かたや、特殊部隊、1st Reconに籍を置いた凄腕の狙撃主
 かたや、NCRのRangerとして単独行動を許された妖精の目
 そのふたりが同時に異常の気配を感じたのならば、すなわちそれは前方に敵ありという事実に他ならない。



は?」
Legionだろう」
は?」
30前後か。小隊レベルだ。犬もいるだろう」
目標は?」
Bitter Springsに決まってる。奴隷狩りだ」

 どちらがどちらに問いかけたというわけでもなかった。ほとんど、己の感覚を相手に確認するようなものだった。

「都合が良いな。こっちから出向いてぶっ殺すつもりだった」とSiは言って回転式拳銃を抜く。
「確かに、違いない」
 とBooneは僅かに口角を持ち上げて、珍しく笑った。気持ち悪かった。



おれはここで食い止める。おまえはGilles大尉に避難誘導をさせてから、キャンプを守ってやれ」
 Booneがそう言ったのは、べつだん自己犠牲の尊い精神というわけではなかった。Bitter Springsでは、未だLegionの襲撃には気付いてはいない。ならば最低ひとりは伝えに行かなければいけないが、ふたりでこの狙撃に最適な場所を放棄するわけにはいかない。敵を食い止める役は、狙撃手のBooneにぴったりだ。
 死ぬなよ、とはSiは言わなかった。ほとんど寝静まったBitter Springsへ向けて、走る。Rexも追いかけてくる。



「Si、大丈夫?」とSumikaは彼の肩から囁く。
「Sumika、こっから先はおまえの目が頼りだ。頼むぞ」
「解ってる……。あんまり無茶しないでね

Legionの一個小隊が襲撃を仕掛けてきた
 Siがそう告げると、テントに居たGilles大尉は驚いた顔をした。
 しかし彼女は愚かしく、Siの勘違いだろう、などとは言わなかった。Rangerの目を信じた。そして、。どうすれば良いのか、と問いかけてきた。
防衛戦だ。戦えるやつは全員起こせ。一般人は北の山へ避難させろ。あの辺りのGeckoは掃討したし、Great Khanももういないから安全だ。南はBooneが守ってる。他に侵入経路はあるか?」
「守ってるって……、たったひとりで?
「時間稼ぎのためだ。心配ない。早く他に攻めてくる経路を教えろ」
西側に墓地がある。そこから攻めてくるかも……」
「了解。指揮は任せる。住民の避難を最優先に」
 言い捨てて、Siはテントを飛び出す。



 既にBooneの狙撃を越えて、Legionが南から進入してきていた。Siは岩の上からLegionたちの頭に向けてHunting Revolver+を撃ち放った。闇夜の中でも、妖精の弾丸は狙い違わずその瞳を射抜いた。

Perk: Cowboy (リボルバーの威力上昇)
Perk: Finesse (クリティカル率増加)
Perk: Confirmed Bachelor (男性へのダメージ上昇)



「Si、西から敵が来てる!
 空から周辺の様子を観察していたSumikaは、Siに向けて叫んだ。南では、一部のLegionが抜けてきてはいるが、Booneが奮戦しているし、叩き起こされたNCR兵士も駆けつけてきた。だが西には人がいない。
 Siはその場を離れ、西側の墓地へ続く小道へと戻る。



 途中、死んでいるNCR兵とLegionの姿があった。彼らは奮戦したのだろう。若い兵士ばかりだった。実力で劣る分を、その命で補ったのだ。


 空が白み始めていた。新たな一日が始まろうとしている。



 既にLegionの犬が侵入してきていた。すばしっこい犬に対し、Rexが跳びかかる。サイボーグ強化されたRexの顎の力は、訓練されているLegionの犬の喉笛を簡単に噛み千切った。一対一なら、Rexは大丈夫だ。問題は彼の顎はひとつしかないことと、犬はその顎でしか敵を倒せないということである。




 犬が女に飛びつき、その細い首に食いつこうとしていた。Siはリヴォルヴァーを抜き撃った。2発。狙い違わず、犬の頭と胴を貫き、ぱっと石榴のように血が飛び散る。
 命辛々助け出された女の目には、涙が浮いていた。女といっても、まだ歳若い少女だ。難民キャンプで、幼い少年の世話をしているのを見た記憶がある。人種が違うようだったので、おそらくきょうだいではないのだろう。



 Siはそこに、幼い頃の自分を見た。幼い頃に助け出せなかった、姉代わりの、愛していた女性の姿を見た。

 少女は恐れで声も出ないようだったが、Siは北の山へ逃げ込むように言った。頷いて、彼女は少年を連れて逃げた。
 銃声が鳴る。見れば分隊規模のLegionが南から侵入し、NCR兵を負傷させていた。
(Boone………)
 SiはBooneの死を戦況で感じ取った。彼が生きていれば、これだけの人数を通しはしないだろう。分隊規模のLegionが侵入していること自体、Booneの死亡の証左であった。

 周囲は敵に囲まれていた。テント郡に、既に避難民は居ない。全て敵。
 妖精の目に死角はない。たとえ妖精の姿がいまは見えずとも、その声が聞こえる。意思は交わせる。この状況こそ、妖精の目にとっては好機に違いなく、Siは弾切れのHunting Revolver+の代わりに.357口径のLuckyと.44口径のMysterious Magnumを抜いた。

「ここは天国の門だ。入れるやつは善人か天使か、でなけりゃ死んだやつだけだ」


Perk: Rapid Reload (リロード速度上昇)
Perk: Nerves of Steel (AP回復速度上昇)


 SiとBooneの奮戦によって、避難民に死者は出なかった。NCRの兵士は4人死んだ。
「衛生兵なんだから、大人しくテントの中に閉じ篭ってメスでも握ってりゃ良かっただろうに………」


 死んだ兵士の中にMarkland大尉の姿もあった。テントからだいぶん南側に死体はあり、どうやら避難民を逃がしている間に撃たれたらしいと解った。

 BooneはCoyote Tailから僅かに北上したところで死んでいた。手にはいつものライフルではなく、Macheteを握っていた。どうやらライフルの弾が切れたものらしい。
 彼は命令を果たした動いているものを撃ち、弾丸を使い果たした。だが今度はそれだけでなく、力のない人々の命を守った。
 死んだ兵士たちの遺体は、Booneも含めて西の墓地に埋められた。


 埋葬が終わってから、SiはBitter Springsの周囲を何度も巡回した。やがて近づいてくる大量の気配を感じたが、それはNCRの補充要員とCrimson Caravanからの補給物資であった。
 長い引継ぎ作業があった。昨日の戦況について報告書を書いたり、食料を人々に配ったりした。その頃には昼もだいぶん過ぎていた。

 くたくたになって火の近くに行くと、引継ぎ作業から解放されたらしいGilles大尉が串焼きを食べていた。彼女もやはり、疲れた様子であった。
「食べますか?」
 と彼女が串焼きを差し出してきたため、Siは隣に座って受け取った。Sumikaと分けて食べた。

「キャンプの様子は?」
「あなたたちのおかげで、本当に良くなりました……。たぶん」とGilles大尉は己の胸に手を当てる。「わたしだけだと、どうにもならなかったと思います。ありがとうございました」

 食事が終わってから、彼女はBooneの遺品を手渡してきた。ライフル、1st Reconのベレー帽、アーマー。
 その中に、手紙があった。Booneの署名がある、手紙。
『Carlaへ』って書いてある………」
 とSumikaが震える声で言った。Carla。Booneが撃ったという、妻の名だ。
 Siは手紙を捻り、火の中に放り込んだ。これで天国まで届くだろう。

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