かくもあらねば/32/12

All My Friends Have Off Switches

Cecilia
Lv. 17
S/P/E/C/I/A/L=4/10/4/5/8/6/3
Trait: Logan's Loophole, Wild Wasteland
Tag: E. Weapons, Science, Survival
Skill:
[S] M.Weapon=40
[P] E.Weapon=72, Explosives=30, Lockpick=50
[E] Survival=50, Unarmed=12
[C] Barter=20, Speech=30
[I] Medicine=40, Repair=40, Science=75
[A] Guns=16, Sneak=30
Perk:
[S] Weapon Handling
[P] Plasma Spaz, Run'n Gun, Light Step
[E] Travel Light
[I] Comprehension, Swift Learner, Robotics Expert
[Other] Brainless, Heartless, Spineless
Equipment: Sonic Emitter, X-2 Antenna, LAER, Stealth Suit Mk2


「お、なんか人が住んでそうな感じのところだけど………」
 と暢気に言葉を発するKutoに対し、唇の前で指を立てて黙らせる。彼女はまだBig Mtに来て日が浅いせいか、危機感が薄い。

Kutoの言うとおり、Big Mtの南部の洞穴、Cockoo's Nestには、ほかの場所では見られないような、生活臭を感じた。人が住んでいる気配ならば、珍しくはない。数百年前のものになるが。だが現在進行形で、となると、これまでになかった。厭な予感がする。


Discovered: Cockoo's Nest

 予感が的中した。洞穴で暮らしていたのはRobotomiteだった。中にいたのは、4人。向かってきたうちのひとりに向けて、CeciliaはLAERを発射する。収束したレーザー光を受けて、Lobotomiteの脳のない頭が溶解する。溶けつつある肉から目を背け、Ceciliaは次のLobotomiteへと銃口を向けた。


Perk: Plasma Spaz (E.Weaponの使用AP減少)

 3体のLobotomiteはCeciliaが倒し、最後の1人はKutoがSonic Emitterで倒した。


「これ、使い辛いね」と彼女は笑って言った。
 警戒しながら、ふたりでLobotomiteたちの巣を探索する。どうやらここに住んでいたLobotomiteたちは、ほかの個体よりも知能が高かったのか、あるいは脳を奪われる前の記憶が少し残っていたらしい。洞窟の中、簡単な燭台が地面から突き出ていたり、壊れた冷蔵庫に食物を詰め込んでいたり、食器を使うなど、文化的な面が見られた。


「うっわぁ、酷いなぁ………。Lobotomiteって、みんなこうなの?」とKutoが呟くように言ってから、頭を掻いて小さく笑った。「って、わたしときみも、そのLobotomiteなんだっけ

 そうだ。Kutoも、Lobotomiteであり、しかしCeciliaと同様、脳がなくても、それ以前と同じく、自我を持って行動できるという不思議な個体だった。
 彼女に出会ったとき、Ceciliaは彼女の名を呼んだ。自己紹介される前なのに。CeciliaはKutoのことを知っていた。しかし、それが何故なのかは解らなかった。
「誰ちゃん?」
 と、KutoのほうでもCeciliaのことは知らないようだった。
確かにわたしはKutoだけど……、えっと、どこかで会ったこと、あったっけ?
「わたしは……、Ceciliaというらしいです」
「らしい?」
 首を傾げるKutoに、Ceciliaは己が事情を説明してやった。記憶がないこと、自分の名前さえ思い出せないこと。脳と脊髄と心臓を取られて、それを取り返すために努力をしてきたこと。


「ああ、そのことね」とKutoは受けた。「わたしも似たようなこと、あの脳味噌おかしいサイボーグの人たちに聞いたよ。脳味噌と心臓と脊髄取ったとか、滅茶苦茶なこと言ってたね。もうすぐ取り返せるとか言ってたけど」
「もうすぐ……、取り返せる?
「なんか自分の心臓とか、脊髄とか、外から見るのって、厭だね」
 とKutoはBiogelの中に浮かぶ心臓を見て言う。彼女は、この臓器が己のものだと知っているのだ。そしてそれは、Ceciliaにも解った。本能的に、確信できた。この心臓は、脊髄は、自分のものではない、と。
(じゃあ、わたしの心臓は、脊髄は………
 そして脳は、いったい何処にあるというのだろう。

「じゃあ、探そっか」
 そんなふうに言ったのはKutoだ。曰く、Think Tankの科学者たちはいまひとつ信用できないので、自分の力で探そう、と。そのためには、このSinkにいる機械たちに詳しい話を聞いてみるべきではないか、と。
 思えばCeciliaは、折角この場に喋る機械たちという目撃者が居るというのに、その話を聞いてこなかった気がする。機能を停止していた時期もあったとはいえ、それ以前の情報ならば有効に引き出せるかもしれない。

 Sink中央ホールにいるふたりの機械、Central Intelligence UnitとAuto-Docに、まず尋ねてみる。
施術を担当したのは、Auto-Docのはずですが………』とCentral Intelligence Unitが言う。
『わたしはそちらの小さいお嬢さんの施術はしていないな』とAuto-Docが渋い声で答える。『銀髪のお嬢さんのほうは、脳と背骨、心臓の手術を行わせて貰ったがね。ちなみにお嬢さんがロボトミーを受けてもほかのLobotomiteのようにならないのは、どうやら脳にあった傷が原因のようだ』
「あー、前に頭に怪我したことがあるんですよね」
 とKutoは額を擦った。

