展覧会/『ラストクロニクル』/召喚英雄考察 -第7弾黒青混他
- 目次
- 黒
- 《始皇帝》
- 《バステト》
- 青
- 《ヴァスコ・ダ・ガマ》
- 《ノアの方舟》
- 混
- 《鏡の国のアリス》&《地下の国のアリス》&《不思議の国のアリス》
- 他
- 《楊貴妃》
- 《オランピア》
7-097S《始皇帝》 |
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中国史 (-258 ~ -210)
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現在、スーパーマーケットやデパートなどで、「私が作りました」として大根一本、こんにゃく一個にも記名をする風があり、大いに人気を得ているらしいが、そうすることによって現在の無味乾燥な死刑制度も、人間的な温もりを取りもどし、人気を得ることになるであろう。現在、誰がいつどこで死刑にされたのかすら知らされていないというのは、大いに異常なことである。死刑を、国法に委ねて放置しておくのはよくない。それこそ、正しくないことである。国法などというものは、どこにもないのであるから……。
別役 実 (著), 『日々の暮し方 (白水Uブックス)』, 白水社, 1994.「正しい死刑の仕方」p122より
古代中国、秦の皇帝。
中国を初めて統一した独裁君主として知られる一方、《万里の長城》の建設や焚書坑儒(書を燃やし、儒教者を生き埋めにする行為)などでも有名。
本名、政。13歳にして玉座に着いたのちに法律を強化して富国強兵を勧め、周辺六国を吸収し、紀元前221年に中国統一という偉業を成し遂げ、《始皇帝》を名乗る。
[T]このユニットが戦場に配置されたとき、あなたの戦場に勢力黒、レベルⅠ、パワー2000、ATK2、【奴隷】のトークンユニットを3体配置する。 |
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《始皇帝》は人の才覚や功績を重視して国を作り上げた。 彼は国政を人任せにはせず、中央集権国家を作り上げ、法律、貨幣、文字、車両の幅などを統一したうえで各地に道路網を伸ばし、陸路交通の活発化を推し進めた。 また製造品にすべて製造者の銘を記させるなど、物流のみならず製品にも拘ったという。 《始皇帝》の富国政策は内政のみならず、軍事にも改革が行われた。 全国の農民に対して徴兵制を行い、武勲に対して褒章を取らせた。秦の兵士は重い鎧を身に付けずに突撃するため、非常に俊敏であり残虐だったといわれる。 |
[T]このユニットが戦場から離れたとき、あなたの【奴隷】のすべてのトークンユニットを破壊する。あなたにそれらのATKの合計値に等しい数のダメージを与える。 |
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統一を果たした《始皇帝》は己の名を後世に残すために尽力した。 各地に石碑を立てて銘を刻ませ、全国の富豪の家を都に移させた。墳墓には最大規模の等身大の兵馬俑(副葬品として使われた兵士を模した人形。あるいはそれを収める施設)を製造し、副葬させた。 兵馬俑が収められた4つの地下壕には発見されているだけでも1087体の兵馬俑、戦車は20台確認されているが、面積から推定される数は約6000である。 《始皇帝》の兵馬俑の人形の顔は一体一体異なり、多民族軍隊であった秦帝国を象徴しているとされている。 労役に駆り出された数は当時の人口2000万人に対し300万人と15%にのぼる。 このため農業生産が急激に低下し、《始皇帝》の死後にその不満が爆発、中国最初の農民蜂起が始まり、秦は滅亡。 のちに《始皇帝》の後継は《項羽》によって殺害され、《始皇帝》の血は絶えた。 |
7-102S《バステト》 |
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エジプト神話
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猫が居眠りするということを、つい近ごろ発見した。
その様子が人間の居眠りのさまに実によく似ている。
人間はいくら年を取っても、やはり時々は何かしら発見をする機会はあるものと見える。
これだけは心強いことである。
寺田 寅彦 (著), 『柿の種 (岩波文庫)』, 岩波書店, 1996. p38より
エジプト神話の猫頭の女神。手に楽器シストラムを持つ像が残されている。
恐怖の神であったが、のちに愛の神になる。
ギリシャ神話の《アルテミス》と同一視される。
[A]SSを1個犠牲にする:ターンの終わりまでこのユニットは防御されない。 |
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《バステト》は猫頭の女神である。 猫は他の地域では鼠などの獣害対策に飼われていたが、エジプトでは犬のように狩りにも使われており、エジプトの墳墓にはその狩り姿が壁画として残されており、その軽やかな動きで水鳥や蛇を狩る様子が描かれている。 |
[A]ユニットを1体犠牲にする:ターンの終わりまでこのユニットのパワーを+1000する。 [A]CAヤードにあるカードを1枚犠牲にする:すべてのプレイヤーに1ダメージを与える。 |
