展覧会/『War of Brains』/Season Blast フレーバー&ストーリー考察(中編)

3月 13, 2018



国の危機を救うために闘いし乙女


楽園と謳われる空中都市「イデア」
4つの国「カイド」「ホンシュ」「クシ」「キシュ」で構成される、連合国家である。
イデア君主として代々クルード家の一族が統べ、国々の均衡は保たれている。
この均衡は、二度に渡る大戦の末にもたらされている。
しかし、イデア連合王国にはかつて5つ目の国「キュリ」も名を連ねていた。
二度に渡る大戦の結果、その5つ目の国は激戦地となり地上に堕ち、亡国と化したのであった。
いまでは各国の人々が平和な日々を送り、象徴君主である国王サン・クルードにも親愛の情が寄せられていた。
だが、その平和が脆く崩れる。
古の巨人ソドムが、イデアでの殺戮を始めたのだ。
追放された亡国の姫・ベラに従えられて……。
国王サンの娘レヴィの物語がいま始まる。


 SHEDO世界の4つの国、「カイド」「ホンシュ」「クシ」「キシュ」がそれぞれ北海道・本州・四国・九州に対応するのは間違いないだろう。であれば5つ目の国「キュリ」は琉球(沖縄)で、二度に渡る大戦は第一次・二次世界大戦となる。
 であればイデアのモデルは日本であり、《イデア象徴 サン》が国王ではなく象徴なのも道理である(ストーリーラインでは国王と書いているが)。

B1-文化学-S《イデア象徴 サン》
ギルガメッシュ? わ、わしゃ何も知らんぞ…
〜サン〜

 とはいえギルガメッシュ(メソポタミアの半神半人——正確には2/3が神、1/3が人間——の英雄。シュメールでは「ビルガメシュ」の発音が近い)という単語が出てくるのであればそのまま日本の歴史に沿うわけにはいくまい。

 さて、SHEDO世界のストーリーラインを読んでみると、大雑把なストーリーはわかるのだが、いくつか疑問が出てくる。
 たとえば、舞台となるイデア連合王国は(一般的な意味ではなく読んで字のごとくの)空中都市だがなぜ浮いているのかということ、戦争をしている(していた)が、その相手国は同様に浮いているのかということ、などなど。

 だが最大の謎は、《報復の堕天妃 ベラ》の存在だ。

B1-医学-S《報復の堕天妃 ベラ》
ギルガメッシュ…失われしキュリの国を私たちの手によって復活させましょう…
〜ベラ〜

*) 余談だが、War of Brains Nowだと「失われしキシュ」という誤字がある。

 整理すると、《ベラ》はかつてイデア連合王国に属していたキュリの(当時の)姫である。ストーリーラインを見ると、「追放された亡国の姫」と書かれているので、キュリが地上に落ちた際に一緒に落ちたということではなく、キュリが落ちたあとに何らかの理由で追放されたと見るべきだろう。しかも追放先は地上どころではなく、異次元である。

A3-文化学-S《時空の流刑者 ベラ》
追放されたベラは、もとの世界を求め時空を彷徨う。

《堕天妃の急襲》の効果と《時空の流刑者 ベラ》の効果を対比させてみれば、《堕天妃の急襲》の効果は自由を奪われ流刑者とされた腹いせの反映ということでわかりやすい。

 彼女がどのようにして自由を奪われ、別次元へと追放されたのか。それを推測することは難しい。
 しかし「なぜ」そうなったのかはある程度推測ができるのではないかと思う。

 理由のひとつとして考えられるのは、彼女の能力である。

B1-医学-S《リバーサル・ウェーブ》
さあ、傀儡の戦士たちよ! 私の復讐のため、もっともっと暴れなさい!
〜ベラ〜

 彼女は《終末の巨人 ソドム》とともにイデア連合王国に攻め込んでいるが、これを動かす力を持っていたがために追放されたのではないだろうか。そんな推測を補強するのが《リバーサル・ウェーブ》のフレーバーで、ここでは彼女の軍の兵が「傀儡の戦士」であるということが語られている。

B1-医学-S《終末の巨人 ソドム》
ソドム。それは終焉の災厄。その陰には幾千の死が横たわる。
〜カマイタチ〜

《ソドム》自体が具体的にどのような存在なのか現在の時点では「天空神に恐れられるほどの存在である」程度のこと以上にはわからないが、終焉の災厄を動かしうる力を恐れたイデア連合王国によって追放されたというのは十分ありうることだろう。

