展覧会/ガブメント
書き出しをどうしようかなぁ、とだいぶん長いこと悩んだ。
『おちんちんランド、堂々開園! 今なら入場料600円!』とかその辺りかなぁ、とか考えていたのだが、やはりいつもの真面目なテイストを崩さず書くことにする。
■ガブメント
林崎文博/白泉社
まずは背景から。
『ガブメント』が連載されているのは『ヤングアニマル嵐』という雑誌である。わたしは雑誌というものをほとんど読まないのでWikipedia等での情報になるが、『ヤングアニマル嵐』は『ヤングアニマル』から派生した雑誌で、成年指定誌ではないが性描写が多いため、有害指定図書の扱いを受けることもある雑誌らしい。
最初に述べてしまうと、現在第3巻まで出版されている『ガブメント』は次巻、つまり第4巻で連載終了をしてしまうらしい。第3巻で「次で最終巻になっちゃった」と述べていることから、おそらく人気低迷による連載終了(つまり打ち切り)なのであろう。
勿体無いな、と思わずにはいられない。そもそも連載する雑誌を間違えたのではないか、と。
とはいえ一般の雑誌で連載するのは難しかったに違いない。
『ガブメント』はSFファンタジーとでもいおう物語である(余談だが、わたしは中学までSFを「サイエンスファンタジー」の略だと思っていた。だってサイエンスフィクションという言葉があると、サイエンスノンフィクションもないと変じゃん)。
ジーンリッチ、デザイナーチャイルドといった言葉は現代にも存在しているが、人類は単に遺伝子の優位性をコントロールするのみならず、異種交配に積極的になり始めていた。遠い未来、人々は更なる優位性を求めて受精卵を積極的にコントロールし始めた。生命は産むものではなく作るものとなり、結果として性行為は消えなかったが、生殖行為というものは消えた。
『ガブメント』の世界では、生物は主に3種類に分類されているものと思われる。1つは人間(ニンゲン/ストレート)、1つは人幻(ニンゲン/ミックス)、そしてそれ以外、だ。
否、もしかすると具体的な描写がないが、「それ以外」という分類の種もほとんど絶滅してしまっているのかもしれない。人間と人幻、あとは微生物レベルの細菌などしか存在していないのかもしれない。それを示すのが、世界からXYが、雄を示す性染色体が消えてしまったという事実である。
他に改良されず生き残っている野生種がいるのであれば、そこから性染色体を抜き取る、もしくは模倣すればば良い。簡単ではないだろうが、この世界観における技術を見る限り難しくはないだろう。それを考えると、やはりこの世界は人間と人幻しかいないのだ。
人間によって他の種と交配され産み出された「人幻」(たとえば孔雀の尾を生やしたリューイークジャクや蛙の胴体を持ったトゥーフェイスなど、数あまたの種が存在する)はこの世界観を象徴するもののひとつだ。彼らは雄雌存在しているが、染色体レベルではどちらもXXでしかない(もっともこれは人間も同じだが)。彼らは性の営みを忘れた生物であるため、人間たちによって作られ、役割を決められ、それを全うすれば回収され、次代の命にエネルギーを回される。子を産むことを知らない彼らは、他を愛するということを知らない。性行為はわかるが、生殖という概念がないのだ。行為に及んでも子は産まれない。愛することはない。ただ自己の保存のみを優先するだけだ。
そんな世界の中で主人公ポプラは生きていく。自分のXY染色体を次代に残すために。
このような世界観なのだから、性描写があるのは仕方のないことのように思える。とはいえもう少し上手く描写をぼかせば、もう少し読者対象の幅を広く出来たのではないか、と思わずにはいられない。今のところ「この描写は必要だろう」とわたしが感じたのは、母親の仕事を見てしまうシーンと検査のシーンだけだ。後者は自覚や世界観を正しく伝えるために必要であるし、前者は今後の展開や背景を描くのに不可欠であろう。だが他の描写については上手く立ち回ればどうにかできたシーン(いや、好きで描いているんだろうけど)だったと思われる。
ともあれ既に連載している雑誌があり、おそらく連載終了も正式に決定してしまったのであろうから、こうしたことを遠くからぐちぐち言っていても仕方がない。
現在の連載ペースだと来年の3月くらいで最終話だろうか。打ち切りなのだとすれば怒涛のペースであらゆる物事が消化されてしまうか、放り投げっぱなしで終了となってしまうかどちらかだろう。
この世界では命はとても軽い。
なぜなら命の重みを知らないから。
この世界観は、しかしそうして終わらせてしまうには勿体無いと思わせるものであった。管理された命、その命が杜撰に扱われる場であるケモノ道。雌だけの世界に放り込まれた雄の存在。世界は異種族だらけであり、考え方も種々様々。整然としているものよりも、混沌としているほうが面白い。
エログロに耐性があり、なおかつ興味がある方はまだ連載している間に是非どうぞ。
『おちんちんランド、堂々開園! 今なら入場料600円!』とかその辺りかなぁ、とか考えていたのだが、やはりいつもの真面目なテイストを崩さず書くことにする。
■ガブメント
林崎文博/白泉社
まずは背景から。
『ガブメント』が連載されているのは『ヤングアニマル嵐』という雑誌である。わたしは雑誌というものをほとんど読まないのでWikipedia等での情報になるが、『ヤングアニマル嵐』は『ヤングアニマル』から派生した雑誌で、成年指定誌ではないが性描写が多いため、有害指定図書の扱いを受けることもある雑誌らしい。
