展覧会/『ラストクロニクル』/第5弾フレーバー考察
- 目次
- 幼年期の終わり
- 情け無用の第一界
- 龍のかわいい第二界
- 死して咲く花、第三界
- 一年でいちばん暗い第四界
■幼年期の終わり
5-087U《理力の降来》 |
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それは最初、荒れ果てたザルガンの地に、天からまばゆい奇妙な光が降り注いだことから始まった。 |
第三弾で災害獣、第四弾で《滅史の災魂 ゴズ・オム》と敵対勢力が登場したことで、一気に話が進んだラストクロニクルであったが、第五弾では《滅史の災魂 ゴズ・オム》との戦いは起きない。
代わりに生じたのが未曾有の混乱である。
《滅史の災魂 ゴズ・オム》が登場し、クロノグリフの改竄を行ったことで世界の秩序が乱れた。その影響は、たとえば《虹色カメレオン》のような無害な形でも現れたが、もちろんそれだけでは済まなかった。
時空が捻れたことにより、未来から来訪者が現れたのである。
5-091U《未来からの到達》 |
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最初に彼らと遭遇したのは、ザルガンを徘徊する無法者の一団であったとされる。そして彼らは、おそらくアトランティカで最初のロジカの覚醒者となった。 |
ロジカを自称する彼らは理力という新たな力を掲げ、《疫魔の獣 イルルガングエ》や《滅史の災魂 ゴズ・オム》によって徹底的に破壊されたバストリアを占拠し、武力行使とともに理力による改革を行った。
5-088C《ロジカニアバインド》 |
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理力の鎖による強制的な覚醒は、未開の精神には想像を絶する苦痛を与える。それはときに、精神を粉々に破壊しさえするのだ。 |
《理法の元首 ロギナス》をリーダーとするロジカは神々への復讐を掲げ、《クロノウォーマシーン》や《クロノフォースメイデン》に通じる機構を持つ《神威の抹消者 ダロス》を女神とし、世界の革命に乗り出した。
5-077S《神威の抹消者 ダロス》 |
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「来るべき世界で、神は死ぬだろう。いや……彼女がそれを抹消するのだ。」
~理法の元首 ロギナス~
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神を殺すために。
■情け無用の第一界
神殺しは罪であるが、もともと精霊神がいないバストリアでは罪に問われようも無い。
なぜバストリアに精霊神がいないのかといえば、もともとこの場所は罪人たちの流刑地であったためだ。信仰無き場所に神は現れない。
バストリアの地に現れた未来人、ロジカたちは神殺しを宣言すると同時に、神への信仰の根本を揺るがしかねない事実を陽の下に曝した。
精霊神は、元はヒトに過ぎなかったということを。
5-008S《第四界の聖光士 ヴェス》 |
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そして黒き理法の女神は告げた。アトランティカの現在、第四の光の世紀を導いた主神ヴェスすらも、かつてはひとりの英雄に過ぎなかったという事実を。そしてその血を分けた者が、教皇家の祖となったことを……。 |
神々が元はヒトであったのなら、神々はもはや特別な存在ではなくなる。ただ自分たちより少しばかり力があるだけだ。
そしてその力の差は、理力によって補える。
ロジカは、《理力の元首 ロギナス》は、そうして人々の心の隙間に入って行った。
5-012R《罰理の審問者》 |
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悲しいことだが、人は誤るものだ……ヴェスがかつて人であったなら、己も神に資格があるのでは、などと考える。かくのごとき思い上がりは、必ず相応の罰で正さねばならぬ。 |
こうして、《滅魂の災史 ゴズ・オム》の襲来によってひとつに団結したはずのアトランティカの人々は、今度はふたつに分かれることになる。
■龍のかわいい第二界
災害獣《疫魔の獣 イルルガングエ》と《滅魂の災史 ゴズ・オム》の打撃を受け、ロジカの出現地点となったバストリアは、ほぼ完全にロジカの勢力によって掌握された。
だがガイラント、イースラ、そしてゼフィロンの3ヶ国は、これまでにない内乱という形で戦いを巻き起こす。
アトランティカで最も古い歴史を持つガイラントのロジカ勢力は弱い。しかしその中でも、ロジカの力を振るおうとするものはおり、《ロジカニアバーサーカー》や《玉石の理法士 スーズ》はその代表である。
