• 《カーリー》
    • 《上杉謙信》
    • 《ヒルデガルト》
    • 《シャクシャイン》


8-075S《カーリー》
インド神話

 彼女は話をやめた。そして目を閉じた。彼女は死んだ。
小泉 八雲 (著), 上田 和夫 (翻訳), 『小泉八雲集』, 新潮社; 改版, 1975.「お貞のはなし」, p181より

 デーヴァあるいはマハーデヴィ(大女神)はインド神話の女神である。
 破壊神シヴァの妻であり、シヴァのシャクティ(女性エネルギー)的側面を持つ。
 サティー、パールヴァティー、ドゥルガー、そして《カーリー》など様々な相として現れる。


[A]ライフを2支払う:ターンの終わりまでこのユニットのパワーを+500する。
 サティーは賢者ダクシャの娘であり、シヴァと結婚している。この名で呼ばれるときの彼女は、夫の名誉を護るために火の中に身を投げた自己犠牲の性質を司る。そのため寡婦が焚死する習慣のことをサティ―と呼ばれる。

 サティ―を失ったシヴァを慰めるため、彼女はパールヴァティーとして生まれ、踊り、歌い、美などを象徴する。

[A][黒][黒]:捨て札置き場にあるカードを1枚選ぶ。それをゲームから除外する。ターンの終わりまでこのユニットのATKを+2する。
 荒々しい性質はドゥルガーの名をもって象徴する。
 このときの彼女は10本の腕を持つ美女であり、虎を駆る。悪魔を殺すために10本の腕それぞれに異なる武器を持つ。剣と槍と矢とで悪魔たちを殺戮し、首を落として貪り食う。

 だが《カーリー》であるときの彼女は、ドゥルガーよりももっと恐ろしい。

 《カーリー》は地母神(豊穣神)である。
 黒い肌を持ち、牙を備えた恐ろしい顔には血が塗られている。また、額にはシヴァと同じく第三の眼がある。
 4本の腕があり、1本の腕は武器を、2本目の腕は血の滴る巨人の首を持っている。残りの2本は崇拝者を祝福するために上に挙げている。手には鋭い鉤爪がついている。
 赤子や蛇、息子たちの首で作ったイヤリングやネックレス、悪魔の手で作った帯以外は一切身に付けておらず、全裸である。舌を出して垂らしており、血を滴らせている。

 《カーリー》が踊りを始めると地が砕けてしまうため、シヴァが地面の上に横たわり、その衝撃を弱めるという。



8-097S《上杉謙信》
日本史(1530-1578)

 越後の竜と謡われ、戦国期で最強の一頭に数えられる武将。

 関東管領の上杉憲政に頼まれて相模の獅子こと北条氏康と戦い、村上義清に泣きつかれて生涯の好敵手となる武田信玄と戦い、足利義明の要請で第六天魔王《織田信長》と戦うなど、戦国の世の群雄たちと義を掲げて戦ったため、ときに義人と称される。

 甲斐の虎の異名を持つ武田信玄とは宿敵であり、天文22年(1553年)から永禄4年(1561年)にかけて5回行われた川中島合戦は戦国においてもっとも有名な合戦のひとつである。
 しかし当時の資料である『甲陽軍鑑』や『川中島五箇度合戦記』は信頼性に乏しく、その詳細については明かではない。


[T]このユニットが戦場から捨て札置き場に置かれたとき、あなたのデッキから【忍者】のユニットカードを1枚サーチし、ゲームから除外してもよい。そうしたならば、このユニットカードを戦場にワイプ状態で配置する。
 幼い頃、《上杉謙信》は父である為景の命令で曹洞宗の林泉寺に預けられ、厳しい戒律の下で修業を行った。
 為景が急死したのちには真言宗に帰依したが、こうした背景があったため、己が毘沙門天の生まれ変わりであると豪語し、軍旗に「毘」の字を掲げるとともに、「己は不死身である」と主張して戦場に赴いていた。

 また徳川家康が伊賀・甲賀者を、武田信玄が歩き巫女を、北条氏康が風魔忍軍を抱えていたように、《上杉謙信》も軒猿という抱えの忍者集団を擁していたといわれている。

[T]あなたのターンの終了時に、あなたのライフが対戦相手のライフより多いならば、対戦相手はカードを1枚引く。その後、対戦相手は手札を1枚デッキの下に置く。
「敵に塩を送る」という言葉の元となったエピソードは、駿河の今川氏真から塩の輸入を止められた内陸の武田信玄に《上杉謙信》が塩を送り付けたというものだが、真偽のほどは定かではない。
 《上杉謙信》と武田信玄は5度の合戦を繰り返したことから、互いに好敵手として認め合っていたのではないかと推測されることがあるため、後世の創作ではないかとの考え方が一般的である。

