展覧会/『War of Brains』/Season Blast フレーバー&ストーリー考察(前編)

2月 20, 2018




6人の乙女の物語が始まる


 本ページでは3回に分けてWar of Brains(ウォーブレ)のSeason Blastのストーリーラインおよびフレーバーから、その世界観を考察する。

 前3弾のSeason Ammunitionに関しては、上の目次のリンクからご覧いただきたい。


奪われし宝を取り戻すために闘いし乙女


超国家「パルプティコン」
栄華を極めたその国は、いま、危機に瀕している。
浪費の末に資源が枯渇し、有害指定物が国民に害を与え、頽廃から終焉までが透けて見える。
1千万以上もの国民を抱え、女性大統領・ミアは苦悩していた。
無害かつ無限のエネルギーが欲しい。この国家を救うために。
古の頃、戦いを繰り広げた『人間』と『獣人』。
敗北の末に地の果てへと撤退した『獣人』との融和を掲げた『風の民』は、次第に『獣人』と交わり、多くの混血種『メタモール』と共に暮らしていた。
彼らメタモールが『獣人の王』から受け継いだもの。
それこそが、無限の超自然エネルギーを生み出す『風の石』である。
この石をめぐり、風の村の住民であるナミの物語がいま始まる。

 Aシーズンとは異なり、Bシーズンではストーリーラインがある程度明確になっており、ラピス世界では超国家パルプティコンという国を中心とした世界観であることが名言されている。

 ラピス世界の主人公となる乙女、《風の村のナミ》はその二つ名通り、風の村という場所の出身のメタモールの少女である。


B1-生物学-L《風の村のナミ》
村のみんなはボクが守る! そして、風の石・ミストラルストーンを必ず取り戻すよ!
〜ナミ〜

 メタモールというのは人間と獣人の混血種であるという。《ナミ》に限らず、メタモールたちは生物学に属し、《女傑総裁 ミア・ハリスン》ら工学のパルプティコン政府らと対立している。《ナミ》のフレーバーを見る限り、すでに風の石はパルプティコンに奪われてしまっているらしい。今後は《ナミ》らメタモールとパルプティコン政府の戦いが描かれるのだろうか。


B1-工学-L《女傑総裁 ミア・ハリスン》
宣言しよう! 諦めなければ、再びパルプティコンは栄華を極めると!
〜ミア・ハリスン〜

 ところでラピスといえば、Aシーズンでは生物学世界では《覇王 白獅子》らが棲む獣たちの世界であった。彼らは【獣】というカテゴリを有してはいたが、どちらかといえば獣人と呼ぶべき姿形をしていた。
 《風村の野狐姫 ユウナギ》のフレーバーを見ると「獅子王」に言及していることから、今回のラピス世界は、Aシーズンのラピス生物学世界の未来世界である可能性が高いように見える。


B1-生物学-L《風村の野狐姫 ユウナギ》
風の声に耳をすませし時、獅子王の記憶が蘇るでしょう。
〜ユウナギ〜

 しかしながら、そうするとひとつの疑問が生じる。ストーリーラインでは風の石について、

彼らメタモールが『獣人の王』から受け継いだもの。

と書かれていた。しかしながら、Aシーズンの生物学世界では、そのような石について言及されることはなかった。カードイラストを見ていっても、そのような石が描かれているのは見つけられない。

 だがそれはどこかに確かにあったのでは——あるいは彼ら自身さえ気づかないまま。そう思わせるのは、《屍刀 クロホムラ》らの襲撃があったからだ。山を襲った《屍刀 クロホムラ》らの襲撃を退けるため、《覇王 白獅子》は《邪念を纏う剛虎》と融合し、《覇獣 獅子王》となった。

《屍刀 クロホムラ》はけして自然災害のように突発的に生じた怪異ではなく、何かしらの目的を持って獣たちを襲撃した。それがわかるのは、同行者が何かを探していたことが言及されているからだ。


A2-生物学-L《輪廻の暴僧 ユウゼン》
黒般若さんはどこへ行ったんでしょう… まぁ、ゆっくり探しましょうか…
〜輪廻の暴僧 ユウゼン〜

 《黒般若》——すなわち《屍刀 クロホムラ》と同行していた男の名は《輪廻の暴僧 ユウゼン》。獅子王に言及している《風村の野狐姫 ユウナギ》に似た名前を持つ彼は、黒般若と行動を共にしながら、「何か」を探していた。それが風の石であり、それは獣たちが知らず識らずのうちに持っていたのではなかろうか?