5-038C《ロジカニアバーサーカー》 |
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もちろん、ガイラントのすべてがロジカを憎んだわけではない。神の加護でも、ロジカの理でも、存分に暴れられるものならかまいはしない――そう考える者も、多少は現れた。 |
また、ロジカの源である機械技術に関して、兵棋や《覇力発生装置》を開発するなど、もともとロジカの素質のあったイースラは《海理の闘将 アマツミ》がロジカ勢力として台頭。群諸島を戦乱の嵐に巻き込む。
5-094R《海理の闘将 アマツミ》 |
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さあ、この一戦で時代と世界の流れが変わる……。ロジカの力と革新の波が、古き世界のあらゆる秩序を押し流すのだ。 |
最も内乱が激しいのはゼフィロンである。
ロジカに目覚め、世界を改革へ導こうとする《ロジカの理力剣士》のようなロジカが集結し、戦部隊を結成するも、そうした兵士たちを《目覚めし雷古龍》が一瞬にして壊滅させた。《滅史の災魂 ゴズ・オム》と戦っていた頃よりも激しい戦いぶりである。
5-058R《目覚めし雷古龍》 |
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空を巨大な紫翼が覆ったその日、ロジカの高射部隊が守る砦がひとつ、一瞬にして地図の上から消えた。 |
グランドールは他の4ヶ国とは異なり、ロジカに組する者を一切の慈悲無く断罪。内乱すら起きない弾圧下に置かれ、こちらもある種の恐慌状態となる。
5-019U《理力の抑止》 |
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グランドールにもわずかに現れた新たな理の信奉者たちは、たちまちのうちに厳しい断罪を受けた。 |
そんなロジカとの内乱の最中、クロノグリフが新たな異変を伝える。
ロジカが時間を越えて未来からやってきたように、精霊神たちはロジカに対抗するため、かつての己の姿を過去から現在へ召還したのだった。
■死して咲く花、第三界
山吹色の巨人、《第一界の地魂王 ガイラ》。
精霊王として邪龍を撃退した《第二界の雷皇 シグニィ》。
自らの命を捧げて邪悪な海神を鎮めた《第三回の波濤巫女 エン・ハ》。
そして勇者として《悪意の王》を打ち払った《第四界の聖光士 ヴェス》。
かつてひとりの英雄であった精霊神たちがどのような活躍をしていたかは、それぞれのフレーバーの中で明らかにされており、またそれに付随する情報も書かれている。
たとえばシグニィの場合は、嵐の邪龍と戦い、これに勝利をしている。このとき産まれたのが、つまり《雷帝 バルヌーイ》と《粉砕の風 メルカンデ》である。
また、《第四界の聖光子 ヴェス》のフレーバーでは、彼女には双子の妹がおり、これが教皇家の祖になったことが示されている。つまりそれは《聖女教皇 ファムナス》の家系であり、《予言の姫巫女 イルミナ》に通じる。《第四界の聖光子 ヴェス》が《予言の姫巫女 イルミナ》に似ているというのは、そうした血の縁によるものなのだろう。
神は、やはりヒトなのだ。
では、彼らがどうして精霊神になったのかというと、どうやら世界を平和に導いた結果のようである。
《第三界の波濤巫女 エン・ハ》のフレーバーを見ると、それはわかりやすい。
エン・ハが邪神の怒りを鎮めて死したあとに精霊神となったことや、シグニィやヴェスが同じく邪神に相当する存在と戦っていることから、境界の時代に存在する邪悪な存在を打ち払い、世界を平定することが精霊神になる条件と思われる。
ところで、《第三界の波濤巫女 エン・ハ》のフレーバーでは、「水の世紀」という言葉が出てくる。
「~の世紀」という表現は、ほかに《第四界の聖光士 ヴェス》で「光の世紀」という表現が、《悪意の王》では「闇の世紀」という表現が使われている。
この「~の世紀」という表現は、英雄時代の精霊神の「第X界」という表現と同じものなのだろうか?
答えは否である。
なぜそう断言できるかというと、明らかに《第三界の波濤巫女 エン・ハ》のフレーバーがおかしくなってしまうからである。
《第三界の波濤巫女 エン・ハ》はイースラの精霊神エン・ハの英雄時代の姿なので、「第三界で波濤巫女をやっていたエン・ハさん」ということになる。
彼女はフレーバーで、第三の水の世紀が訪れる前に死亡していることが確定している。つまり、
の構図はありえず、
という順序になっていることは明らかである。ほかの精霊神の時代に関しても、これは同じだろう。
界と世紀が指すものが別であることがわかったところで、具体的にこれらはどういった状態なのだろうか?
