展覧会/『アベンジャーズ/エンドゲーム』
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(以下、『EG』)のレビュー・感想のページです。
完全にネタバレしているので、未視聴の方はお気をつけください。
ちなみに管理人のこれまでのMCUの視聴歴は視聴順で、
- 『アイアンマン』
- 『ドクター・ストレンジ』
- 『アントマン』
- 『アベンジャーズ』
- 『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(以下、『AoU』)
- 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
- 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(以下、『IW』)
- 『アントマン&ワスプ』
- 『キャプテン・アメリカ/ファースト・アベンジャー』
- 『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』
- 『キャプテン・マーベル』
- 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
です。半端ァ! また、原作コミックも見ていません。
アベンジャーズの中ではホークアイが最も好きで、二番目はファルコン、というわたしだが、『EG』でもっとも印象に残った、恰好良かったのは誰かと問われたら、キャプテン・アメリカであると答えるだろう。
話が唐突に変わるが、『AoU』の中で、ホークアイからこんな言葉が発せられた。
街が宙に浮いている。街が宙に浮き、敵はロボット。おれの武器は弓。笑えるだろ? でも戦うのが仕事だ。子守をしている暇はない。きみたちが何者でも関係ない。でも外に出たら戦え。残るなら誰かを寄越す。でも一歩外に出たら、きみはアベンジャーズだ。
ある意味で泣き言と取れなくもないこの台詞は、間違いなくアベンジャーズ最弱といえるホークアイから発せられたからこそ、胸を強く打った。
というのも、説教相手のスカーレットウィッチは最強格といっていいレベルである。サノスと一対一でもまったく負けていない。『EG』での描写を見るにインフィニティストーンなしで力比べをすると、
□強い
キャプテンマーベル
>スカーレットウィッチ
>サノス
>>ソー・ハルク・アイアンマンとか強いヒーロー・ヴィラン
>>スパイダーマン・アントマン・ウォーマシンとか能力・強い武器持ちのヒーロー・ヴィラン
>>ブラックウィドウ
>ホークアイ
■弱い
といったところではなかろうか。
対してホークアイは、上の順列を見てわかるように最弱である。武器は弓(笑)。間違いなく最弱だ。それがスカーレットウィッチに対して説教をする。間違いなく自分は弱いが、それでもヒーローとしてこの場にいるのだ、と。なんでもいいから正しいことのために戦うのがヒーローなのだ、と。ヒーローとしてこの場にいるのならヒーローになれ、と。
話は進んで今回の『EG』だが、その最終決戦は2014年のサノスがアベンジャーズの元に攻め込んでくることから始まる。サノスの空中戦艦の砲撃の嵐によってアベンジャーズの研究棟のような場所は壊滅。
ウォーマシン、ロケットは瓦礫に押し潰され、ハルク、アントマンは彼らを助けるために奮闘。ネビュラは捕まり、ホークアイはストーンを嵌め込んだガントレットを奪われないように逃げ回る中、最初にサノスに立ち向かったのは3人の男。
アイアンマン。
ソー。
そしてキャプテン・アメリカ。
3人がサノスに向かって並んで歩いていくシーンを見たとき、どう思っただろう? 何を感じただろう?
わたしの中に湧き上がってきた感情はたったひとつで、嘲笑である。
笑えたのだ。
どのくらい笑えたかというと、ソーがメタボ化しているのを見たときと同じくらい笑えた。だって、キャプテン(弱いほう)だぜ? 「ビッグ3」だとか呼ばれているらしいけど、いや、おまえ、ただの、所詮強い人間に過ぎないだろ。盾がすごいだけのキャップが、アイアンマンとソーと一緒に、あのゴリラと戦うんだぜ?
