アメリカか死か/21/01 Take It Back! -1

 赤い人間たちにとっても、空気は貴重だ。それというのも、万物が同じ空気の息吹を、分かち合っているからだ。動物も、木も、人間も、みんなが同じ空気を、共有している。
(シアトル族の首長(1786-1866)が語ったと言われる言葉  『インディアンの言葉』智慧の手帳 ミッシェル・ピクマル編 より)


  • Rita
    • Lv. 14
    • S/P/E/C/I/A/L=5/9/4/6/4/10/3
    • Tag: Lockpick, Repair, S.Guns
    • Skill:
      • [S] M.Weapon=14
      • [P] E.Weapon=29, Explosives=30, Lockpick=100
      • [E] B.Guns=46,Unarmed=14
      • [C] Barter=30, Speech=45
      • [I] Medicine=40, Repair=60, Science=14
      • [A] S.Guns=90, Sneak=60
    • Perk:
      • [P] Infiltrator, Sniper, Light Step
      • [C] Child at Heart
      • [I] Ammunition Engineer, Daddy's Girl
      • [A] Thief, Gun Nut, Silent Running
      • [Others] Black Widow, Gunslinger, Intense Training (STR), Fineness
    • Equipment: 14mm Pistol, SIG Sauer Pistol, Infiltrator, M79 Grenade Launcher, Vault Exile (MOD), Cyber Arm (MOD), Augenbandage (MOD)


「わたしがRitaを見つけたときは、酷い状態だった」
 いまも十分に酷いが、とFawkesは己が見たことを正直に語る。


 いまこのアメリカ東部の地がCapital Wastelandと呼ばれていることを、Fawkesは知っていた。Vaultでもラジオ放送は入ってきており、世情についてはある程度は聞き及んでいたからだ。
 そしてこの場所は、Citadel。その中の独房である。
 Brotherhood Of Steelという組織によって、Fawkesは軟禁されていた。
(Vaultよりはずっと良いさ)
 とFawkesは心の中で嘯く。何より、彼らのおかげでRitaを助けることができたのだから、文句は言えない。
「Ritaの具合はどうだ」
 と改めて尋ねれば、『輸血は成功したし、感染症や妊娠していることも無かった。命の危険も無い』という返答がインターコム越しに返ってきた。
「そうか、それは何よりだ」
『いろいろと、ごめんなさい』
 相手がしおらしく言葉を紡いだことに、Fawkesは驚かなかった。相手は若い女と思しき声で、最初からずっとRitaを心配する色が含まれていた。いまやSuper Mutantと呼ばれる存在に成り果てたFawkesである。警戒されるのは当然で、出合い頭に発砲されなかっただけありがたいというものだ。

 Fawkesがそうした正直な気持ちを打ち明けると、『本当に、ごめんなさい』ともう一度謝られてしまった。
「だから、構わんよ。それで、もう尋ねたいことはないのか? 無いなら、そろそろ外に出たいんだが」
『もうひとつ……、訊きたいことがあるの』と女の声は躊躇いがちに言った。『Lynnは、どこ?』
「彼は死んだ」
 Fawkesは正直に話した。

 Fawkesがこんな状況になったのは、そもそもがRitaを助けようとしたからだ。
 Vault 87でRitaに助けられ、G.E.C.K.を手に入れたのち、Fawkesは被爆の酷いLynnを先に外に出そうとした。
 だが途中で気絶していたLynnが意識を取り戻し、戻るように嘆願してきた。Ritaのところへ、と。
 彼の容体が明らかに危険だと確信できていたFawkesはもちろん断り、無理矢理彼を外まで運ぼうとした。が、彼の反撃を受けてFawkesは倒れた。

 次に意識を取り戻したのは何分後だっただろうか。Fawkesの傍にはLynnはおらず、彼が向かったであろうRitaのほうへと向かうと、以前は開いていなかった扉が開いており、戦闘の跡があった。Power Armorを着た死体が複数転がっており、どうやらRitaやLynnが、このPower Armorを着た集団と戦ったらしいことがわかった。