 塩のエピソードに関連してか、《上杉謙信》の嗜好も塩辛いものが好物だった。
 戒律には「不飲酒戒」という禁酒の戒律もあったがそれを破り、梅干しを肴に酒一升を飲んだといわれている。

 そのためか、現存する書状によれば厠で「不慮の中気」、つまり脳卒中により死亡したと伝えられている。
 辞世の句、「四十九年一睡夢 一期栄華一杯酒」(49年の生涯は一睡の夢であり、一代の栄華は一杯の酒と同じである)。享年、49歳。

 なお、戒律を理由に生涯不犯であり、伴侶や子を持たなかったことなどから《上杉謙信》女性説も囁かれている。
 八切止夫は死亡原因にもなっている中気は正しくは「虫気」あるいは「大虫」(婦人病の癪)ではないかと謙信女性説の根拠として挙げている。
 癪は女性が胸部、腹部などが生理痛で痛むことを指す。現在でも「癪に障る」「癪の種」などに語が残る。
 また、島原の乱ののちに編纂された『松平記』には、《上杉謙信》は「毎月10日間ほど腹痛を訴えて陣に引き籠る」など、やはり生理痛を示唆するような記述がある。
 書状には当時はふつう女性が用いるひらがなが多く用いられているなど、さまざまな形で女性説は囁かれるが、真相は闇の中である。



PR-061《ヒルデガルト》
ドイツ史/キリスト教史(1098~1179)

 キリスト教世界で「聖人」と呼ばれるのは、人知れず徳の高い人物などではなかった。列聖にせよ、列福にせよ、教皇庁が一定のマニュアルに基づいて認定するのだ。「聖人」として崇められるも、「福者」として讃えられるも、有体にいってしまえば、エリートたちの胸先三寸ということだ。だから、そう簡単にはいかないのです、と教皇は宥める口調で答えた。
「奇蹟を起こしていない者は、聖人にはなれない決まりがあるのです」
「だから、奇蹟ってなんなんだよ」
「奇蹟とは、すなわち、自然界の奇蹟、外自然の奇蹟、様式上の奇蹟、主体の奇蹟、本質の奇蹟、超自然の奇蹟と大きく別けられまして……」
「しちめんどう臭えなあ。ティファーヌみたいに話してくれよ」
「ティ、ティファーヌさまと申されますと」
「俺の女房じゃねぇか。博学面して、そんなことも知らないのかよ」
佐藤 賢一 (著), 『双頭の鷲〈下〉』,  新潮社, 2001. p49-50より

 ビンゲンの《ヒルデガルト》は幻視者であり、修道院長であり、作曲家であり、預言者である。
 神学の本を書く許可を教皇から得た最初の女性であり、著作や作曲にも女性としての先駆者として名を残している。


[T]このユニットが戦場に配置されたとき、[X]を支払ってもよい。そうしたならば、あなたのデッキからコストX以下の【歴史的事件】のヒストリーカードを1枚サーチし、戦場に配置する。
 ドイツの貴族の子として産まれた《ヒルデガルト》は10番目の子であった。
 旧約聖書レビ記では神に与えられたものの1/10は1/10税(タイズ)として神に返すことが定められており、それは子どもに関しても同じだったため、《ヒルデガルト》は「神に捧げられ」た。

 独房のような庵で祈りを続ける隠遁修道女、ユッタ・フォン・シュポンハイムに引き取られた《ヒルデガルト》は、姉代わりのユッタとともにベネディクト会男子修道院付帯の小さな庵で祈りを続けた。

 彼女が38歳になったとき、それまで世話をしてくれた姉代わりの修道女、ユッタが死亡。《ヒルデガルト》が修道女たちの指導者となる。
 その頃から《ヒルデガルト》は己が幻視体験で得たヴィジョンを書き留めるようになった。

 その後、幻視体験の記録や著作が教皇エウゲニウス三世の眼に留まるようになると、《ヒルデガルト》は積極的に修道女による自治管理や寄進献金の権利に関して議論し、教会の政策に関わり、女性の権利拡大に努めた。