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《バステト》は雌ライオンの頭を持つ女神、セクメトとしばしば混同される。 セクメトは「セクメトのように荒々しく」という表現が用いられるほど力強い神であり、そもそもその名が「強力者」を表す。 セクメトの武器は矢と炎である。その矢は心臓を狙い違わず突き刺すものであり、身体からは灼熱の炎を発する。 |
7-122R《ヴァスコ・ダ・ガマ》 |
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ポルトガル史/大航海時代 (1469もしくは1470 ~ 1524)
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15世紀の間にポルトガル人が成しとげた発見がどれほどのものだったのかは、その影響があまりにも広範囲に及んでいるため、かえって一般には評価されていない。しかし、現在われわれが知っている世界は、その善し悪しはともかく、ポルトガル人のおかげで誕生したのである。
ロビン・ハンベリ=テニソン編著 (著), 植松靖夫 (翻訳), 『世界探検家列伝―海・河川・砂漠・極地、そして宇宙へ―』, 悠書館, 2011. p28より
大航海時代の魁は常にポルトガル人であった。
《コロンブス》が西に新たな大陸を見つけ、マゼランが世界一周を成し遂げた。スペインでもフランスでもなく、ポルトガル人こそが海の覇者であった。
同様に、インドへ海路で初めて到達した男も、ポルトガル王家に仕える騎士の出であった。
[F]このユニットのパワーをあなたの戦場にあるストラクチャ1個につき+500する。 |
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《ヴァスコ・ダ・ガマ》はのちにインド総督となる探検家である。 航海術の達人であり、カスティーリャとの戦争ではめざましい活躍をみせた。 その巧みな腕を見込まれた《ヴァスコ・ダ・ガマ》は国王の命を受け、1496年7月、175名の乗組員を載せた4隻の船で歓待を組み、インドを目指して出発。 陸路が見えぬままにアフリカ南海を渡り、喜望峰の南を渡り、インドへ到達。その後やはり海路で帰還し、2年間4万2600キロメートルの航海でポルトガルとインドの航海路を拓いた。 |
[T]このユニットが対戦相手にダメージを与えたとき、あなたの戦場にストラクチャがあるならば、カードを1枚引く。 |
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《ヴァスコ・ダ・ガマ》の命懸けの航海の結果として、ポルトガルはそれまで陸路によってしか行えなかった東方との貿易を、海路で、しかも定期的に行うことができるようになった。 その結果として、特に香辛料を中心とした貴重品の貿易に関して、ポルトガルは他国より先んじることができるようになった。 ちなみに乗組員の3/4が命を落とすような航海だったにも関わらず、《ヴァスコ・ダ・ガマ》はその後も2度インドへ航海している。 3度目の航海の直後に病に倒れ、数か月後に死亡。探検家らしからぬ、しかし「すべての任務に成功し、生前に名声と名誉と莫大な富を手に入れた」と称された探検家らしい死にざまであった。 |
7-149R《ノアの方舟》 |
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旧約聖書
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《ノアの方舟》は旧約聖書に登場する、大洪水から生き延びるための避難船である。
『 動力(2) 』 [A](1):あなたのユニットを1体選ぶ。ターンの終わりまでそれが戦場から捨て札置き場に置かれるならば、代わりにそれをゲームから除外する。 |
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かつて地上に悪が蔓延っていた際、神は信頼できる人間であるノアに、ある計画を伝えた。 それは神が大洪水によって悪を滅ぼしている間、それ以外の生物を方舟に載せて生き延びさせるという計画であった。 ノアは神の言葉に従い、方舟を作った。 その《ノアの方舟》にはノアとその家族のほか、1種類の動物につき1つがい、つまり2匹が載せられ、神の大洪水のときを待った。 |
[A]このストラクチャを犠牲にする:このストラクチャによって除外されたすべてのユニットカードを手札に戻す。 |
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大洪水後、ノアは水で覆われた世界の中で、《ノアの方舟》から鳩を放った。 ある時、放たれてはただ戻ってくるだけだった鳩が、ついにオリーブの枝を加えて戻ってきた。水が引いた地域が現れた証左である。 こうしてノアとその家族、および《ノアの方舟》に載せられていたつがいの動物たちは地上に戻り、繁栄したのだという。 ちなみに国連の紋章にオリーブが使われているのは、この《ノアの方舟》の伝説に由来する。 |
7-003R《鏡の国のアリス》&7-100R《地下の国のアリス》&7-0132S《不思議の国のアリス》 |
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小説
