Jefferson記念館の周囲で死んでいる物言わぬSuper Mutantは、GrayditchのFire Antを思い出させた。どれも頭部を一撃の下に撃ち抜かれている。


Super Mutantの皮膚は分厚く、拳銃の弾くらいは通さないという話はよく聞く。Super Mutantが無防備な死に姿をしていることからも、おそらく狙撃銃を用いて狙撃したのだろうということは予想がついたが、銃をほとんど熱かったことがないLynnに狙撃銃の扱いがいかに難しいかはわかる。なにせLynnの場合だと、拳銃でさえ十数メートル先の的に当たらないのだ。

 これをすべてRitaが倒したのだとすれば、ずいぶんと恐ろしい少女だ。Vault出身のはずだが、いったいどこで銃の練習をしたのだろう。彼女の住んでいたVaultは、銃に練達するほど危険な場所だったとでもいうのだろうか。
 あるいは、これらの死体はRitaではなく、他の誰かが作ったものなのかもしれない。たとえばJamesだとか。Three DogやMoriarty、そしてLivet CityのDr. Liの話を総合すると、どうやらJamesはずっとVaultにいたわけではなく、このCapital Wastelandで研究者として活動していた時期があったようだ。そのときに射撃技術を身につけたのだとすれば、いちおう話は通る。あるいはRitaの射撃技術は、Jamesが教えたものなのかもしれない。


 記念館内部も、ほとんど似たようなものだった。あちこちでSuper MutantやCentaurが死んでいた
生き残っているSuper Mutantがいたら格好の獲物になってしまうかもしれないと少し迷ったが、LynnはRitaの名を呼びながら歩いて回った。もし急に出会ってしまったら、狙撃銃で撃たれる可能性がある。小型拳銃やSuper Mutantの拳、機関銃程度なら変身できればものともしないが、万が一彼女の持っている狙撃銃が対物ライフルのような大口径の弾丸を射出するものだった場合、変身しても防ぎきれない可能性がある。そもそも変身できないかもしれないので、警戒するに越したことはない。怖いのはSuper Mutantよりも、Ritaだ。

 誰にも出会わないまま、Lynnは開けた空間に辿り着いた。
 不思議な空間だった。中央に小型の池があり、池に足を突っ込むような形で円筒形の部屋が浮いている。中の機械は動作しているようで、照明だけではなく、明らかに何らかの機能を果たしているらしい光を放つ機械もあった。


 階段を上がり、池の上の円筒形の部屋に入る。機械を眺めながらぐるっと回ってみるが、見ただけで何か手掛かりが見つかるわけでもない。機械を調べる知識もないので、お手上げだ。記念館内はだいたい見て回ったが、何の手掛かりもなかった。Ritaにも会えなかった。
(参ったなぁ………)
 ひとまずRivet CityのBryanのところに戻り、Ritaがやってくるのを待つという選択肢くらいしか、現状では思いつかない。いつになるかわからないが、彼女が意外に子どもに優しいことを考えれば、新しい地にやってきたばかりのBryanを心配して、様子を見にくることは間違いない。

 そう思って円筒形の部屋を出ようとしたとき、入口の機械の上にホロテープがあったのを見つけた。Pip-Boyの機能でそのホロテープを再生してみたLynnは驚いた。それに記録されていたのは、紛れもなくLynnが探し続けていた人物、Jamesの声だった。声を聞いたのは一度きりだが、忘れようもなかった。


『これからVault112に出発予定。問題はVault112の位置座標。現在の記録ではここより西、Evergreen Millsのガレージらしき建物の中にあるということしかわかっていないため、到着までに少し時間を要する可能性あり。だが必ず見つける。見つけなければならない。Braunの残した何らかの有用なものがあることを信じて。
 彼の研究結果が、Project Purityに欠けているピースの一片となってくれることを祈る。James』

 どうやらこれはJamesの個人的な日記のようなものらしい。端的な言い方からは、日記というより、記録という表現のほうがしっくりくるかもしれない。
(Vault112………)
 Jamesはそこへ向かったようだ。おそらくLynnと同様にこのホロテープを再生したRitaも。