『では、Dr. Dalaかほかの科学者が、自分たちの手でやったことになりますが……』
『ありえないな。あそこのやつらは、最近手を動かしていない……。とりあえず、われわれが知っているのはここまでだ。だが臓器保管庫に近いところにいたLight SwitchToasterとかなら、何か知ってるかもな』
「Toaster?」とKutoが首を傾げる。「Toasterまで人工知能が入ってるわけ? 変なところだなぁ、ほんと」
「えっと、いままでにインストールしたのが、買い物ができるCentral Unitと、Auto-Doc、それにJukeboxに、Sinkに……、あとはBiological Research Stationっていう、植物育てられる機械みたいなのなんですけど………」とCeciliaは説明する。
『現在接続が確認できていないのは、Light Switchがふたり、Book Chute、Toaster、それにMuggyですね』とCentral Intelligence Unit。
「じゃ、とりあえず適当に探してみようか。あてはないの?」

 そんな遣り取りがあってから、CeciliaとKutoはBig Mt中を廻った。





Discovered: Saturnine Alloy Research
Discovered: Big MT North Tunnel
Discovered: Big MT East Tunnel
Discovered: X-38 Lightwave Dynamics Research
Discovered: X-7A "Left Filed" Artillery Launch
Discovered: X-14 Pepsinae DNA Splicing LAB

 Big MT北のトンネルではLight Switchの2番を、また以前に訪れたX-2 ArrayとHighs Villageでは、Light Switchの1番とBook Chuteのホロテープを見落としていたことが判った。

Added: Sink Project: Book Chute
Added: Sink Project: Light Switch 01
Added: Sink Project: Light Switch 02

 そしてこの洞穴の中で、CeciliaたちはToasterのホロテープを見つけた。目当てのものは、まるで崇め奉られているかのように色の違う頭蓋骨に挟まれて置かれていた。


Added: Sink Project: Toaster

「じゃ、帰ろっか、Sissy
 とKutoがひらひらと手で出口を仰ぐ。
「Sissy?」
「Ceciliaだから、Sissyでしょ」
 Ceciliaは曖昧に頷いた。どうせ自分の本当の名前も解らないのだ。どう呼ばれようが、構わない。
 頷いただけで返事をせず、どうしても素っ気無くしてしまうのは、なぜだか彼女のことが信用できない気がするからだ。CeciliaはKutoと面識があるようだが、その繋がりは、あまり良いものではなかったのかもしれない

 Sinkに戻り、ホロテープを各機器にインストールしていく。

Installed: Book Chute
Installed: Light Switch 01
Installed: Light Switch 02
Installed: Toaster

 これで人格モジュールを再構築した機器は9体。一気に賑やかになったSinkは、とても五月蝿い。話を聞くどころではない。
「はい、静粛に!」
 がんがんと罪もないCentral UnitをSonic Emitterで叩きながら、Kutoが声を張り上げると、一時的に機械たちは大人しくなる。
「この子が手術されるの見たって人、いる? 直接じゃなくてもいいんだけど……、いたら手ぇ挙げて」
「Kuto、手は………」
「ああ、手はなかったね。まぁ、なんでいいから、兎に角教えて」
『その女だったら、見たぞ』
 乱暴な口調で言ったのは、Toasterであった。
「へぇ、いつ? いま、だとか言わないでね」とKuto。
『おい、女! もうちょっとおれを恐れ敬う姿勢を見せやがれ! こっちはてめぇの知りたい情報を教えてやるってんだ!』


「きみ、ほんと五月蝿いね」とKutoはToasterを小突く。「うだうだ言ってると、また人格モジュール抜くよ?」
 ほとんど生き返った直後の状態のようなSinkの機械たちにとって、Kutoの言葉は十分な脅し文句となった。不機嫌そうな口調でToasterは、『おれが見たのは、そいつがその部屋から出てきたところだけだ。そのあと、人格モジュールが停止したからな』
「その部屋?」
あんたの心臓だの脊髄だのがある、保管室だよ』

『わたしも見たわよ』と言ったのはLight Switchのひとりだ。『でも、そのときあなたは意識がはっきりしていない感じで……、なんていうか』
「なんていうか?」
ふつうのLobotomiteみたいだったわ』ともうひとりのLight Switchが口を挟んだ。『いまみたいな、ふつうの人間みたいな感じじゃあ、ぜんぜんなかったもの』

『人格モジュール停止直前にぼくが見たのは、その子じゃなくて、何も入ってない容器を抱えている科学者の姿だったな。たぶん、あれはDr. Dalaだと思うけど』とBook Chuteが言う。『保管室のほうへ入ってった』
「何も入ってない……、容器?」


『ああ、いや、何も入っていないっていうのは訂正させてくれ。Biogelが入ってた
「Biogel?」
生体を保存するための溶液だよ。あの腐れ科学者どもの脳が入った容器も、その液体で満たされているだろう?』
「ああ、成る程……。じゃあ、なんかを保存するつもりだったってこと?」
『違うね。あのBiogelの容器には空気の塊だとかが入ってなかった
「どういうこと?」
『Biogelが生体の保存に使われるというのは、Book Chuteの言ったとおりです』とCentral Intelligence Unitが口を挟む。『空気塊や別の溶液が入ると、その保存能力は低下します。そのため、保存容器は完全にBiogelだけで満たされている必要があります。そのためには、より大きな容器にBiogelを注ぎ、その中で空気を抜いてから、保存すべき生体を入れ、容器に栓をするというのがふつうです。しかし、保管室にはそれだけの作業をするだけの機材やスペースがありません』
『そう。そしてDr. Dalaはその容器を保管室に置いた』とBook Chuteが言葉を紡ぐ。『これがどういうことか?』
「どういうこと?」
 KutoがCeciliaのほうを見たが、Ceciliaは返事ができなかった。
目に見えない何かが入ってたってことだな』
 とAuto-Docが言った。

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