 81歳で死亡した直後、ライン渓谷の上空に二つの弓上の光が現れ、交差して燃えるように輝いたと伝えられる。

 なお、キリスト教では信者の死後、その人物が「奇跡」を起こしていた場合、その人物の生涯を厳密に調査したうえで列聖(聖人として公認)される。
 しかしビンゲンの《ヒルデガルト》は現在でも列聖されていない。



PR-066《シャクシャイン》
日本史/アイヌ史(?~1669)

「俺の言葉が聞こえるか!」
 阿弖流為は最後の力を振り絞って、恐らくは処刑を見届けているだろう民らに叫んだ。
「俺たちはなにも望んでおらぬ。ただそなたらとおなじ心を持つ者だと示したかっただけだ。蝦夷は獣にあらず。鬼でもない。子や親を愛し、花や風に喜ぶ……」
 いくらも言いたいことはあった。だが、それ以上声が出てこない。阿弖流為ははじめて悔し涙を流した。蝦夷がなんであるのかきちんと伝えたい。
「蝦夷に生まれて……俺は幸せだった。蝦夷なればこそ俺は満足して果てられる」
 阿弖流為の首に大きな鋸が当てられた。
高橋 克彦 (著), 『火怨 下 北の燿星アテルイ』, 講談社, 2002. p542-543より

 《シャクシャイン》は寛文9年(1669年)6月、シブチャリ(北海道静内町)で松前藩に対し決起したアイヌ民族の総大将である。


[T]このユニットが戦場に配置されたとき、あなたの捨て札置き場にあるコスト2以下の勢力青のユニットカードを1枚選ぶ。それを戦場に配置してもよい。
[CB]カードを1枚引く。その後、手札を1枚捨てる。
 《シャクシャイン》の蜂起は欧米列強、特にロシアという脅威に対し、徳川幕府がアイヌの通商や交流を幕府のみとするように制限したことから始まった政治・経済的な争いが発端であった。
 当時のアイヌに戦う潜在力そのものは十分に残っており、ただ欠如していたのは戦いに火を点ける指導者だったところに現れたのが《シャクシャイン》であった。

 《シャクシャイン》らはまず和人の商戦や漁船を襲撃して焼き払うと、松前藩に向けて襲撃を開始した。
 《シャクシャイン》は蜂起開始から4ヶ月後に松前藩により謀殺されたが、総大将を失ってもなお、アイヌ民族と日の本の対立は三年の間続いた

 《シャクシャイン》の戦いによる死者数は、記録に残るものではアイヌ民族74人に対し、松前藩275人(あるいは355人)。アイヌ民族の記録は首長クラスにのみ数えられているものとしても、幕府側の死亡者は多く、これは突発的に起きた《シャクシャイン》の決起により、奇襲的に殺害されたという理由が大きい。
 《シャクシャイン》は北海道のみならず周辺列島のアイヌすべてに参加を呼び掛けており、単なる小競り合いではなく、アイヌ民族と日の下の最大の戦争であった。

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引用と参考文献

  • 相川 司 (著), 『上杉謙信―信長も畏怖した戦国最強の義将』, 新紀元社, 2007.
  • 一龍斎 貞花 (著), 『戦国武将 生死を賭けた烈語』, 中経出版, 2009.
  • ヴェロニカ イオンズ (著), 酒井 伝六 (翻訳), 『インド神話』, 青土社, 1990.
  • 海保嶺夫 (著), 『北方史史料集成』第4巻, 北海道出版企画センター, 1998.
  • 北島正元 (著), 『近世の支配体制と社会構造』. 吉川弘文館, 1983.
  • 小泉 八雲 (著), 上田 和夫 (翻訳), 『小泉八雲集』, 新潮社; 改版, 1975.
  • 佐藤 賢一 (著), 『双頭の鷲〈下〉』,  新潮社, 2001.
  • 志村 有弘 (編集), 『戦国武将奇聞―神仏信仰・呪術・異能力…群雄たちの知られざる真実』, 学研パブリッシング, 2010.
  • 高橋 克彦 (著), 『火怨 下 北の燿星アテルイ』, 講談社, 2002.
  • テレサ バーガー (著), 廣瀬 和代 (翻訳), 廣瀬 典生 (翻訳), 『女性たちが創ったキリスト教の伝統―聖母マリア マグダラの聖マリア ビンゲンのヒルデガルト アシジの聖クララ アビラの聖テレサ マザー・テレサ……―』, 明石書店, 2011.
  • 平山裕人 (著), 『アイヌの歴史――日本の先住民族を理解するための160話』, 明石書店, 2014.

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