かくもあらねば/32/09

X-13: Attack of the Infiltrator!

Cecilia
Lv. 11
S/P/E/C/I/A/L=4/10/4/5/8/6/3
Trait: Logan's Loophole, Wild Wasteland
Tag: E. Weapons, Science, Survival
Skill:
[S] M.Weapon=31
[P] E.Weapon=70, Explosives=30, Lockpick=50
[E] Survival=45, Unarmed=12
[C] Barter=14, Speech=14
[I] Medicine=35, Repair=20, Science=60
[A] Guns=16, Sneak=16
Perk:
[P] Plasma Spaz, Run'n Gun
[E] Travel Light
[I] Comprehension, Swift Learner
[Other] Brainless, Heartless, Spineless
Equipment: Sonic Emitter, X-2 Antenna, LAER, Patient Gown

 X-8にRoxieの墓を立てたあと、Higs Villageに向かったのは、ふと思い出したことがあったからだった。
 人っこひとりおらず、不気味な雰囲気さえ漂わせているHiggs Villageには、一匹の小さなDeathcrowがいる。これがThink Tankの科学者たちが作ったものなのか、それとも突発的に自然発生したものなのかは知らない。しかし襲い掛かってくるそれを、以前は対処できなかった。X-2 Antennaでは小さなDeathcrowには当てにくいし、Sonic Emitterは分厚い皮膚に効果が薄かったのだ。


 だがGabeから取り外したLAERは、その奇妙な生物を撃退するのに役立った。

Perk: Plasma Spaz (E兵器の消費AP低下)

 どうやら小さいDeathcrowはこの一体だけのようだ。Ceciliaと同じで、突然変異に近い生き物なのかもしれない。自分が殺したとはいえ、罪悪感に近いものに囚われ、Ceciliaは死体の前で手を合わせた。

 Gabeの犬小屋は、犬のものにしてはやや大きめということ以外には、何の変哲もないものだった。きっともともと大きな犬だったのだろう。壊れかけではあるものの、Gabeのアルファベットの形をしたブロックが小屋を彩っている。


あの人がこんな犬小屋を作ったのかな………)
 経年劣化とは違う、釘が浮いていたり、塗装が重なっていたりといった、職人が手がけたものとは思えない失敗が随所に見られるのだから、犬を飼っていた本人が作ったと考えて間違いないだろう。
 CeciliaはGabeが使っていたのであろう皿を拾い上げて、Think Tankへと戻った。

Added: Gabe's Bowl

『-ご苦労だった。戦闘プログラムの適用で手がつけられなかった。だから仕方がないことだ-』
 Think Tankに戻ったCeciliaを出迎えたのはGabeの飼い主であるDr. Borousだった。珍しいことだ。
 口汚く罵られると思っていただけ、彼の対応は意外だった。


『-まさか。むしろ、ありがとう、とでも言うべきなんだろう。少なくともCyber Dogに関するひとつのテストの結果が出たわけなんだから-』
 Borousは口ではそんなふうに言う。機械の身体を得ただけあって、表情の変化は判らない。
 だがCeciliaはHigs Villageで見つけたGabeの皿を見せずにはいられなかった。
「これは、Gabeの皿ですか?」
 と問えば、一瞬前を空けてから返答が返ってくる。
『-そうだ。その中にいつも餌を入れてやっていた。Cyber Dogの処置手術前には、薬品をたんまりとくれてやった-』

 Ceciliaが何も答えずにいると、Borousはマニピュレーターを伸ばして皿を奪った。機械の両の手で、皿をくるくると回す。
『-それでも、あいつはなんにも疑うことなく。ぼくが何をするかも知らないで、尻尾を振って……、あいつは………-』
「泣いているんですか?」

Challenge: Speech≧45→FAILED

『-まさか-』とがらりと声の色を変えてBorousは言った。『-Gabeは科学のために身を捧げた。こんなに嬉しいことはない。Gabeの皿はもらっておくよ。ありがとう-』
 離れていくBorousの背中を見送りながら、ありがとう、とは彼らThink Tankの科学者からは初めて聞いた言葉だな、とCeciliaは思った。

『Lobotomite』
 急に背中から声をかけられ、反射的に振り向いたCeciliaだったが、振り向かなければ良かった、と思ってしまった。声だけで、その相手が誰か認識できたからだ。