 Rivet Cityへと戻ったLynnは、ホテルのVeraに、Evergreen Millsという場所を知らないかと尋ねてみた。
 意外にも、知っていると答えたのはBryanだった。
「ぼくは行ったことないけど、Leskoが言ったことあるみたいで、場所は聞いたことがあるよ」
 どうやらLeskoは、見た目と違ってフィールドワークに熱心な科学者だったようだ。確かに危険を冒してFire Antの巣のすぐ傍に住んでいたくらいなのだから、頷けないでもない。

 Bryanはだいたいの場所しか覚えていなかったが、Vault112がガレージのような建物の中にあるということを知っているので、それで十分だった。その周辺の建物を調べていけば良い。Evergreen MillsはRivet CityからMegatonよりも遥か西だが、バイクで行けば距離はそれほど問題にならない。
「Lynn、今度はそこに行くの?」
「うん。Jefferson記念館に手掛かりがあったからね。ちょっと遠いけど、まぁバイクで行けば1日はかからないと思う」
「Ritaもそっちに行ったのかな」
「たぶん、そうだと思う」
「じゃあさ、向こうでRitaと会ったら、今度はいっしょに泊まりに来てよ
「そうね」とBryanの言葉にVeraも同調する。「お部屋は空けておきますから……、いつでも来てくださいね。あんまり安くはできませんけど」

 ふたりに送り出され、Lynnは快い気分でRivet Cityを出立することができた。こんなに晴れやかな気分で旅立てるのは初めてだった。気分が良い。

 Rivet Cityから直接Vault112へは向かわず、一度Megatonへと戻る。自宅の冷蔵庫をチェックし、Moiraの店で足りない水や食料、燃料を買い込む。
「あ、そういえば」と店を出る間際、Moiraが声をかけてきた。「良いもの作ったんだけど、いるよね?」
「良いもの………?」
 Moiraの良い、というのはなかなか油断のならない抽象的な表現で、Lynnは身構えてしまった。彼女が店の奥からカートに乗せて持ってきたのは、サイドカーだった。Lynnが修理してもらったバイクと同じ塗装だ。
「きみ、犬連れてるでしょ。今はLucasの家で預かってもらってるみたいだけど、これがあれば大好きなわんちゃんと一緒に旅行ができるよ。つけてあげる」
 Lynnに二の句を許さず、Moiraは店を出て行ってしまった。店でいつも警備をしている用心棒らしき男性は、Lynnと視線が合うと、ゆっくり首を振った。諦めろ、という意味だとLynnにはわかった。

(まぁ、便利になるなら良いか………)
 犬をLucasに預けっぱなしというのも申し訳ないという気がする。Megatonより西は平地で障害物も少なく、戦前の道路が比較的残されているということで、それほど振動を与えずに移動できるだろう。犬を連れて行ってやることにしよう。
 

 犬にはまだ名前をつけていないはずだったが、Lucasの子が勝手に名前をつけてしまっていた。Dogmeatという名で、だいぶん酷い名前という気もするが、犬自身が自分がその名であると認識してしまっているようなので、Lynnもその名を受け入れることにした。DogmeatはしばらくLynnに会っていなかったにも関わらず、会うと尾を振って出迎えてくれた。

 翌朝、改造されたバイクのサイドカーにDogmeatを乗せた。エンジンをかけ、アクセルを少し回してみたが、Dogmeatは動揺する様子を見せなかった。走ってしまっても問題がないようだ。犬は車に酔うという話を聞いたことがあったので、それだけが心配だったが、いまさら迷っていたら日が暮れるまでに目的地につけなさそうだったので、出発することにした。順調に進めば、夕方までに到着できるだろう。

道中は、Raiderと出くわしたり、巨大な熊のような生き物に襲われることもあったが、変身には支障はなく、概ね順調だった。
 だがEvergreen Mill付近で、Lynnはある集落を発見した。集落をうろつく人間の装備と、檻に入れられている奴隷の姿から、そこがRaiderの巣であることがわかった。


 集落の中央には見覚えのある巨大な生き物がいた。Super Mutant Behemoth。何かに利用しようとしているのか、奴隷たちと同様、Raiderたちに捕らえられているようだった。

 RaiderもSuper Mutantも、人間の敵だ。


 Lynnは青白い光とともに、Masked Raiderへと変身を果たした。
 跳躍する。


 人類の敵を討つために。



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