アメリカか死か/16/02 The Pitt -2
「まったくもって、酷い処だな」
とRitaが呟けば、
「その通り。よくわかっているじゃない」
と来るのだから、溜め息しか出てこない。
周囲を放射能汚染された海に囲まれ、唯一の道である橋には地雷と野犬の群れで溢れかえっている。一歩でも外に踏み出せば奴隷監督官たちが躊躇なく発砲してくる、そんな場所で、汚染された土を掘り返し、鉄を運び、鋳造し、働かされている人々。赤い空。まさしく地獄絵図だ。
場所はPitt、奴隷区画。
まったく、こんなに酷いところだとは思っていなかった。いや、確かに説明では地獄か悪夢のような場所だと言われたが。
Ritaをこの場所に連れてきた眼帯の男、彼はWernherと名乗り、Capital Wasteland北西部、通称Pittという場所から逃げてきたのだと言った。
「放射能汚染、ミュータント化、疫病……、そして奴隷。あそこは悪夢そのものだ」
Wernherはそんなふうに語っていた。
その場所に、Ritaがなぜ訪れたかというと、簡単にいえばWernherに頼まれたからだ。
「奴隷にされている人々を助けられるかもしれないんだ」
と彼は言っていた。
もちろんそんなふうに頼まれて、簡単に承諾しているようでは、このCapital Wastelandを渡っていけるわけがない。Ritaは交換条件として、G.E.C.K.を要求した。
「なんだそりゃ?」
「知らんなら、いい。この話は無かった」
「いや、待て待て。えっと、そりゃ、戦前のものだったりするか?」
だったら、持ってるかもしれんやつを知っているぜ、とWernherは言った。だから、もしRitaがWernherの要求を達成できれば、それが手に入るように尽力する、と。
持ってるかもしれない、だ。しかも、手に入るように努力するというだけのことだ。
それを理解していたにも関わらず、Ritaは彼の依頼を受けてしまった。われながら不思議だった。Wernherという男の容姿と口調には、どこか引き込まれるようなものを感じた。
RitaはPittから来ていた奴隷商人の手から奴隷を買い取り、奴隷の服を手に入れ、WernherとともにトロッコでPittへと向かった。
そして、Wernherの手引きでPitt近郊まで近づいたRitaは、逃げだした奴隷のふりをしてPittに潜り込んだのだった。
いま目の前にいる女は、Mideaという名の奴隷だ。Wernherから、連絡を取るように言われていた相手である。
「こんなところ初めてでしょう? 酷過ぎて驚いたんじゃない?」
とMideaは自嘲する調子で言った。
「入り口のところで、撃ち殺される奴隷を見たよ」
「一思いに撃ち殺されたの? それは幸せだったでしょうね」と彼女は肩を竦める。「本題に入りましょう。ここはわたしの住処だけど、奴隷監督官がいつ来ないとも限らないから……。わたしたちがやるべきことは、Ashurの城への侵入よ」
「Ashur?」
「Pittのボス。Wernherから聞いてないの?」
「あんまり人の話を聞くのは得意じゃない」
RitaがWernherから聞いたのは、治療法を見つかった、という話だった。
「治療法だよ。あそこは汚染による疫病が蔓延しているが、それの治療法がわかったかもしれないんだ。いや、正確に言えば、そのPittの支配者が、最近治療法を手にしたことがわかった」
と。
「そのPittの支配者というのが、Ashur」とMideaが解説してくれた。「もう少しで、Ashurのほうから近づいてくる機会がある。ただ、それまで少し時間を潰さないといけない」
「じゃあ寝てる。長旅で疲れてるんだ」
「そういうわけにはいかない。あなたは奴隷だから。わたしもだけど。仕事をしていないと、怪しまれるでしょう。とりあえず、鋼鉄拾いの仕事に行くのがいいと思う。単純作業だし、Trogにさえ気をつければ……」
「Trogって?」
「Trogは………」
説明しかけたMideaの表情が険しくなる。一瞬の目配せ。Ritaは一歩だけ退く。
Mideaの住処の入り口のドアが開くと、Raider然とした恰好をした奴隷査察官が入ってきた。銃を構え、威圧する調子である。
「Midea! こんなところでこそこそ何を相談している? まさか、脱走の計画でも練っているのか?」
「違うわ、Jackson。ただ新入りの子に仕事のやり方を教えてあげているだけ……」
Jacksonという男は、おそらくはもともとMideaを怪しんでいるのだろう。明らかにMideaの説明を納得していない様子だ。
(ひとりか)
Ritaは服の下に忍ばせた.32 Pistolに手を伸ばす。背後から襲うのは簡単そうだ。
ほぼ同時刻。
Pittの入り口に、とある奇妙な風体の人物がやってきた。
Pittを守る奴隷監督官たちは銃を構えて、その男に対面した。そして、もし彼らがCapital Wastelandに住んでいれば、まずしないようなことをしてしまった。男を銃で撃ったのだった。
一瞬ののち、男は黒い風になった。
「おまえは……」
腹を特殊なPower Fistで貫かれ、息も絶え絶えになった奴隷監督官は風の名を問う。。
「Masked Raider」
黒い風の返答を、奴隷監督官は聞かずに死んだ。
死体を見下ろすと、男は変身を解き、そして呟いた。
「Rita……、本当にここにいるのか?」
と。
とRitaが呟けば、
「その通り。よくわかっているじゃない」
と来るのだから、溜め息しか出てこない。
