かくもあらねば/20/02
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Desperade Cowboy Hatに隠された髪は白髪で、少なくとも四十は越えているであろう。顔には相応の皺も刻まれていて、年齢を感じさせるのであるが、Kutoに向けてくる表情はやけに若く、Sunglasses Green越しの瞳は少年のように活き活きと輝いていて、いまいち実際の年齢が判然としない。
装備も同じで、Desperade Cowboy Hatや Armored Dusterは戦い慣れた保安官を連想させるものなのだが、水筒だの食料だのが吊られた背中のLeather Backpackはまるで旅行者のようであり、極めつけは手に持っている武器である。Scope Kitつきの Crossbowなのだ。この銃と爆薬の時代に、である。
とはいえ、彼がKutoに襲いかかろうとしていたWhite Legsを倒してくれたのは、腕に突き刺さった矢を見るに間違いない。しかしいったい、なぜこのWhite Legsは動かなくなったのか。矢が刺さっているのは腕だけで、致命傷には見えないのだが。
(とりあえず、止めを刺しておこう)
Kutoは9mm PistolをWhite Legsの頭に向けた。いくらKutoでも、この距離ならば外さない。
そう思ったのだが、銃弾は命中しなかった。
「お嬢さん、とりあえず逃げましょう」
白髪の男がぐいとKutoの腕を引っ掴んで駆け出していた。おかげで、9mm Pistolを取り落としてしまう。
が、彼のおかげで助かった。直前までKutoがいた場所に、銃弾が放たれていた。撃ってきた方向を見れば、複数のWhite Legsが迫ってきていた。
「あの」とKutoは男に手を引かれて崖の反対側への吊り橋を駆けながら尋ねる。「さっきの矢は……」
「あれはただのCrossbow Boltですよ。お手製で、ちょっとした効果が付いていますが」
Perk: Crossbow Specialist (効果付きの矢を作成)
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男はくると振り返り、Kutoに視線を合わせた。なぜかKutoは、その瞬間に酷い嫌悪感のようなものを感じた。彼のその瞳が、やけに恐ろしく感じたのだ。
「残念ながら、これ一つで」と男はCrossbowをちらりと見やる。「彼らを全員倒すのは難しいかと思います。戦わないに越したことはありませんし、逃げるが勝ちです」
そうは言っても、一本しかない吊り橋を渡っているのだ。敵も狙いがつけ易かろう。今も弾丸が飛び交っている。これなら反撃したほうが確実だと思わないでもないのだが、武器を持つ本人が否というのなら、無理矢理言うことを聞かせるわけにもいかない。
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撃って。
「撃っ……」
Kutoが言い切る前に白髪の男の腕が動き、素早くCrossbowに矢を装填、撃っていた。
Perk: Rapid Reload(リロード速度上昇)その動作はほとんど機械のように素早く、精密だった。撃った先を見ずとも、Kutoにはその矢が命中したことがわかった。
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「へ?」
「いや、外したというか……」
白髪の男はCrossbowを下げて撃った先を睨む。Kutoも視線をそちらに向けると、崖の上のWhite Legsは倒れ伏していて、そのすぐ傍らに浅黒い肌の帽子を被った男が立っている。
こっちに来いとでも言うように、その帽子の男は手招きをして何やら叫んでいた。手に拳銃を持っており、倒れているWhite Legsに向けているので、どうやら白髪の男が撃つ前にあのWhite Legsを倒したようだが、味方とは限らない。無視して逃げたほうが良いかもしれない。
しかし白髪の男は、「どうやら敵意はなさそうですね」と言うとKutoの腕を掴んで男に近づこうとする。
「ちょっと……」Kutoは引き摺られながら言葉を紡ぐ。「危ないんじゃないですか?」
「敵意がないようなので、大丈夫です」
「敵意がないって………」
そんなの、この遠距離でどうやってわかるというのか。会話も交わしたわけでもないというのに。何か根拠があるというのか。
目を見て問い質したかったが、単に引き摺られているからというだけではなく、Kutoにはどうしても彼の目が見られなかった。
「こっち!」
近づくと、帽子の男がそう言っているのがわかった。彼は銃をKutoたちの背後、吊り橋に向ける。見れば、吊り橋を渡りWhite Legsたちが追いかけてきていた。
帽子の男が拳銃を連射する。吊り橋を繋ぐ綱に当たったのか、あるいは橋が老朽化していたのか、吊り橋の綱が切れ、White Legsたちは落ちていった。
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と帽子の男は片言の英語で言った。銃を向けて警戒している様子ではあるが、武器を構えていない白髪の男とKuto相手に撃たないということは、やはり敵意はないのだろう。
「助けてくれて、ありがとう」と白髪の男が手を差し出す。「ぼくはDidiだ」
「おれ、Follows Chalk」
と帽子の男は武器を下ろしてDidiの手を握った。
その後、ふたりの男の視線がKutoに集中する。こうなっては、名乗らないわけにはいかない。「Kutoです」と答えておく。
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「Civilized lands?」
「四角い山や、固い土のある場所だ。違うのか?」
Follows Chalkが言っているのは、戦前の建築物や道路のことのようだ。となれば、Civilized landsとはMojave Wastelandなど、戦前の設備がある程度残っているような場所を指すのだろう。逆に言えば、この場所は文明化されていない場所ということだ。
「たぶん、そうかな」とDidiが答える。「ぼくは北のほうから来たんだけど……。きみは?」
「わたしは西海岸……、Mojave Wasetelandからです」とKutoは正直に言った。
「そうか」とFollows Chalkは満足げな表情で頷く。「たぶんJoshuaがあんたたちと話したがると思う。ここは危ないし、良かったらEasten Virginまで来ないか?」
「Joshua?」
Kutoは思わず聞き返してしまった。
Follows Chalkはなんでもないような顔で、頷く。「Joshuaは、とても良い人だ。おれたちの友だちだ」
(Joshuaって、Joshua Graham………?)
KutoはMojave WastelandでHappy Trail Caravanとともに出発する直前、Jed Mastersonから聞いた言葉を思い出していた。
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「Joshua Graham? 誰ですか?」と、そのときKutoは尋ねた。
「とにかく、気をつけろ。New Canaanを混乱に陥れている男だ。炎の魔人って別名もある。化けもんみたいなやつらしい」
(いや、それ以前にも……)
何処かで炎の魔人の名を聞いたことがあったような気がする。しかし、何処だっただろう。思い出せない。
Jedは、Joshua Grahamには気をつけろと言っていた。しかしFollows Chalkの言うJoshuaが、当のJoshua Grahamなのかどうかわからないし、何よりこの場に独りで佇んでいては危険だ。得体の知れない白髪の男、Didiとともに、KutoはFollows Chalkの村へと向かうことになった。
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