 もうひとつの原因として考えられるのは「ギルガメッシュ」なる人物の関連である。

B1-文化学-S《鉄魂のピーナッツバター》
ベラお姉さま…ギルガメッシュの事はもうあきらめて!!
〜ピーナッツバター〜

《鉄塊のピーナッツバター》のフレーバーにはふたつの情報が詰まっている。
 一つ目は、《ベラ》のイデア連合王国への復讐にはギルガメッシュが関わっているということ。
 二つ目は、【天空神】である《ピーナッツバター》が《ベラ》を「お姉さま」と呼ぶということ。

B1-文化学-S《おてんば王妃 レヴィ》
ピーナッツバター、一緒にこの難局を切り抜けるよ!!
〜レヴィ〜

 そもそも【天空神】自体なんなのかが不明なのだが、素直に考えれば天空都市イデアを守る守護精霊のような存在であろう。6人の乙女のうちのひとりである《おてんば王妃 レヴィ》など《ピーナッツバター》を呼び捨てにしたりもしているが、彼女は(二つ名だと王妃だが)姫で、しかもおてんばなのだからそれくらい呼び捨てにするだろう。
 だが《ピーナッツバター》のほうから《ベラ》を「お姉さま」などと呼んでいるのは少々気にかかる。

 この二つの情報から妄想を膨らませてみた結果として考えられるのが、「《ベラ》は天空神の一角であるギルガメシュと結婚しようとして堕天することになったのではないか」ということである。

 まず天空神であるが、この元ネタはおそらく木火土金水の五行思想であろう。

  • 木→《烈風のカマイタチ》
  • 火→ ?
  • 土→《土轟のガーデン》
  • 金→《鉄塊のピーナッツバター》
  • 水→《氷結のウェディングブレード》

 木が風の《カマイタチ》なのはいささか不自然にも見えるが、五行思想では木は陰陽のうちの陽気が風に吹かれて発生したことになっているため、風は木の領域となる。

 さて、このように当てはめていくと、火を司る天空神が余っていることになるのだが、ここにアゴウギルガメシュが入るのではないかと想像される。
 守護精霊のような存在であるギルガメシュと、おそらくは特殊な能力はあるもののただの人間にしか過ぎない《ベラ》。ふたりの婚姻が成立するとは思えない。《ベラ》が追放される理由としては十分であろう。

 この説を補強するのが「報復の堕天妃」という《ベラ》の二つ名である。ストーリーラインでは「亡国の追放された姫」(つまりキュリ王の娘)と書かれていたはずの《ベラ》だが、戻ってきたときには「妃」(つまり王族の妻)ということになっている。結婚相手は? ギルガメシュしかいない。
 この考え方は、そもそも「姫」と書かれている《レヴィ》が「おてんば王妃」な時点で破綻しているような気がしないでもないのだが、しかしギルガメシュが《ベラ》の追放理由に関連した重要人物であることには変わりない。

 では当のギルガメシュはどこへ消えたのか?
 その行方は《イデア象徴 サン》が知っているのは、彼のフレーバーを見るに間違いない。が、少なくともB1の段階ではこれ以上推測することは難しいだろう。



自らの出自と葛藤し社会と闘いし乙女


 近未来の大都市「メガロポリス」
 そこでは、人類と、人工的に生まれた人造人間「セカンドヒューマン」の間で問題が起こっていた。
 数十年前、人工減少が大問題であった頃、研究者・テンマ博士が行なった遺伝子操作により、単為生殖できる「セカンドヒューマン」が造られ、人口は回復、経済活動も維持されたが、次第に…
 セカンドヒューマンは少数ながらも、その優秀さで人類の仕事を凌駕し始める。
 危機感を持った人類たちは、セカンドヒューマンは我々を支配するつもりだ! あらぬ優越感を抱き、創造主である我々に歯向かうぞ! 様々な憶測を巡らせ、マスコミもそれを煽り、次第にセカンドヒューマンは「迫害の対象」となっていく。
 迫害により社会的地位につけなくなったセカンドヒューマンたちは、収容所に入れられ、そこでは看守による暴力が横行していた。
 逃げ出した少女イムの物語がいま始まる。