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昨日広場で、小さい女の子が行ったり来たり走りまわっているのに会いました。その子は、ちょうどわたしのところまで走ってきては、ちょっと顔だけ見て走り去って行くのです。六回目ぐらいのときに笑いかけてみると、その子もにっこりしてまた走って行きました。その次のとき手を出すと、すぐに握手をしたので、「その海草をくれない?」と言ってみたら「だめ!」と言ってまた行ってしまいました。
その次のときに「海草のはじをちょっと切ってくれない?」と言うと「だってはさみを持ってないもの」と言いました。そこで折りたたみのはさみを貸してあげると、よく注意しながらちょっぴり切りとってわたしにくれて、それからまた走って行きました。でもすぐもどって来てこう言いました。「わたしね、びっくりしちゃったの。お母さまがこわい顔して、おじさんにあげちゃいけませんって言うの」。
ルイス キャロル (著), Lewis Carroll (原著), 高橋 康也 (翻訳), 高橋 迪 (翻訳), 『少女への手紙 (平凡社ライブラリー)』, 平凡社, 2014. p133-134「メネラ・ウィルコックスへ」より
チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンはオックスフォード大学の数学教師である。
数学を教える傍ら、彼は雑誌に詩などの投稿を行っていた。
1856年、ユーモア雑誌『トレイン』3月号に詩『孤独』が掲載されたことで、彼は作家デビューを果たす。
数学の研究と文学の執筆を続ける日々の中、ドジソンはとある人物と交友を持つようになる。オックスフォード大学の若き学長、ヘンリー・ジョージ・リデルである。
リデルにはハリーという息子と、ロリーナ、アリス、イーディスという娘がいた。
ドジソンは3姉妹とすぐに仲良くなり、ときに未出版の物語を語ったりもした。その中にその物語はあった。
そう、それは小さな少女、アリス・リデルが不思議な世界へと飛び込んでいく物語――のちに『不思議の国のアリス』というタイトルで発行されることになる、ドジソンことペンネーム、ルイス・キャロルの最も有名な物語。
[A][1]、このユニットを犠牲にする:あなたの手札から【アリス】のユニットカードを1枚戦場に配置してもよい。 |
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写真を趣味としていたドジソンは特に子どもを撮影することを好んだ。 そして彼は少女の写真を撮る中で、ポーズや背景だけではなく、少女の恰好にも拘った。 ドジソンが撮影した少女の写真の中には、乞食の恰好や童話『赤ずきん』のフードを纏った姿、あるいは全裸でのものなど、様々な姿に変身した少女たちの姿が記録されている。 なお、ディズニー映画などで知られるアリスは金髪で青いドレスを着た少女であることが多いが、実際のアリス・リデルは黒髪の少女である。 また《アリス症候群》(Alice in Wonderland syndrome; AIWS)はアリスが劇中でキノコなどを食べることで身体が大きくなったり縮んだりしたことから転じた医学用語である。 |
PR-054《楊貴妃》 |
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中国史(719-756)
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玄宗は紀元8世紀頃の中国、唐の第六代皇帝である。
クーデターによって皇帝の座に着いたのちには様々な改革を行い、富国強兵と人材登用に努めた。性格は傲慢であったといわれるが、多才な人物であり、唐の絶頂期を作った。年中行事を盛んに行い、全盛期には都長安が大衆で賑わったと伝えられる。
玄宗55歳。唐の絶頂期に後宮三千といわれる彼のハーレムに新たにやって来た女がいた。
傾城カウンターが置かれているユニットは可能ならば攻撃しなければならない。 このユニットが戦場に配置されたとき、ユニットを1体選ぶ。それの上に傾城カウンターを1個置く。 |
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《楊貴妃》は唐六代目皇帝、玄宗と恋愛をし、その美貌で国を傾けた美女である。 《クレオパトラ》、《小野小町》とともに(日本の)世界三大美女に数えられる。 蜀州の役人の家に産まれるが、《楊貴妃》が成人する前に死亡したため、叔父の家に引き取られる。 その後、はじめ玄宗の皇太子の妃になるが、すぐに玄宗付きの女官という形で取り上げられる。これは実質的に王妃扱いであった。 当時17歳。一地方役人の娘であった彼女がこのような玉の輿の座に着いた理由は、その美しさ以上には伝えられていない。 |
あなたの時代が発展したとき、ユニットを1体選ぶ。それの上に傾城カウンターを1個置く。 |
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《楊貴妃》のその美しさゆえ、玄宗は色事に溺れるようになり、政治は停滞衰弱する。 その間に起きた権力争いと安史の乱により、唐の国は衰退の一路を辿ることになる。 傾国の原因となった《楊貴妃》は自殺を乞い、宦官の手によって扼殺された。 なお、楊貴妃の墳墓からは遺体がついぞ見つからなかったことから、殺害されたのは替え玉だという説や、殺されたものの蘇生した節などがまことしやかに囁かれている。 さらに何を間違ったのか、日本の使節団の帰国船に乗り込んだという伝説まであり、山口県油谷町の二尊院には楊貴妃の墓とされるものが現存している。 |