最初に述べてしまうと、現在第3巻まで出版されている『ガブメント』は次巻、つまり第4巻で連載終了をしてしまうらしい。第3巻で「次で最終巻になっちゃった」と述べていることから、おそらく人気低迷による連載終了(つまり打ち切り)なのであろう。
勿体無いな、と思わずにはいられない。そもそも連載する雑誌を間違えたのではないか、と。
とはいえ一般の雑誌で連載するのは難しかったに違いない。
『ガブメント』はSFファンタジーとでもいおう物語である(余談だが、わたしは中学までSFを「サイエンスファンタジー」の略だと思っていた。だってサイエンスフィクションという言葉があると、サイエンスノンフィクションもないと変じゃん)。
ジーンリッチ、デザイナーチャイルドといった言葉は現代にも存在しているが、人類は単に遺伝子の優位性をコントロールするのみならず、異種交配に積極的になり始めていた。遠い未来、人々は更なる優位性を求めて受精卵を積極的にコントロールし始めた。生命は産むものではなく作るものとなり、結果として性行為は消えなかったが、生殖行為というものは消えた。
『ガブメント』の世界では、生物は主に3種類に分類されているものと思われる。1つは人間(ニンゲン/ストレート)、1つは人幻(ニンゲン/ミックス)、そしてそれ以外、だ。
否、もしかすると具体的な描写がないが、「それ以外」という分類の種もほとんど絶滅してしまっているのかもしれない。人間と人幻、あとは微生物レベルの細菌などしか存在していないのかもしれない。それを示すのが、世界からXYが、雄を示す性染色体が消えてしまったという事実である。
●主人公
おちんちんランドの主。人間の雄。
世界で唯一、染色体XYを持つ生物であり、そのために多くの種から狙われることになる。
たまに服の下に女子用スクール水着としか思えないものを着ている。
●一応ヒロイン
一応ヒロイン。人幻のリューイークジャクの雌。
普通の漫画だとヒロインっぽいキャラが窮地に立たされても、生き残るだろうと読めるのだが、この漫画だとそういった見込みが通用しないため、正直死んだと思っていた。
他に改良されず生き残っている野生種がいるのであれば、そこから性染色体を抜き取る、もしくは模倣すればば良い。簡単ではないだろうが、この世界観における技術を見る限り難しくはないだろう。それを考えると、やはりこの世界は人間と人幻しかいないのだ。
人間によって他の種と交配され産み出された「人幻」(たとえば孔雀の尾を生やしたリューイークジャクや蛙の胴体を持ったトゥーフェイスなど、数あまたの種が存在する)はこの世界観を象徴するもののひとつだ。彼らは雄雌存在しているが、染色体レベルではどちらもXXでしかない(もっともこれは人間も同じだが)。彼らは性の営みを忘れた生物であるため、人間たちによって作られ、役割を決められ、それを全うすれば回収され、次代の命にエネルギーを回される。子を産むことを知らない彼らは、他を愛するということを知らない。性行為はわかるが、生殖という概念がないのだ。行為に及んでも子は産まれない。愛することはない。ただ自己の保存のみを優先するだけだ。
●母
ポプラの母。ユキクジャクの雌。
もちろんこの世界には子を産むという概念はないため、母として割り当てられた存在でしかない。
結局色を入れている理由が描かれなかったが、単に変装目的だったということで良いのだろうか。
そんな世界の中で主人公ポプラは生きていく。自分のXY染色体を次代に残すために。
このような世界観なのだから、性描写があるのは仕方のないことのように思える。とはいえもう少し上手く描写をぼかせば、もう少し読者対象の幅を広く出来たのではないか、と思わずにはいられない。今のところ「この描写は必要だろう」とわたしが感じたのは、母親の仕事を見てしまうシーンと検査のシーンだけだ。後者は自覚や世界観を正しく伝えるために必要であるし、前者は今後の展開や背景を描くのに不可欠であろう。だが他の描写については上手く立ち回ればどうにかできたシーン(いや、好きで描いているんだろうけど)だったと思われる。
●バズ・ホーン
バズ・ホーンの雌。
正直こっちが正ヒロインなんではないかと思わずにはいられない。表紙登場率も高い。
太ってからがやたらと可愛い。
●イケメン
砂漠のイケメン。ラグドールマンの雄(雄しか存在しないと思われる)。
ちなみにコートの下は全裸。
ともあれ既に連載している雑誌があり、おそらく連載終了も正式に決定してしまったのであろうから、こうしたことを遠くからぐちぐち言っていても仕方がない。
現在の連載ペースだと来年の3月くらいで最終話だろうか。打ち切りなのだとすれば怒涛のペースであらゆる物事が消化されてしまうか、放り投げっぱなしで終了となってしまうかどちらかだろう。
この世界では命はとても軽い。
なぜなら命の重みを知らないから。
この世界観は、しかしそうして終わらせてしまうには勿体無いと思わせるものであった。管理された命、その命が杜撰に扱われる場であるケモノ道。雌だけの世界に放り込まれた雄の存在。世界は異種族だらけであり、考え方も種々様々。整然としているものよりも、混沌としているほうが面白い。
エログロに耐性があり、なおかつ興味がある方はまだ連載している間に是非どうぞ。
(*画像は『ガブメント』(白泉社/林崎文博)の1~3巻より)
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