かくもあらねば/32/04
Cecilia
Lv. 4
S/P/E/C/I/A/L=4/10/4/5/8/6/3
Trait: Logan's Loophole, Wild Wasteland
Tag: E. Weapons, Science, Survival
Skill:
[S] M.Weapon=16
[P] E.Weapon=50, Explosives=24, Lockpick=30
[E] Survival=30, Unarmed=12
[C] Barter=14, Speech=14
[I] Medicine=23, Repair=20, Science=50
[A] Guns=16, Sneak=16
Perk:
[I] Comprehension, Swift Learner
[Other] Brainless, Heartless, Spineless
Equipment: Sonic Emitter, X-2 Antenna, Patient Gown
全身が熱いのに、身体の芯は不思議と冷たい。血が止まっていることだけが唯一の救いだ。Ceciliaは命辛々、Think Tankに戻ってきた。Think Tankには、確かAuto-Docがあったはずだ。ただそれだけを希望に持って。
だがAuto-Docの操作パネルに表示されていたのは、無情な言葉だった。
『人格ファイルに異常があります。予備のホロテープと交換してください』
動かない。予備のホロテープなど、持っていない。
Ceciliaは床に倒れた。もう動く気力がない。このまま死んでしまうかもしれない。
(そうだ………)
CeciliaはThink Tankたちの科学者の言葉を思い出した。Think Tankに接続されたこの場所、SinkにはDr. Mobiusの作り出した数々の機械が放置されており、使い方によっては有用なので使ってみてはどうだ、ということだった。それを動かすためのモジュールも渡されていた。
Ceciliaは這って進み、中央の円形のCentral Intelligence Unitに人格モジュールを挿入した。
反応は、なかった。
「痛いよ、痛いよ」
ぽろぽろと涙が零れた。
本当に辛いのは、痛みではない。
「寂しいよ」
ひとりきりなのが、辛い。なぜこんなにも、己ひとりだけという状況が辛いのか、誰とも会話を交わせないというのが悲しいのか、それは解らない。だが、辛い。
『ようこそいらっりゃいました、旦那さま。Sink一同、心からお慶び申し上げます』
電子音声だとはっきり判るその声は、先ほどモジュールを挿入した中央の円形台から発せられていた。見れば、僅かに灯りも点っている。どうやら反応がなかったのは、起動中だったからというだけらしい。
不意にCeciliaは己の目元が濡れるのを感じた。Central Unitは、Think Tankの科学者たちのように脳を持っているわけでも、Lobotomiteのように肉体を持っているわけでもない、擬似人格だろう。だが不思議とその中に、Ceciliaは人間味を見て、だから嬉しくなった。
『旦那さま、どうしましたか?』
と不思議そうな調子でCentral Unitが尋ねてくる。
「わたしは……」Ceciliaは目元を拭う。「女なんですが、旦那さま、というのは………」
『それは申し訳ございません。実を申しますと、わたしの言語プログラムは男性相手を想定してしかインストールが行われておりません。大変申し訳ございませんが、ご了承くださるとこちらとしましても、非常に助かります、旦那さま』
「あ、はい、それは……、良いのですが、ええと、わたし怪我してて、それでAuto Docが動かないので………」
『ええ、現在機能が停止しているようですね。お薬をお出しいたしましょうか?』
「薬があるんですか!?」
『StimpakやDoctar Bagなどでしたら販売しております』
販売というので、少し不安だったが、幸いLobotomiteたちから回収してきた物品を売り払うことで、Capsの算段はついた。Doctor's BagとStimpakを買い、己の身体の治療を行う。
Added: Doctor's Bag
Added: Stimpak
「あなたは……」とCeciliaは治療をしながら尋ねる。「人工知能?」
『残念ながら少し違います、旦那さま。通常のOS上に仮想的に構築された統合模擬人格です。いわゆる人工知能というものとは異なるということをご了承ください』
「成る程……?」
いまいちよく理解できなかったものの、曖昧に頷いておく。
『あの……、旦那さま。ひとつよろしいでしょうか?』
と、今度はCentral Unitのほうから声をかけてくる。
「なんですか?」
『現在、Auto-Docを初めとして、殆どの人格モジュールと連絡が取れなくなっています。もし旦那さまがわたくしめのお願いを聞いていただけるのでしたら、この者どもを助けてやっていただきたいと存じます』
Central Unit曰く、バックアップ用の人格モジュールが入ったホロテープを使えば機能が復帰し、Ceciliaもその恩恵を受けることができるようになるという。
「わかりました。それらしいホロテープを見つけたら持ってきます」頷いて、ひとつ気になることを尋ねる。「あの、ひとつ訊いてもいいですか?」
『なんなりと』
「人格モジュールが必要ってことは、ほかの機械にも……、たとえばAuto-DocならAuto-Docの人格があるってことですよね。どうしてこの場所には、そんなにたくさんの人格が備え付けてあるのですか?」
『わたくしめの解釈でよろしければお答えいたしますが……、このSinkという場所は、Dr. Mobiusの所有物でした。彼の専門はマン・マシンインターフェイスであり、その実験の延長としてわれわれは構築されたようです。もっとも、少し趣味が勝ちすぎるようですが』
成る程、と頷きながら、CeciliaはDr. Kleinとの会話を思い出した。
「どうしてDr. Mobiusという方は、わたしの脳を奪ったのですか?」
Ceciliaがこう尋ねたとき、Dr. Kleinは、狂っているのだ、と端的に答えた。
『狂っているのだよ。やつはわれわれのような清潔なBiogel……、脳を浸す水溶液を使っていない。随分と長い間、な。その結果として、精神に異常を来たしたというわけだ。ひたすら狂気だよ』
そうなのだろうか。
少なくとも、賑やかなこのSinkを見る限りでは、Dr. Mobiusという人はとても優しい人に感じられる。それともそれが、狂ってから変わってしまったのだろうか。
もうひとつ疑問があった。Ceciliaは治療を終えて、奥の部屋へと向かう。そこには4つの液体を携えた容器がある。
脊髄。
心臓。
脳を入れていたと思しき何も入っていない容器。
そして。
(綺麗な女の人………)
最後の、ほかの3つと比べると大きな容器に入っているのは、成熟した大人の女性の身体だ。目を瞑り、まるで眠っているかのごとくに揺蕩っている。
この女性に関する説明を、Think Tankの科学者はいっさいしなかった。Ceciliaが尋ねようとしても、ひたすらにはぐらかすだけだったのだ。何か彼らは秘密を抱えているらしい。
改めて、容器の中で眠っているような女性を観察する。
なぜだかCeciliaは、その女の美しい顔に見覚えがあるような気がした。
0 件のコメント:
コメントを投稿