 本来の順番であればMAGNAが先だが、EGUのストーリーを先に語りたい。

B1-生物学-U《希望の使徒 イム》
世界がボクを探さないなら、ボクは世界を置いていくよ。
〜イム〜

「イム」という名前の元になったのはアイヌの精神疾患「イム」だろうか。《希望の使徒 チセ》の「チセ」はアイヌ語で「家」で、《希望の使徒 アニー》の「アニー」はそのままアイヌのもじり……などとこじつけるのは厳しいか。

 でなければ、もっと直接的に仏かもしれない。仏教の開祖である釈迦は生老病死の四苦を悟り、王族でありながら出家をしたとされているが、6人の乙女のうちのひとりである《希望の使徒 イム》らセカンドヒューマンたちの人生はまさしく苦しみに包まれていた。

 引き金となったのは《独裁科学 ドラン・エイガー》が市長となったことである。彼はもともと鬱屈していた人間たちの感情を超人たるセカンドヒューマンに向けさせた。

B1-化学-U《絶対治安 HIROSHI》
ドラン市長の命令により、セカンドヒューマンはすべて逮捕するとです。
〜HIROSHI〜

 だがそもそも、人々の不安を煽ったのも《ドラン・エイガー》であったことは間違いない。

B1-生物学-U《希望の科学 ドクターテンマ》
私の研究はプログレスの武装化ではない。何者かが私の研究を悪用したのだ。
〜ドクターテンマ〜

 彼は《希望の科学 ドクターテンマ》の研究結果であるセカンドヒューマンを武装化させるという、プログレス化計画に関して裏で手を引いていたのだ。

 しかしながら、彼の目的は迫害対象を生み出すことではない。あくまでプログレス化計画は手段であり、目的ではない。プログレスを生み出した彼には、さらなる目的があった。

B1-化学-U《独裁科学 ドラン・エイガー》
セカンドヒューマンを超人化するプログレス化計画は成功した。そして計画は次の段階に移る。
〜ドラン・エイガー〜

《ドラン・エイガー》の二つ名である「独裁科学」にはLAPISのパルプティコン(パノプティコン)、TAOSINの《宰卿皇帝 ビッグブラザー》などの独裁・監視社会と類似性があり、気になるところであるが、彼についてはそれ以上に他のカードとの繋がりで気になる点がある。

B1-生物学-SP《エージェント セス》
我が相方ヴァネッサよ。われらが探しているキメラの遺伝子は、あの科学者市長が持っているとの情報を得たぞ。
~エージェント セス~

《エージェント ヴァネッサ》はキメラたちを監視し、遺伝子を回収していた組織のエージェントであるが、彼女の同僚である《エージェント セス》のフレーバーでは、目的の遺伝子をまだ回収しておらず、とある人物が持っているという情報をもたらした。

 科学者市長——すなわち《ドラン・エイガー》その人である。この関連から、EUGのA生物学世界とEGUのB世界が非常に密接に、というよりほぼ同一の時間・次元軸に存在していることが明らかになった。

 さらに言えば、プログレス化計画においてエージェントたちが探していた「探しているキメラの遺伝子」が使われたことは想像に難くない。収容所に入れられて迫害を受けるセカンドヒューマン/プログレスたちの状況は、キメラたちとまるきり同じだからだ。

B1-化学-U《市長の野望》
ドラン市長の誕生により、セカンドヒューマンたちは収容所に入れられ迫害を受けていた。
〜某新聞記者の手記〜

 ところで本ブログでは「Aシーズンでは各学問世界が繋がっている」という仮定の上で考察を行い、LAPIS生物学世界がEGU生物学世界の遠い未来であり、かつてキメラと呼ばれた存在が獣として暮らしている世界であると結論づけた。この考え方だと、LAPIS世界のフレーバーから、

  • AシーズンEGU生物学(キメラの反乱)
  • →BシーズンEGU(プログレス化計画)
  • →AシーズンLAPIS生物学(獣たちの饗宴)
  • →BシーズンLAPIS(風の民)

と時間的には繋がることになる。果たしてこれは正しいだろうか。

 現在のところ、Bシリーズ最大の懸念はTAOSIN・LAPIS・EGU三世界に共通する監視独裁社会要素である。似たような要素がある以上、別世界ではなく横の繋がりがある世界と考えるべきではないのだろうか。本当に生物学世界は繋がっているのか。

 そんな不安を孕みながら、Bシリーズ——否、ウォーブレのストーリー全体にさらなる混乱を巻き起こすのがMAGNAおよびNEUTRAL世界だ。

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