そう、逆だ。《再臨の銀聖王 アスハ》から《理法の元首 ロギナス》に繋がるわけではない。
 →第6弾フレーバー考察でアトランティカで敗北した《ロギナス》が世界を渡り、レ・ムゥに辿り着いてシャダスを建国したのだ――そもそも【ロジカ】は未来から過去へとやってきた存在なのだから、さらに過去へと移り、レ・ムゥへとたどり着いたのだ。

《ロギナス》に関して続ける前に、【ロジカ】とは無関係ではない神に関する話をしたい。【ロジカ】たちは精霊神であるヴェスたちを否定しようとしていた。

 →第5弾フレーバー考察で述べたように、アトランティカの精霊神は元はクロノグリフに記述された一存在でしかなく、神などではなかった。彼らは闇の世紀から新たな世紀を作り出した存在であり、その功績――あるいは犠牲――によって精霊神へと昇華した。

15-018U《英雄神化》
『聖光子ヴェスの前に、その日、不可思議なる神意の使者が舞い降りた。』
~「第四の光の世紀の始まり」~

《英雄神化》はその名通り、精霊神になろうとしている《第四界の聖光士 ヴェス》の姿を描いており、手前が彼女だ。では奥にいる存在はなんだろうか? 
 フレーバーでは「不可思議なる神意の使者」と述べられている存在は単なる【天使】にしては仰々しく、複数の輪のような装飾と蝉のようなどこか原始的な薄い羽を持ち、花輪のような文様を背負った荘厳な雰囲気を持つ。彼女は果たしてどんな存在なのか?

 まず先代の精霊神の可能性が考えられるが、三代目の《エン・ハ》とは明らかに雰囲気や装飾、おっぱいが違うため、これは否定できる。
 であれば次に考えられるのは、精霊神よりも上位の存在――すなわちザインであろう。

《英雄神化》のカテゴリは【奇跡】である。
【奇跡】というカテゴリについては→第2弾フレーバー考察でその特殊性について述べた。

 つまるところ、クロノグリフに記述されたとおりにしか運命が進まぬこの世界において、そうそう奇跡などと呼べる出来事は起こり得ない。
 だがザインがクロノグリフを作り出した存在であるなら、ザイン自身はクロノグリフに記述されている存在ではないということになる。
 であれば、ザインが直接力を授けるこの《英雄神化》は、すなわち【奇跡】と呼ぶことができるだろう。

 そういうわけで、奥の女性がザインと考えることはけっして間違いではないだろう。ザインは美女。そして設定を作る滝先生も美少女。つまりザイン=未来の滝先生。
 ちなみに生放送などで滝先生を名乗る人物が現れたことがあるが、あれは偽物というか外装で、本体の美少女はあの外装の中に格納されている。調律師であり、性能としてはパワーファイターだが、必殺技入力時に方向キー入力で性能が変化する技があることは覚えておきたい。

 さて、ザイン(と呼んでしまうことにする)には輪と羽のようなものが見える。輪は3つあり、その形状をメタ的に考えると、おそらくCAの暗喩なのだろう。
 だがメタ的な思考とはまた別に、この姿について考えると、ひとつ思いつくことがある。ザインは輪と羽を持つ女性の姿であり、神だ。そのような姿を持ち、神格化された存在。そんな存在をひとり――否、ひとつだけ思い浮かべることができる。


《可能性の黒極神 ダロス》ではその意匠は消えているが、《神威の抹消者 ダロス》の形態では、腰に輪のような機関(あるいは器官)があり、突き出たパイプはさながら羽のようだ。また、手から出ている謎の花のようなものはダロスではロジカの文様めいた形で生じている。
 すなわち、《ダロス》はザインと似た姿をしているのだ。

 ここから、時空間を行き来する【ロジカ】が《ダロス》ごと過去へと戻ったのが始祖の神ザインである、などとするのはトンデモであるし、動機や目的からして明らかに不自然である。

 そうではなく、ここで書きたいのは「ダロスはザインをモデルとして作られたのかもしれない」ということである。

 ザインの存在は少なくともアトランティカではある程度周知されており、それが《英雄神化》のように顕現することもあったはずだ。ならばその容姿もある程度は伝わっているのだろう。
《ダロス》を作り出した【ロジカ】は創造神ザインの存在は否定してはいない。彼らが否定するのはヒトから精霊神へと成り上がった精霊神のみである。
 であればその精霊神を否定するにあたり、新たな神――《ダロス》を作り出すにあたり、精霊神の上位存在であるザインの容貌を真似るというのはありえそうなことではないか?

 であれば、レ・ムゥでの【天使】が機械化されている理由も理解できないでもない。
 天使というものはキリスト教やイスラム教の要素であり、現代では羽の生えた幼子や美女の姿で描かれることが多いが、もとは羽など生えてはおらず、梯子で天国と地上とを行き来していた。だから天使に羽は必須というわけではない。必須ではないが――彼らはそれを求めた。

15-019C《白輝昇天の奇跡》
シャダスの聖女はその神塔で祈り続け……数年後、大いなる奇跡はレ・ムゥの天空に、その証を浮かび上がらせた。

【天使】になるということは神の意思を伝える存在になることでもある。
【ロジカ】たちは亜神を否定しようとした。だが彼らは神――ザインまでも否定したわけではない。ヒトが神になるのはおこがましいと諭しただけなのだ。
 そしてレ・ムゥでは偶像崇拝を禁じるかのように、亜神の影は(最終的に黄金儀式を受ける《アルマイル》を除き)現れない。それは偉大なる小太陽が信仰対象であったためでもあるが、精霊神否定の信仰があるようにも感じられないでもない。