《地魂印の絆》のフレーバーを見てみよう。
《地魂印の絆》のフレーバーでは、少なくともガイラが主神であった第一の世紀(=地の世紀?)では、ガイラの力が世界に及び、あらゆる生命を繋いでいたことが述べられている。
つまり、「Xの世紀」というのはその時代の主神Xの力が何らかの状態で世界に及んでいる状態を指すのである。
それらと少し違うのは《悪意の王》でも出てきた「闇の世紀」である。
この場合は、精霊神ではなく《悪意の王》のモロカウを始めとした邪神が力を振るっていた時代と考えられるだろう。
さらに、この時代に生きてきた《第四界の聖光子 ヴェス》が「第四界」なのだから、「第X界」というのは「闇の世紀」(もしくはそれに類する邪神の世紀)の一部であることが推測できる。
つまり、先の時系列に「邪神の世紀」を加えれば、
となっているであろうことが想像できる。
「界」という字は、たとえば「世界」というときのようにある範囲を表すこともあれば、「境界」のように区切りの境目だけを表すこともある。
アトランティカの場合は、まさしく後者の意味だ。英雄が現れ、悪を切り裂くとき、新たな時代が到来する。その直前の切れ目を、人々は界と呼ぶ。
■一年でいちばん暗い第四界5-033S《第一界の地魂王 ガイラ》 |
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その日、理法の者どもは無礼にも、精霊神たちの秘密を白日のもとに晒した。神威を貶められた怒りとともに、ガイラはある物を地上に遣わした……巨人族の英雄王であったかつての己自身を、自らの化身として。 |
■死して咲く花、第三界
山吹色の巨人、《第一界の地魂王 ガイラ》。
精霊王として邪龍を撃退した《第二界の雷皇 シグニィ》。
自らの命を捧げて邪悪な海神を鎮めた《第三回の波濤巫女 エン・ハ》。
そして勇者として《悪意の王》を打ち払った《第四界の聖光士 ヴェス》。
かつてひとりの英雄であった精霊神たちがどのような活躍をしていたかは、それぞれのフレーバーの中で明らかにされており、またそれに付随する情報も書かれている。
5-050S《第二界の雷皇 シグニィ》 |
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「かの精霊王と嵐の邪龍の戦い、昼夜を貫き数日にもおよぶ。やがて邪龍ついに倒れ、尾と首から流れし血より、二匹の小龍生まれる。時下りてひとつをメルカムダ、またひとつをヴァルナーイと呼び習わすなり。」
~嵐の精霊王の伝承~
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たとえばシグニィの場合は、嵐の邪龍と戦い、これに勝利をしている。このとき産まれたのが、つまり《雷帝 バルヌーイ》と《粉砕の風 メルカンデ》である。
また、《第四界の聖光子 ヴェス》のフレーバーでは、彼女には双子の妹がおり、これが教皇家の祖になったことが示されている。つまりそれは《聖女教皇 ファムナス》の家系であり、《予言の姫巫女 イルミナ》に通じる。《第四界の聖光子 ヴェス》が《予言の姫巫女 イルミナ》に似ているというのは、そうした血の縁によるものなのだろう。
神は、やはりヒトなのだ。
では、彼らがどうして精霊神になったのかというと、どうやら世界を平和に導いた結果のようである。
《第三界の波濤巫女 エン・ハ》のフレーバーを見ると、それはわかりやすい。
5-100S《第三界の波濤巫女 エン・ハ》 |
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遥かな昔、邪悪な海神の怒りを鎮めるべく、すべてを捧げて運命の波間に消えた巫女がいた。彼女の意志と魂は、時を経て優しく世界を覆った……水の世紀の訪れとともに。 |
エン・ハが邪神の怒りを鎮めて死したあとに精霊神となったことや、シグニィやヴェスが同じく邪神に相当する存在と戦っていることから、境界の時代に存在する邪悪な存在を打ち払い、世界を平定することが精霊神になる条件と思われる。
ところで、《第三界の波濤巫女 エン・ハ》のフレーバーでは、「水の世紀」という言葉が出てくる。
「~の世紀」という表現は、ほかに《第四界の聖光士 ヴェス》で「光の世紀」という表現が、《悪意の王》では「闇の世紀」という表現が使われている。
この「~の世紀」という表現は、英雄時代の精霊神の「第X界」という表現と同じものなのだろうか?
答えは否である。
5-070U《悪意の王》 |
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「闇の世紀、いくつかの魔の王現れ出て、世に災厄を振りまきたり。中でもひときわ禍々しき者モロカウ、光の勇者たるヴェスとザルガンの地にて対峙す。モロカウとは古き言葉で“世のあらゆる悪しき心”の意にて……」~「亜神の黒歴書 邪世の章」より~ |
なぜそう断言できるかというと、明らかに《第三界の波濤巫女 エン・ハ》のフレーバーがおかしくなってしまうからである。
《第三界の波濤巫女 エン・ハ》はイースラの精霊神エン・ハの英雄時代の姿なので、「第三界で波濤巫女をやっていたエン・ハさん」ということになる。
彼女はフレーバーで、第三の水の世紀が訪れる前に死亡していることが確定している。つまり、
- 第三界=第三の水の世紀
の構図はありえず、
- 第三界→第三の水の世紀
という順序になっていることは明らかである。ほかの精霊神の時代に関しても、これは同じだろう。
界と世紀が指すものが別であることがわかったところで、具体的にこれらはどういった状態なのだろうか?
