが倒れ、次に毒が活性化し始めたことでトルステン一世が倒れました。彼は死の間際、《皇帝の剣 プラウテ/Praute, Sword of Emperor》に己の残ったすべての生命を託し、ラジアに向けて投擲しました。ラジアも他の者たちと同様に負傷し、倒れていましたが、最後に己の命と精神を振り絞り、プラウテを掴み魔王ベリアルの身体を突き刺しましたが、このときにラジアも呪縛を受けました。

4-3-166CE《最後の一撃/The Last Blow》

 ラジアの魂の込められた一撃を受けた魔王ベリアルは衝撃を受けて倒れました。英雄たちは彼を殺すために最後の力を振り絞ろうとしましたが、その刹那、アイリンが後退を叫びました。
 皆、当惑しながらも、理由を知らぬままアイリンに従い、ラジアら兵の遺体を手付かずのまま後退を始めました。かろうじて回収できたのはトルステン一世の遺体だけでした。

5-3-XC《リハルトの怒り/Fury of Richard》






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