PR-058《オランピア》 |
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オペラ
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『ホフマン物語』(Les Contes d'Hoffmann)はオッフェンバック唯一のオペラといわれる恋愛物語である。
劇中では詩人ホフマンの過去の恋愛話と、現在進行形の(ホフマン自身は意識しない)恋愛話を詩と音楽の女神ミューズを通して語られる。
劇場の女優ステッラは詩人ホフマンに恋をしていた。
彼女は愛を告白しようとホフマン宛てに手紙を綴るも、彼女に横恋慕をしていた顧問官リンドルフによって知らぬうちに手紙を横取りされてしまう。
ホフマンとステッラの仲を裂こうとするリンドルフは、言葉巧みにホフマンをステッラの劇場へ呼び出し、彼の恋話を語らせる。
酒で淀んだ頭のままで、ホフマンは過去の3人の恋人たちの話をする。
歌うことを禁じられた歌姫アントニア。
欲望のままに動く高級娼婦のジュリエッタ。
そして機械人形《オランピア》との小さな恋の物語を。
『 覚醒(このユニットと小隊を組んでいるユニット) 』 |
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《オランピア》は『ホフマン物語』に登場する自動人形である。ハープを奏で、唄い、ワルツを踊る機能がある。 物理学者スパランツァーニによって作り出されたこの自動人形は、スパランツァーニのライバルである技術者コッペリウスの作り出した幻想の眼鏡を通すと生きているように美しく見える。 《オランピア》のお披露目会で幻想の眼鏡をかけて《オランピア》を見たホフマンは、ひと目で恋に落ち、彼女をダンスに誘う。ワルツを踊る間、ホフマンにとって《オランピア》は確かな美女であった。 だがワルツのテンポが早くなるにつれて、その歯車がついていけなくなった《オランピア》は故障し、最後は破壊されてしまう。 ホフマンはようやく《オランピア》が機械人形であったことを知り、失恋をするとともに、パーティーに来ていた人々から失笑を買う。 |
[T]このユニットが戦場から捨て札置き場に置かれたとき、カードを1枚引く。 |
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さらに歌姫アントニア、高級娼婦ジュリエッタ、そして舞台を過去から現在へと戻し女優ステッラとの恋愛は破綻し、ホフマンはステッラとリンドルフとの三角関係さえ知らぬまま、『ホフマン物語』はその幕を閉じる。 最後にこのような言葉で締めくくられながら。 「On est grand par l'amour et plus grand par les pleurs(人は愛によって大きくなり、涙によっていっそう成長する)」 |
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引用・参考文献
- アーサー コットレル (著), Arthur Cotterell (原著), 日比野 丈夫 (翻訳), 『秦始皇帝』, 河出書房新社; 新装版, 1998.
- アッティラ チャンパイ (編集), ディートマル ホラント (編集), 酒巻 和子 (翻訳), 『オッフェンバック ホフマン物語 (名作オペラブックス)』, 音楽之友社, 1988.
- 鶴間 和幸 (著), 『始皇帝の地下帝国』, 講談社, 2001.
- ロビン・ハンベリ=テニソン編著 (著), 植松靖夫 (翻訳), 『世界探検家列伝―海・河川・砂漠・極地、そして宇宙へ―』, 悠書館, 2011.
- 寺田 寅彦 (著), 『柿の種 (岩波文庫)』, 岩波書店, 1996.
- 別役 実 (著), 『日々の暮し方 (白水Uブックス)』, 白水社, 1994.
- 三笠宮 崇仁 (著), 『古代エジプトの神々―その誕生と発展』, 日本放送出版協会, 1988.
- 村山 吉広 (著) 『楊貴妃―大唐帝国の栄華と暗転 (中公新書)』, 中央公論社, 1997.
- ウィリアム ライアン (著), ウォルター ピットマン (著), 川上 紳一 (監修), William B.F. Ryan (原著), Walter C. Pitman (原著), 戸田 裕之 (翻訳), 『ノアの洪水』, 集英社, 2003.
- ステファニー・ラヴェット ストッフル (著), 笠井 勝子 (監修, 監修), 高橋 宏 (翻訳), 『「不思議の国のアリス」の誕生―ルイス・キャロルとその生涯』, 創元社, 1998.
- ルイス キャロル (著), Lewis Carroll (原著), 高橋 康也 (翻訳), 高橋 迪 (翻訳), 『少女への手紙 (平凡社ライブラリー)』, 平凡社, 2014.
2 件のコメント:
今回もおもしろかったです!
コメントありがとうございます。
今回わりと有名どころが揃っているわりに、能力はさほど直観的ではないのでやや苦労しました&こじつけ多めです。
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