 知らないうちにそんなものすごいものを持っているだなんてことはありえるのか?
 ありえるのである。なぜならば彼らは元を辿れば作られた生命だからだ。


A3-生物学-L《覇獣 獅子王》
融合を提案したのは豪虎じゃよ。その奇跡がクロホムラの侵攻を退けたんじゃ。
~パシルの老婆~

 Aシーズンの考察で「ラピス生物学世界はユニオン生物学世界の未来ではないか?」という考察を行なった。獣たちの融合、あるいは『ブースト』と呼ばれる力は、かつて彼ら獣たちがキメラと呼ばれる人工的に遺伝子を組み合わせられた生物だから使える力なのではないか、と。

 そもそもメターモルという種族名自体、言葉の元としてはmetamorphosis(変態)であろう。変態の代表例としては芋虫から蛹、蛹から成虫になる蝶で、いかにも生物学的な単語であるが、(おそらく)ほぼ人間に近い形態を保ち続けるメタモールたちに相応しい名称であるとは思えないし、ラピス生物学世界の獣たちにも適当であるとはいえない。

 であれば彼らのその種族名は、獣世界より以前の——醜悪なキメラだった頃の名残なのではないだろうか。
 そしてその時代、キメラたちは単なる実験というわけではなく、何らかの目的があって作り出されていたということになる。


A2-生物学-U《エージェント ヴァネッサ》
エージェント達はキメラの死骸から遺伝子を採集していた。全ては組織のある目的の為。

 A2時点では不明だった《エージェント ヴァネッサ》のフレーバーで語られている「目的」。それこそが風の石の生成だったのではないだろうか。キメラの体内でのみ作り出すことが可能な、無限のエネルギーを秘めた石。それこそが風の石なのではないだろうか。

 だが果たしてそれを計画した者は、誰だったのか。



愛する人のため全てを捨て闘いし乙女


超軍事帝国「ウラシオン」
海軍飛行艇団部隊と陸上暗黒騎士部隊を有し、世界を席巻している超国家である。
世界の守護者を自負し、「人民を襲う獣や魔物を討伐するため」と称し、さらなる軍編を拡張しつつある。
群を統括するのは皇帝・ビッグブラザー。
彼はその指揮力をもってして人民の尊敬を集めていた。
だが、国外においては「ウラシオン」は侵略国でしかない。
その傍若無人ぶりは、各国からの避難を買い、国際的孤立を招いている。
第一暗黒騎士部隊隊長・シンは自国の振る舞いに後ろめたさを覚えつつ、人民のために職務をまっとうしていた。
しかし、彼に下された新たな命令は、かつてなく残虐非道なものであった。
龍人族の村・村民を掃討せよ。
なぜ?
その疑問すら拭いきれぬまま、進軍するのであった。
シンの婚約者エリカの物語がいま始まる。


 ウラシオンというのはうらまりおの仲間だろうか。
 ウラシオンも「超国家」であると書かれているが、おそらくはラピス世界とは基本的にまったく異なる世界線であろう。いずれそれが繋がる可能性はないでもないが、ひとまず別物であると考えておく。

 さて、タオシン世界の物語はウラシオンの第一暗黒騎士部隊に龍人族の村の掃討作戦が下されることから始まる。


B1-文化学-T《帝国火力部隊の罠》
やだやだ! こないでっ〜!!
〜ヒヨ〜

 B1にしてそれらは既に実行されてしまっている。実行したのは果たして命令を受けた《闇黒大剣 シン》自身か、あるいは彼の婚約者であり、タオシン世界の主人公である乙女、《亡郷の白魔剣 エリカ》か。


