アマランタインに種実無し/06/01 Elizabethan Rendevous-1
第六行
Elizabethan Rendezvous
エリーに首ったけ
Name: Azalea
Clan: Tremere
Sex: Female
Disciplines: Auspex (1), Dominate (1), Thaumaturgy (3)
Feats:
-Combat: Unarmed (2), Melee (1), Ranged (3), Defense (2)
-Covert: Lockpicking (3), Sneaking (4), Hacking (5), Inspection (3), Research (3)
-Mental: Haggle (2), Intimidate (2), Persuasion (2), Seduction (5)
-Soak: Bashing (1), Lethal (0), Aggravated (0)
Equipment: Thirtyeight, Utica M37, Knife, Heavy clothing
Humanity: 10
Masquerade: 5
雨が降っていた。
「小舟で近づけるのはここまでだな」
そう声をかけるのは久しぶりに会ったMercurioである。Prince LaCroixのGhoulであるところの彼も、Azaleaと同じくこのElizabeth Daneの探索を命じられているのだ。
不安定な小舟の上で、Azaleaは目の前の絶壁のような船体を見上げた。Elizabeth Dane号。Ankaranの石棺を載せているところを発見されたという、正体不明の船だ。
Elizabeth Daneに近づくまでは、こんな大きな船にどうやって乗り込むのかと思っていたが、Mercurioが近づけてくれたあたりには、舷から縄梯子が降りていた。どうやら何某かの内部工作があったらしい。
「気を付けて行けよ」
と声をかけるMercurioに頷いて返し、縄梯子を掴む。先日の伝染病の件で服が汚れてしまったため、ツーピースからぴったりとしたパンツに着替えたのだが、梯子を登るのには都合が良かった。
いくら吸血鬼になってから、解体趣味の殺人鬼だの、人狼だの、ゾンビだのと戦い、幾つもの修羅場を潜り抜けてきたとはいえ、単純に高所というのは高かった。強い海風が吹き、何度も落ちそうになりながらも、Azaleaは舷まで身体を持ち上げることに成功した。
ほっと一息。それも束の間のこと。
「おい、そこの」
という声は男のもの。慌てて首と視線を巡らせてみれば、警官の恰好をした男がAzaleaに手招きしていた。
「こっちへ来い」
(げ………)
見つかるなと言われていたのに、早速見つかってしまった。不味い。
いや、まだTranceを使えば、と視線に血力を巡らせかけて、警官の様子がやけに落ち着いていることに気付く。声を潜めるさまは、まるでAzaleaの味方のようだ。
疑念を持ちつつも、吸血鬼の気配は無かったため、Azaleaは素直に近づいた。
「おいおい、こんな小学生みたいのを送ってくるなんて、Jacobsonは言ってなかったぞ」
と警官はAzaleaの姿を眺めまわして言った。
(Jacobson?)
聞いたことのない名であるが、やはり警官からは、侵入者であるAzaleaを捕えようとする様子は無い。
「あの……」
あなたは誰なのか、と訊こうとしたが、警官に指を立てられる。
「静かにしろ。ライブ会場に来てんじゃないんだぜ」
「あの」と声を潜め、改めて問う。「Jacobsonさんからは、ここでどうすれば良いのかを聞かなかったのですが………」
「とりあえず、だ。レポートのコピーはこれだ」と警官は紙束を手渡してくる。「持ち出せたのはこれだけでな、あとはキャビンにあるぶんを、じぶんでどうにかしてくれ」
Retrieved: Police Report
紙束は、どうやらElizabeth Daneの警備レポートのようだ。アメリカ沿岸警備隊や海軍犯罪捜査局のサインがあり、Elizabeth Daneの状態や船内探索の内容について書かれている。船体には大きな損傷があったものの、船内には死体も生存者も確認できなかったという。
どうやら目の前の警官は、Azaleaのことを、何かの情報をリークするためにやってきた記者の類と誤解しているらしい。LaCroixの根回しによるものなのか、それとも偶然なのかは解らなかったが、なんにせよLaCroixから頼まれた仕事の一端は達成できた。
もっとも、大事なのはここからである。
「これ以上のことを調べたければセキュリティルームへ行くんだな」と警官が言う。「セキュリティルームのコンピュータのパスワードは、Lighthouseだ。忘れるなよ。1単語でLighthouseだ」
「ありがとうございます」
襤褸が出る前に、Azaleaは警官から離れて甲板のほうへと向かう。
甲板は警官だらけではあったが、闇夜であったのと、大量のコンテナが積んであって身を隠すのには不都合しなかったため、先に進むのは簡単だった。
(あれが……、Ankaraの石棺?)
Elizabeth Daneの船尾で、Azaleaはライトに照らされた、如何にも重要そうに警備されている物体を見つけた。
砂を固めて作ったかのような色合いで、しかし表面は鉄のように固い。そしてなぜだか、ほんのりと温かい。まるで人間の肌のように。壁面には獣頭の怪物の姿などが彫られている。その彫り物を手でなぞっていったAzaleaは、何かぬるりとしたものが手に触れるのを感じた。
「血………?」
「おい、おまえ! 何をやっている!?」
声が響いた。警官だ。見つかった。物陰に溶け込んでいたため、なぜ。
いや、周囲は明るかった。ライトに照らされていて、見つからないはずがなかった。
Azaleaは、コンテナの陰に隠れて石棺を眺めていたはずなのに、いつのまにか石棺に触れられるほどに接近していたことに気付いた。なぜ。
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