ひとつ、ここは戦前の超大型カジノSierra Madreカジノ門前街である。現在カジノの機能は停止しているが、内部には戦前の人類が遺した宝が大量に眠っている。ホログラムの男、Elijahその宝を欲しており、SiとKutoに協力を仰ぎたいと考えている。

ひとつ、SiとKutoの首に嵌められている首輪には爆弾が組み込まれており、任意に爆破することができる。彼によれば、これは協力体制を作るための必要な措置である。外そうとすれば爆発し、また爆破コードを妨害するのを防ぐため、一定の間隔でElijah側に装着者の生命反応を送信している。これが途切れるとやはり爆発する。ラジオの圏内では正常作動電波が妨害されるため、一定期間内にラジオの機能を停止させなければやはり爆発する。また装着者が死んだ場合も爆発する。ちなみに爆破は連動しており、ひとりの首輪が爆発すると、他の首輪も同時に爆発する

ひとつ、Sierra Madreカジノのセキュリティ機構の一部は現在も正常に作動している。それも手伝って、Siたちが所持していた武器の持込みは不可能であった。代わりにElijahから武器を支給する。また服は汚れてしまったため、代わりの服を支給した。

ひとつ、Sierra Madre門前街にはSiやKutoと同様、3人のElijahの”協力者”がいる。彼らの思惑は様々で、Elijahに反抗的な者や罠にかかって身動きが取れなくなってしまった者も存在している。Sierra Madreカジノ内部に潜入するには彼らの手伝いが必要不可欠である。そのため、SiたちはまずSierra Madre門前街で彼らを助け、説得し、協力を取り付けなければいけない。

『きみたちに要求するのはみっつのことだけだ。わたしの言うことによく従い、実行し、裏切らない……。簡単なことだ。もしこれらの条件に反するようなら、わたしはただちにきみたちの首輪の爆弾を起爆し、次の人間を探す。もっとも、今回はそうはしたくない。なかなかの逸材が揃っているからね。南部NCR最高のポイントマン、Ranger Fairy Eye。そして』Elijahは一度言葉を切る。ホログラムの映像はリアルタイムのものではなく、静止画像なので、Elijahの視線の動きが捉えられたわけではないが、彼はKutoを見たようだった。『何の後ろ盾もなくCaesers' Legionに三度遭遇しておきながら生き残った人間、Kuto。きみたちは脱走を無駄に試みて呆気なく死んでしまうということはなく、わたしの言うことをよく聞いて生き残ってくれると信じている………』

SiはElijahの言葉を話半分に聞きながら、Sumikaの行方を探っていた。あの地下シェルターのような場所でガスを吸い込んだとき、SumikaはSiのすぐ傍にいた。彼女はどこに行ってしまったのか。
「Silas………」か細い声が聞こえてくる。Jump Suitの胸ポケットからだ。「ここだよ、Si………」

Siはそっと胸ポケットに手を入れると、Sumikaの柔らかな肌の感触があった。彼女の身体を引き出す。残念ながら今は彼女の姿が見えないので、無事なのかどうかわからない。声を聞く限りでは、何か異常があるように感じられる。

Siが彼女を気遣うと、Sumikaは肯定の旨を弱々しく示した。
「うん………」なんかね、とSumikaは振り絞るような声で言葉を述べた。「身体が、変なんだ。凄く、重くて……。喉が痛くて、身体が熱くて………。たぶん、この赤い霧みたいな……、雲みたいなもののせいで………」

雲。
彼女の言うとおり、このSierra Madre門前街は異様な色の雲に包まれていた。それに、確かに空気が変だ。酸っぱい刺激臭が漂っている。何か身体に有害な物質が大気中に含まれているのかもしれない。

『さて、きみたちのことはCollar21と呼ぼう。探索者初のペアナンバーだ』Elijahは喋り続けていた『最初に言ったように、きみたちがまず為すべきことはCollar 8Collar 12、そしてCollar 14ら3人の協力者と合流することだ。彼らの居場所を特定するために、彼らの首輪の周波数をきみたちのPip-Boyに入力しておいた。さて……』
「おい、質問だ」Siは言う。「この赤い雲はなんだ。有害な物質じゃないのか」
『ああ、良いところに気付いたね、Collar21』Elijhaは話を遮られたことに腹を立てる様子もなく応じる。『わたしはあの雲をToxic Cloudと呼んでいる。まぁ、意味合いどおりだ。あの雲はこの下層大気にも影響していて、皮膚を蝕み、肺を焼く、危険な空気にしている。原因はわからない。おそらく戦争で使用した兵器の残滓だろう』
「ここの空気に触れていると危険ってことですか?」
発言したのはKutoだった。
『よほど身体の弱い人間ではない限り、体力を蝕みはしても、死にはしないだろう。ただ、密度が濃い場所には気をつけたほうが良いだろう。そうした場所では、そこに長く留まっていれば、健康な成人男性でも死に至る。建物の中なら安全だ。休むのならば、中で休むことをお勧めする。だが、室内には、とりわけカジノの中はセキュリティが生き残っている場所もある。そちらにも気をつけたほうが良いだろうね』

「Sumika……、聞いてたか?」
SiはSumikaの身体に触れながら尋ねた。どうやら彼女の首にはSiたちのような爆弾首輪はつけられていないようだ。Si以外には彼女の姿は認識されないので、当然だろう。
「うん……、だいたいのことは」というSumikaの返答は弱々しい。身体の小さい彼女は、おそらくSiたちに比べて毒物への耐性が薄いのだろう。
Siは服の袖部分を裂いて手頃な大きさの布地を作った。Sumikaの身体を包む。布一枚とはいえ、これがフィルター代わりになって、直接空気に触れるよりはましになるだろう。さらにポケットの中に戻す。
「ここでじっとしてろ」
「うん……」Sumikaは弱々しくも、ありがとう、と言った。

『まずはCollar 8に会いに行くのが良いだろう』と、まだElijahは喋っていた。『彼はFEVの恩恵を受けた存在、つまりSuper Mutantだが、非常に従順で、聡明だ。協力を取り付けることはそう難しいことではないだろう。残念ながら、トラップにかかってしまったためかコンタクトは取れなくなってしまったが、ここより西のVilla警察署のあたりで見つけ出すことはできるだろう。ただし、居住者たちには気をつけたほうが良い』

「居住者?」とKuto。「住んでいる住人がいるのですか?」
『いる。が、彼らと意思の疎通を図ろうなどとは思わないほうが良い。彼らはもはや人間とは呼べない存在だ。おそらく普通の装備では、殺すことさえできない。弾丸でも、爆弾でも、エネルギー兵器でも、彼らを殺すことは難しい。すぐに再生してしまう。おそらく、この雲の作用だろうね……。さて、きみたちは仲が悪いようだが、最初に言ったとおりにきみたちの首輪は誰かひとりが死ぬと同時に他の首輪も爆発する。もちろんこれは、Collar 8、12、14に関しても同様だ。仲良くやってほしい。では、検討を祈る
そう告げてホログラムは掻き消えた。


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