《地魂印の絆》のフレーバーを見てみよう。
5-041U《地魂印の絆》 |
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ガイラが主神であった第一の世紀では、すべての命は絆によって結ばれ、ひとつであったと伝えられる。 |
《地魂印の絆》のフレーバーでは、少なくともガイラが主神であった第一の世紀(=地の世紀?)では、ガイラの力が世界に及び、あらゆる生命を繋いでいたことが述べられている。
つまり、「Xの世紀」というのはその時代の主神Xの力が何らかの状態で世界に及んでいる状態を指すのである。
それらと少し違うのは《悪意の王》でも出てきた「闇の世紀」である。
この場合は、精霊神ではなく《悪意の王》のモロカウを始めとした邪神が力を振るっていた時代と考えられるだろう。
さらに、この時代に生きてきた《第四界の聖光子 ヴェス》が「第四界」なのだから、「第X界」というのは「闇の世紀」(もしくはそれに類する邪神の世紀)の一部であることが推測できる。
つまり、先の時系列に「邪神の世紀」を加えれば、
- 精霊神の世紀→邪神の世紀→第X界→次の精霊神の世紀
となっているであろうことが想像できる。
「界」という字は、たとえば「世界」というときのようにある範囲を表すこともあれば、「境界」のように区切りの境目だけを表すこともある。
アトランティカの場合は、まさしく後者の意味だ。英雄が現れ、悪を切り裂くとき、新たな時代が到来する。その直前の切れ目を、人々は界と呼ぶ。
話を現在のアトランティカに戻す。
ロジカの長である《理法の元首 ロギナス》は《神威の抹消者 ダロス》をロジカの女神とし、神威と精霊神そのものを消し去ろうとする。
もしそのような事態が訪れれば、アトランティカからは精霊力による加護が失われ、闇の世紀が訪れるであろう。
だがそれは、アトランティカでは毎度のことである。アトランティカは、これまで何度も破壊と再生を繰り返して来たのだ。
アトランティカの記載されている世界は広大なヴァルハラ宇宙の一部だと設定されている。
もともとヴァルハラというのは北欧神話に登場する神、オーディンの館の名称であり、この館では死した英雄たちエインヘルヤルが戦乙女ヴァルキリーによって戦い合わせられることになっている。
彼らが戦っているのは決戦の日、ラグナレクに備えるためである。
北欧神話では、風の冬、剣の冬、狼の冬の三度の冬を越えた先のラグナロクの日に、ムスペルヘイムの炎の巨人たちが攻めて来る。
それまでグレイプニルの戒めに拘束されていた魔狼フェンリルはその楔から解き放たれてオーディンを食い殺し、逆にオーディンの息子であるヴィーダルに踏み殺される。
フェンリルと同様にロキの呪われた子のひとりである大蛇ヨルムンガンドは雷神《トール》と三度目の決戦を行い、相打ちになる。
ロキも神のひとりであるヘイムダルと相打ちになって死亡する。
そしてヴァン神のフレイは火の国の魔人、スルトと相対する。愛する女のためにスルトに対抗するための剣を手放してしまった彼は、鹿の角を持って戦い、奮闘の末に死亡。最後はスルトの手によって、世界中に炎が巻き散らかされる。
これがラグナレクだ。九つあった世界はすべて焼かれ、人間も、神々も、妖精も、小人も、巨人も、太陽も星も死ぬ。
だが、すべてが終わったわけではない。生き延びた者たちは寄り添い合い、新たに文明を立て直す。太陽でさえ、新たな娘を産んで世界を照らす。
北欧神話の世界観では、破壊と再生は隣り合わせの関係なのだ。
5-076C《呪疫運びの群れ》 |
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呪疫による死は、ときとして新たな生の始まりとなる。 |
ヴァルハラという呼称やエインヘルヤルに似た召還英雄という設定があるのであれば、アトランティカもまた破壊と再生の側面を持っているということが想像できるだろう。
空が暗ければ暗いほど、星は明るく輝くように、新たな英雄が闇を払うとき、新たな時代の訪れとともに新たなる神が誕生する。
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