もちろん、いままでも「所詮は人間」といえるような存在が最強の敵に抗っていくシーンは珍しくはなかった。
わかりやすいところだと前作『IW』では、惑星タイタンでストーン持ちのサノスに対して、アイアンマンやスパイダーマン、ドクターストレンジなどが抗った。この中では、たとえばスターロードなんかはほぼ人間だ。
だがスターロードは武装が宇宙規模相応だし、そもそも集団戦なのだ。集団戦なら、ひとりが多少弱くても、チームプレイで援護のしようがある。
が、今回は、しかし、3人ぽっちなのだ。
相手は最強のゴリラで、左右の味方はアベンジャーズの中でも最強格のふたりなのだ。キャップ、おまえはなんだ? 超人(笑)兵士である。弱者だ。足手纏いだ。邪魔なだけだ。2対1ならアイアンマンにも勝ったことがある? ああ、そう。で、なんだおまえのその顔は。髭は辞めたか。真面目なツラして、おまえに何ができる。
サノスへ向かっていくとき、キャップは何を考えていただろう。
船が宙に浮いている。船が宙に浮き、敵はサノス。おれの武器は盾。笑えるだろ? でも戦うのが仕事だ。尻込みをしている暇はない。おれたちが何者でも関係ない。でも外に出たら戦う。残るなら誰かを寄越されるだろう。でも一歩外に出たら、おれはアベンジャーズだ。
戦いが始まると、やっぱりキャップは弱い。所詮はキャップ(弱いほう)だ。アイアンマンも倒され、まともに組み付けるのはソーだが、それも押され始める。ムジョルニアとストームブレイカーの二刀流になっても、まだ勝てないのだ。サノスは強い。なんでこんなに強いんだ。意味不明だぞ。ゴリラめ。くそゴリラ。
圧倒的に不利になった状況で、絶体絶命のそのとき、ムジョルニアが飛んでいく。ソーの手に向かってではない。別方向。誰だ。ヴィジョンは死んでいる。ソーより強いやつか? キャロル(キャプテン・マーベル)か? あるいはサノスが斥力のようなものを発生させたのか——違う。掴んだのはキャップだ。最初からそうであったかのように、ムジョルニアがキャップの手に収まった。
ムジョルニアは「高潔な心の持ち主」にしか持てない。
ほかでもこのフレーズは登場しているのかもしれないが、自分が知っている中だと『AoU』だけだ。『AoU』では酒の場でムジョルニアを持てるかチャレンジが行われる。ハルクですら、ムジョルニアは持てない。高潔な心の持ち主しか持てないのだ。『AoU』ではソー以外で最終的に持てたのはヴィジョンだけだった。
だが『EG』ではこのとき、神ではなく、インフィニティストーンも持っておらず、ろくな能力はなく、武器は盾、おまけに童貞。アメリカのケツを見せつける古臭いヒーロースーツの馬鹿がムジョルニアを握った。そして反撃を開始したのだ。
もちろんキャップがムジョルニアを握れたから勝てるわけではない。
そもそもムジョルニアの「高潔心の持ち主にしか持てない」だとかいうのも、所詮はアスガルドだとかいう、自称神のくせにたいした活躍しない宇宙人が住んでいる星の住人たちが定めたルールである。
だがキャップがムジョルニアを握ったとき、誰もが思っただろう。
やっぱりキャップは正しい心を持っていたんだ、と。
MCUはスチャラカ感漂う映画である。『EG』でもそれに恥じず、(特にソーが)アホをやるたびに映画館では観客から笑いが漏れた。
が、ただ一度だけ、笑いではない、「おぉ」という小さな歓声が観客の口から発せられたのは唯一、キャップがムジョルニアを握ったときだけだった。
『EG』のエンディングで、キャップはストーンを元の時間軸に戻すために移動し、しかし戻ってこない。ロジャースは氷漬けになっていて消え去っていた自分の人生を歩んだ。自分勝手な男である。バッキーはやり直しできなかったけどいいのかよ、などとツッコミたくもなる。もう、たぶん、ムジョルニアは持てないだろう。それでも彼は、あの戦いのとき、キャプテン・アメリカで、ムジョルニアを持てて、ヒーローだった。
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