 新たに開いていた扉から外に出てみれば、ちょうど離陸するVertibirdの姿が見えた。その中にRitaの姿を見とめたFawkesは、Vertibirdが飛び立つおおよその方角を見定め、走って跡を追った。そしてRavens Rockまで辿りつき、さてどう攻めるかと考えあぐねていたときに、その人物はやってきた。


 疾走する黒い影だった。


 その人物は跳躍するや、瞬く間にRavens Rockの扉とその護衛をしていた兵士たちを切り裂き、中に突入した。

 Fawkesは一瞬逡巡しかけたが、その人物を追って中に突入した。
 中で見たのは、紅白のバイク倒れ伏すRita、真っ二つに割れた巨大なコンピュータ、そのコンピュータから生える砲台のレーザーに貫かれる黒い影、そして床から迫り出したカプセルの中に入っている首が千切れたLynnの死体

 Fawkesは迷った。時間が無かった。すぐにでも兵士が駆けつけてくるかもしれなかった。


 倒れ伏したまま動かないRitaを抱き上げ、バイクに乗った。さすがに2人、しかもSuper Mutantを乗せては厳しいかとも思ったが、なんとか動いてくれた。
 Ritaは酷い怪我で、医者に見せなければいけないのは明らかだった。外の世界に出たばかりのFawkesにはどこに医者がいるのかわからなかったため、バイクのナビが自動で表示した場所を目指した。そこがCitadelだった。
 そしていま、Ritaは治療を受け、Fawkesは軟禁されている。

「そういうわけだ。わたしは見た。切断されたLynnの身体を。彼は死んだ」
『そう』女の声は、次の言葉を紡ぐまでにしばらく間を空けた。『じゃあ、あなたの言う黒い影は?』
「先にわたしのほうから聞いてもいいか? あの黒いのは、いったいなんだったんだ?」
『あれは……』
 また間が空いた。ようやく出てきた言葉は、絞り出すような声だった。
『あれも、Lynnだ』


 Ritaの目の焦点は合っていなかった。
 それも当然だろう。自白剤を大量に投与された痕があった。未だ半ば昏睡状態のようなものだ。身体には暴行の痕があり、膿んだ傷痕もあった。だが最も酷いのは右腕と右目だ。右目にはぽっかりと空洞が空いていて、右腕は肘から下が無かった。拷問の痕であろう。
 彼女は焦点の合わないひとつきりの目で、己の右腕があったはずの場所を見つめる。痛々しくて、見ていられない。

「Lynnは?」
 Ritaがぽつりと呟いたその言葉は、籠っていて最初はよく聞こえなかった。
「Lynnは、どこ?」
「彼は……、死んだ」
「そう」
 頷くRitaが話を理解しているのかいないのか、Sarahには見当がつかなかった。

「ここまであなたを連れてきたのは、FawkesというSuper Mutantだ。あなたに恩があるからって……、いまはもう、旅立った。ここの南にある歴史資料館で情報を集めてから世界を周るらしい。あなたが目覚めたらよろしくと言っていた」
「うん……」
 呆とした調子でRitaが頷いたとき、病室のドアが開かれた。入ってきたのはCapital WastelandのBOSの長にしてSarahの父であるElder LyonsとRothchildだった。

「父さん、Ritaはまだ………」
「ここではElderだ」とLyonsがSarahを制して言ってから、Ritaに視線を向ける。「Rita、きみが体験したことはFawkesの話とバイクの映像記録からある程度はわかった。だがEden大統領を名乗る人工知能との会話は不明瞭だった。きみの口から、話を聞きたい」
「G.E.C.K.は取られた」
 Ritaはゆっくりと言葉を紡ぐ。
「Enclaveは、浄化装置にFEVを仕込もうとしている」

 Ritaが語った話は、BOSが予期していないものだった。Enclaveの長、Eden大統領の正体と、それが仕込もうとしている新型のFEV。
 一通りの話を聞いたLyonsは、仰々しく頷いた。
「われわれは……、Enclaveのことを甘く見過ぎていたのかもしれない」


「今度はこっちの番だ」
 Ritaの目には、いつの間にか光が戻っていた。
「Enclaveの要塞に現れた、あの黒いのはなんだ。いま、どうしている?」


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