(うっ………)
 ほかの4人以上に、このDr. Dalaなる人物は苦手だ。それでも声をかけられた以上、逃げ出すことはできない。
『Think Tankを堂々と歩いていく貴重な標本、恐れることなく闊歩するTeddy Bear』Dr. Dalaは歌うように言う。『さっき、Dr. Borousが泣いている、とあなたは言っていましたが、それは本当ですか?』
「わたしがそう思っただけですが………」
 とCeciliaは正直に答える。
『神経間による電流伝達によって筋肉が収縮することで実現される生理反応ですね』とDalaは受けて言う。『脳切除を受けたLobotomiteの表情パターンの減少に関してはわたしの分野外ですが……、不思議ですね、あなたは』
「あなたは……、わたしが羨ましいんですか?」

Challenge: PER≧8→SUCCEEDED

『羨ましい? わたしが? あなたのような下等なLobotomiteを?』
 Dalaの声が急に侮蔑の色を帯びる。
「だって、泣いたりだとか、表情だとかに興味を持っているようだから……。あなたたちは、泣くことも、笑うこともできないでしょう?」
『そんなものは神経と筋肉と皮下組織の反応です。わたしにだって笑うことくらいできます』
 そう前置いてから、Dr. Dalaは奇妙な笑い声をたて始めた。モニタの中の目や口が動かないだけ、不気味であった。
『ふぅ……。どうですか、わたしも大したものでしょう』
 とDr. Dalaは息を吐いてから言った。どこか満足するところがあったらしい。

「あなたはどうしてわたしの脳を切除したんですか?」
 この機にCeciliaは訊いてみることにした。ロボトミー手術を行っているのは、このDr. Dalaだという。
『それは………』
 Dalaは押し黙る。
 不思議だ、とCecililaは思った。押し黙るというのは、何か言いたくない、ばつの悪い理由があるということだ。単に言いたくないことがあるだけならば、誤魔化すだとか、おまえの知ることじゃない、だとか言えば良い。現に、Think Tankの科学者たちは、これまでそうしてきたはずだ。
 なのにいま、Dalaは黙った。それは、Ceciliaに隠匿してきた事実を話すべきなのか、そうでないのかを迷っているように見えた。


『兎に角、脳がないものはないんですから、鉄塔には注意するようにしてください』
 結局、Dalaが教えてくれたのはこれだけだった。
「鉄塔?」
『あなたの頭に入っているTesla Coilの機能を妨害するものが入っています。Lobotomiteや生体兵器が脱出しないようにするためのものです』
「それはわたしは逃げられないということですか?」
その通りです。だから、変なことは考えないように』
 和やかな喋り方とは一変しての、厳しい口調であった。
 だがなぜかCeciliaは、その中にGabeの皿を見たときのDr. Borousと同じ感情の色を見た。まるで泣いているようだ、と思ったのだ


Discovered: X-12 Research Center

 次なる目的地はX-13という場所で、そこではStealth Suitが手に入るそうなのだ。西にあるその施設に向かう前に、CeciliaはX-12という建物を見つけた。中に入ると、地階がある構造なのだが、階段が仄かに青く光る障壁によって阻まれていた。
「でもいまはこれがあるから
 CeciliaがSonic Emitterを障壁に向かって発射すると、ぱん、という弾けるような音ともに障壁が掻き消える。


「何か役立つものでもあるかなぁ」
 そんな呟きは銃声で遮られた。地階から機関銃なようなものを携え、火花を散らす人影がひとつ。いや、人ではない。Trauma Harnessだ。
 異物を発見して接近してくるTrauma Harnessに対し、CeciliaはSonic Emitterを撃ち返した。アップグレードされても威力は変わらなかったが、音波の塊はTrama Harnessとその中の死体を簡単に撃ち抜くだけの威力があった。


 その後も現れたTrauma Harnessを蹴散らしながら地階に下りてみると、彼らが持っていたらしい武器が落ちていた。
「でっかい銃だなぁ………」


 持ち上げてみる。存外に軽くて撃てないことはなさそうだ。

Added: K9000 Cyberdog Gun

 撃ってみて、危うくその銃を取り落としそうになってしまった。というのも、撃つたびにその銃は、犬の鳴き声をあげるのだ。
 よくよく見れば、銃の弾倉付近に硝子球のようなものがあって、中にはThink Tankの科学者たちがBiogelだとか呼んでいたぶよぶよとした液体が入っているのだが、その中にピンク色の肉塊が見える。脳だ。犬の脳を銃に組み込んでいるのだ。


 Dr. BorousやDr. Dalaと話をして、少なからず心が通じ合ったような気がした。ふつうの人間とそうは変わらないのだと思った。だが、そうではなかった。
「やっぱりあの人たちって、なに考えているか解んない」


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