Citadelの門の内で、喚くDr. Liを受け止めたのは、浅黒い肌に白い髪と髭の老年の男であった。
「Madison、驚いたよ。いったい何があったんだ?」
 と彼は親しげな口調でDr. Liへと声をかけてきた。


 一方で、Liの口調は未だ激高したままだった。
「Enclaveよ。訊かなくてもわかってるんでしょ? Lyons、あんたたちは、いったい何をやっていたの? Jamesが死んだ。Project Purityはお終いよ!」
 Lyonsと呼ばれた老人は、しかし穏やかに言葉を紡ぐ。
「ああ、わかっている。わかっているさ、Madison。落ち着いてくれ。わたしが知りたいのは、事の詳細だ。こうなってしまったのは、確かにわれわれの責任だ。それは申し訳ないと思っている。だからこそ、これからのことに目を向けたい。まだ、何もかも終わってしまったというわけではないのだろう? 現に、Jefferson記念館の浄化装置は、まだ作動していない」
G.E.C.Kが足りてないからよ。それに、パスワードも解除できていないはず。Enclaveが気づくのも時間の問題だけど」
「ならばわれわれにも、まだ勝ち目がある」
 Lyonsは視線をLiからRitaへと移したように見えた。彼女は、と目を細める。
「彼女は、Jamesの娘だね? 確か、Ritaとかいったか……」


「ええ。Jamesの設定したパスワードを解けるのは、あの子だけかもしれない」
「わかった。丁重にもてなそう。Madison、きみは少し休むといい」

 そうして、頭越しに交わされる、中身のよくわからない会話は終わった。Liや彼女の助手はBOSの隊員に付き添われて奥の建物へと入っていく。怪我をしたDogmeatも、ついでに治療してもらうことになった。
 残ったのはLynnとRita、Lyonsと呼ばれていた老人と、それにひとりのPower Armorを着込んだBOS隊員である。いや、Lyonsも、何かをそのBOS隊員に告げたのち、背を返して建物のほうへと歩いて行く。

 Lynnは、目の前のBOS隊員になんと声をかけるべきか迷った。現在の状況はどうなっているのか。BOSとLi女史との関係は。Enclaveとは。これから、どうすればいいのか。
 知りたいならば、問わなければならない。
 そう思ってLynnが意を決して口を開くまえに、目の前のBOS隊員がヘルメットを外した。
「や、久しぶり。Citadelに入れる一般人は、そう多くはないよ」
 と片手を挙げたその顔は、見覚えがあるものだった。
「Sarah………」
 すぐさま反応したのは、Ritaだったが、それも当然だろう。その隊員はLynnとRita、双方に面識があるBOS隊員、Sarah Lyonsだったのだ。


「元気してた……、ってかんじじゃないね」とSarahは僅かに沈んだ口調で言うからには、Ritaの事情は聞いているらしい。「休めるところまで案内するよ。ついてきて」
「休んでる暇なんてない」
 やはり即答したのは、Ritaである。彼女は未だ完全に快復しきっていないはずであろう、その身体を引きずって宣言した。わたしはあいつらが許せない。あんたたちはあいつらのことを知っているのだろう。だからそれを教えろ、と。
「きみはEnclaveのことを知って、どうするつもりだ?」とLynnは問うた。「殺すのか?」
「それが何か悪いか」
「きみは以前に、それを否定した」
「あいつらはわたしたちを殺そうとした! Raiderと同じだ」
「でもこちらから攻め込もうとすれば、あいつらと同じになるぞ」
「五月蝿い!」
 Ritaが叫んだ。
 Lynnは悔いた。なぜこんなことを言ってしまうのだろう。まるで意趣返しだ。何も生み出さない、ただRitaの怒りを掻き立てるだけの言葉でしかなかった。

「とりあえずふたりとも、落ち着いてくれるかな」と穏やかな口調でSarahが割って入る。「事情は説明するよ。Elderからも、あなたたちに全てを説明するよう言われているから。ほんとは休んでからと思ったんだけれど……、Scribe Rothchildのところへ連れて行くね」
「Scribe?」
「戦前の道具を研究する、学者みたいな人かな。BOSの人間は、基本的にわたしたちみたいな実際に現場へ赴く人間と、回収した道具を研究した人間に分かれてるの。Scribeってのは、後者ね」


 Citadelの正面玄関から建物の中に入る。通路を抜けて広い場所に出たあと、階段を下って小さな部屋まで案内された。
「客人か。珍しいな」
 その部屋でLynnたちを出迎えたのは、赤いローブを着た白髪頭の老人だった。どうやらこの人物が、Rothchildらしい。


「Jamesの娘か」
「父さんのことを知ってるの?」とRitaがいち早く反応する。
「Project PurityはBOSも協力していたプロジェクトだ。わたしは直接Jamesとは一緒に仕事をしたことはないが、彼と彼のチームは優秀だったからな。知らないわけがない。それで、そっちの若造は?」


「彼は……」
 紹介しかけて、Sarahが戸惑ったようにLynnとRitaを見た。なんと紹介すればよいか迷ったのだろう。彼女はLynnの変身能力について知っているが、それはBOSに知らせるべきではないものだ。
「Lynnです。Jamesのところで助手をしていました」
 誰も助けてはくれそうになかったので、Lynnは適当なことを言っておくことにした。

「助手ね。ふむん、まぁ、いい」とRothchildは頷く。「で、RitaにLynn。おまえらは今の状況、どの程度理解している?」
「Enclaveとかいうのが来た。父さんを殺した」
 Ritaが即答する。だからEnclaveを殺す、と続いてもおかしくない、迷いのない口調だった。
「若造のほうは?」
「だいたい同じです」
「成る程。おまえらの認識は、ひとつ間違っている。Enclaveの連中は、Jamesを殺すために来たんじゃない。彼を己が集団に迎え入れるために来た」
「でも父さんは殺された!」
 Ritaがほとんど叫ぶように反論するが、Rothchildの表情は平静であった。
「それは違う。Li女史からの報告は上がってきている。JamesはEnclaveに抵抗した。それでもEnclaveはJamesを殺そうとはしなかった」
「巫山戯るな! 殺されたも同じだ!」
「わたしが言いたいのは」Rothchildは静かな口調で、Ritaの言葉を遮る。「それだけEnclaveはJamesの研究を手に入れたがっていたし、彼はそれを守ろうとしていた、ということだ。特に彼の死因について議論するつもりはない」

 LynnはRitaを取り押さえていた。でなければ、彼女はRothchildを殴りつけていただろう。いや、既に足が出ている。足が短いので、当たらないが。
「一先ず、わたしにできる範囲で説明しよう。きみたちに……、いや、われわれに必要なのは、G.E.C.K.だ」

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