B1-文化学-T《亡郷の白魔剣 エリカ》
大切なものを守るためなら、この命、惜しくないわ。
〜エリカ〜

 既に事は進んでいるわけだが、しかしながらそれを行わせた《裁卿皇帝 ビッグブラザー》その目的については明らかにされていない。

 タオシンは文化学と機械工学の国で、龍人たちは文化学、ビッグブラザーらウラシオンの幹部や【ナイツ】らは機械工学となっている。ただし、なぜか《亡郷の白魔剣 エリカ》やエリカの外出中に寝取られていそうな顔の《闇黒大剣 シン》の学問は文化学である。


B1-文化学-T《闇黒大剣 シン》
エリカ、すまない…
〜シン〜

 これが果たして何を意味するのか。《エリカ》や《シン》の中に此度の討伐の迷いがある以上、いつか《裁卿皇帝 ビッグブラザー》と対立することの伏線なのかもしれない。


B1-機械工学-T《裁卿皇帝 ビッグブラザー》
軍を震わせる指導者の御声は民の希望となりえるか…
〜ビッグブラザー〜

 ビッグブラザーとはジョージ・オーウェルの近未来SF小説に出てくる監視社会の頭であり、独裁者である。
 ということは《裁卿皇帝 ビッグブラザー》の龍人殺しの目的には、監視——あるいは監視を手段とした独裁があるのだろうか。

 ところで話は変わるが、英国の哲学者ジェレミー・ベンサムが考案したものに、円形の監獄がある。中央に監視塔、その周りに独房が設置され、効率良く監視できる、のちに監視社会の象徴として見なされる独房はPanopticonパノプティコンと名付けられた。

 ここでラピス世界に戻ってみよう。

超国家「パルプティコン」
栄華を極めたその国は、いま、危機に瀕している。

 はじめに「おそらくはラピス世界とは基本的にまったく異なる世界線であろう」と書いた。これは「そうそう超国家がふたつも三つも存在してたまるか」という考え方からだった。
 だがタオシンの「ビッグブラザー」に対し、「パルプティコン」とパノプティコンに近い名の単語がラピスからも出てきたのは見逃せない。単純に同じ独裁監視社会の同一国家が別の名を使っているとは見なせないにしろ、時間軸あるいは空間軸を同一とする存在なのであろうという推測ができる。

 そしてもうひとつ。


B1-機械工学-T《フェイロン計画》
この計画がなされるとき、もたらされる災厄とは…
〜ウラシオン某研究者〜

 フェイロン計画——漢字に直せば飛龍計画だろうか。イラストや効果から想像すると、計画の目的は龍を作り出すことだろう。《ビッグブラザー》の龍人族討伐は、このフェイロン計画が関わっていた可能性が高い。なぜならば、このタオシン世界にはドラゴンがいないからだ。龍人たちは【ドラゴン】ではない。

 Aシーズンのフレーバー考察は「国ごとではなく、学問ごとで世界が共通なのではないか?」という考察だったが、そのスタートとなったのは《竜騎士 ヴァイパー》だった。
 ヴァイパーは【ドラゴン】殺しの能力を持つが、Aシェド世界には【ドラゴン】のユニットは存在しない。そこからAタオシン文化学世界との繋がりを連想したわけである。

 Aシェド文化学世界に【ドラゴン】がいないのは、ヴァイパーらが龍を殺したためであろう。では、Bタオシン世界に龍人がいても【ドラゴン】がいないのはなぜか? 

 ——《ヴァイパー》らが殺したためか?
 そんなふうに考え始めると、Bタオシン世界はBラピス世界のみならずAシェド文化学世界との繋がりを感じずにはいられなくなる。

 実際のところ、Bシーズンの世界には明らかにAシーズンの世界と対応しているらしい者たちが存在しているのだ。


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