周囲を放射能汚染された海に囲まれ、唯一の道である橋には地雷と野犬の群れで溢れかえっている。一歩でも外に踏み出せば奴隷監督官たちが躊躇なく発砲してくる、そんな場所で、汚染された土を掘り返し、鉄を運び、鋳造し、働かされている人々。赤い空。まさしく地獄絵図だ。
場所はPitt、奴隷区画。
まったく、こんなに酷いところだとは思っていなかった。いや、確かに説明では地獄か悪夢のような場所だと言われたが。
Ritaをこの場所に連れてきた眼帯の男、彼はWernherと名乗り、Capital Wasteland北西部、通称Pittという場所から逃げてきたのだと言った。
「放射能汚染、ミュータント化、疫病……、そして奴隷。あそこは悪夢そのものだ」
Wernherはそんなふうに語っていた。
その場所に、Ritaがなぜ訪れたかというと、簡単にいえばWernherに頼まれたからだ。
「奴隷にされている人々を助けられるかもしれないんだ」
と彼は言っていた。
もちろんそんなふうに頼まれて、簡単に承諾しているようでは、このCapital Wastelandを渡っていけるわけがない。Ritaは交換条件として、G.E.C.K.を要求した。
「なんだそりゃ?」
「知らんなら、いい。この話は無かった」
「いや、待て待て。えっと、そりゃ、戦前のものだったりするか?」
だったら、持ってるかもしれんやつを知っているぜ、とWernherは言った。だから、もしRitaがWernherの要求を達成できれば、それが手に入るように尽力する、と。
持ってるかもしれない、だ。しかも、手に入るように努力するというだけのことだ。
それを理解していたにも関わらず、Ritaは彼の依頼を受けてしまった。われながら不思議だった。Wernherという男の容姿と口調には、どこか引き込まれるようなものを感じた。
RitaはPittから来ていた奴隷商人の手から奴隷を買い取り、奴隷の服を手に入れ、WernherとともにトロッコでPittへと向かった。
Challenge: Speech(83%)→SUCCEEDED
Pay: 600 Caps
Added: Tattered Slave Outfit
Added: Concealed .32 Pistol
そして、Wernherの手引きでPitt近郊まで近づいたRitaは、逃げだした奴隷のふりをしてPittに潜り込んだのだった。
いま目の前にいる女は、Mideaという名の奴隷だ。Wernherから、連絡を取るように言われていた相手である。
「こんなところ初めてでしょう? 酷過ぎて驚いたんじゃない?」
とMideaは自嘲する調子で言った。
「入り口のところで、撃ち殺される奴隷を見たよ」
「一思いに撃ち殺されたの? それは幸せだったでしょうね」と彼女は肩を竦める。「本題に入りましょう。ここはわたしの住処だけど、奴隷監督官がいつ来ないとも限らないから……。わたしたちがやるべきことは、Ashurの城への侵入よ」
「Ashur?」
「Pittのボス。Wernherから聞いてないの?」
「あんまり人の話を聞くのは得意じゃない」
RitaがWernherから聞いたのは、治療法を見つかった、という話だった。
「治療法だよ。あそこは汚染による疫病が蔓延しているが、それの治療法がわかったかもしれないんだ。いや、正確に言えば、そのPittの支配者が、最近治療法を手にしたことがわかった」
と。
「そのPittの支配者というのが、Ashur」とMideaが解説してくれた。「もう少しで、Ashurのほうから近づいてくる機会がある。ただ、それまで少し時間を潰さないといけない」
「じゃあ寝てる。長旅で疲れてるんだ」
「そういうわけにはいかない。あなたは奴隷だから。わたしもだけど。仕事をしていないと、怪しまれるでしょう。とりあえず、鋼鉄拾いの仕事に行くのがいいと思う。単純作業だし、Trogにさえ気をつければ……」
「Trogって?」
「Trogは………」
説明しかけたMideaの表情が険しくなる。一瞬の目配せ。Ritaは一歩だけ退く。
Mideaの住処の入り口のドアが開くと、Raider然とした恰好をした奴隷査察官が入ってきた。銃を構え、威圧する調子である。
「Midea! こんなところでこそこそ何を相談している? まさか、脱走の計画でも練っているのか?」
「違うわ、Jackson。ただ新入りの子に仕事のやり方を教えてあげているだけ……」
Jacksonという男は、おそらくはもともとMideaを怪しんでいるのだろう。明らかにMideaの説明を納得していない様子だ。
(ひとりか)
Ritaは服の下に忍ばせた.32 Pistolに手を伸ばす。背後から襲うのは簡単そうだ。
*
ほぼ同時刻。
Pittの入り口に、とある奇妙な風体の人物がやってきた。
Pittを守る奴隷監督官たちは銃を構えて、その男に対面した。そして、もし彼らがCapital Wastelandに住んでいれば、まずしないようなことをしてしまった。男を銃で撃ったのだった。
一瞬ののち、男は黒い風になった。
「おまえは……」
腹を特殊なPower Fistで貫かれ、息も絶え絶えになった奴隷監督官は風の名を問う。。
「Masked Raider」
黒い風の返答を、奴隷監督官は聞かずに死んだ。
死体を見下ろすと、男は変身を解き、そして呟いた。
「Rita……、本当にここにいるのか?」
と。
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