 敗北を喫した【ロジカ】たちは当時何もなかったレ・ムゥへと移り住み――そこで己らを、そして他種族を、神の尖兵となるべきように変化させていったのであろう。あるいは【スワント】、【ミノタウロス】、【オーク】、【人魚】、【ヘルネブ】というように、レ・ムゥとアトランティカで似た種族がいるのもこれが一因かもしれない。
 彼らは最終的に、己の身を犠牲にして世界の崩壊を食い止めようとした。それが神の――ザインの意思に通じるかどうかは、知りようもない。

 であれば、《ロギナス》の鳥のイメージにはこの時点ではなんら意味などないのだ。このあとで、彼はこの羽の要素を受け継ぎ、【天使】たちの祖となるのだから。





 黒の話に移る。

 黒の〈狂気の悲哀〉に対応するのが14弾の《悲哀の果て》に対応するのは間違いないが、そこに対応する人物が登場していない。

15-084R《黒夢の亡史の神柱》
「それはたとえば、滅びた夢、狂気の悲哀、魔の軍勢の姿となって世界に刻まれる……」
~ザインの宇宙詩~

《悲哀の果て》に直接関連する人物といえば、《黒覇帝 ゴルディオーザ》か《夜露の神樹姫 ディアーネ》、はたまた《ゴルディオーザ》が変化した《狂暦の魔覇者 ゴズ・オム》であろう。だがそれらの人物はひとりたりとも15弾には登場していないのだ。

 登場していないのならば、では登場していると考えてみよう。考えるのは自由だ。
 登場していると考えてみたとき、誰が《悲哀の果て》に関連付けられるか?

 それについては既に→第14弾フレーバー考察で記述した。

15-074S《転魂の世界渡り べリス・ベレナ》
私は、この世全ての運命の恋人――どこにでも宿り芽生える、無限の愛欲の止まり木。いつかどこか、世界の彼方でまた会いましょう……それまでしばし、ごきげんよう。

《転魂の世界渡り べリス・ベレナ》で書かれているのは思わせぶりなフレーバーだが、思わせぶりなことを言うだけ言って煙に巻いて逃げるだなんてことは、藤田Pや滝先生が許してもわたしは許せない。
 たとえ《ベリス・ベレナ》の正体についてハンドブックでこれから述べる内容に対応しない情報が記述されていたとて――それはフレーバーの外なのである。でなくても、著者:浅原晃なのであれば、こちらに信用する理由はないというものだ。税込1,080円で好評発売中。

 ところで――話が変わるようだが――《ベリス・ベレナ》という名前からは何を連想するだろうか?

 こんな曖昧な問いかけに対する回答はひとによってまちまちかもしれないが、自分はベラドンナを連想する。
 ベラドンナ (Atropa bella-donnna)はナス科(Solanaceae)アルカロイド系の毒を持つ花で、その毒を微量に瞳に垂らすと瞳孔が開いて黒目が大きくなるので点眼液として用いられることもあり、古くには《クレオパトラ》もベラドンナを用いた目薬を使っていたという。イタリア語で「美しい女性」を示すベラドンナという名は、ここから由来するのだろう。日本ではオオハシリドコロという名で知られるが、ハシリドコロは別名キチガイイモといわれ、日本では毒性の強さが取り上げられていたことがよくわかる。

 そんなベラドンナの花言葉は「人を騙す者の魅力」であり、毒を持つ植物に相応しい名であるといえる。

 一方、ベラドンナの名を持つ、Atropa bella-donnnaとは種を異する花はほかにもあり、たとえばベラドンナリリー(Amarilis belladonnna)がそれだ。こちらはナス科ではなくヒガンバナ科で、ベラドンナとは種が違う。

 ベラドンナリリーの花言葉は「ありのままの私を見て」。

 であれば、ベラドンナの名を持つ女は騙そうとしながら自分の真の姿を知ってもらいたがっているのだから厄介なのだ。

 さて、本筋に戻るが、《ベリス・ベレナ》は〈転魂の世界渡り〉である。
 ではそもそも「転魂」とは何か? 造語であれば正しい意味を読み取るのは容易ではないが、おそらくは元となった語は「転生(あるいは輪廻)」であろう。たとえばキリスト教であれば(カトリックかプロテスタントか東方正教かで多少の違いはあるが)、死んだ人間は審判の日に生き返る(だから土葬が一般的である)が、輪廻転生観では死人は後生に転生する(だから火葬が一般的である)。輪廻転生は仏教で馴染み深いので東洋的な価値観に感じられるが、実際は世界的に流布されている考え方だ。

 さて、こういった輪廻転生的な価値観では魂とは死後もなお残る個であり、来世に受け継がれるものである。
 だがヴァルハラ宇宙で魂をソウルという言い方をすると、少しばかり違う印象を感じずにはいられない。ソウルは万物の原動力であり、であればソウルストーンからソウルが生み出され、それが召喚に使われる。
 しかし《ベリス・ベレナ》の場合、「魂」の意味するところは我々の価値観と同じといって良いだろう。死して残る何か、個を個として在らしめる何か、だ。

《ベリス・ベレナ》に関しては→第11弾フレーバー考察で《ベリス・ベレナ》=《闇の全知者 ヴァイヤ》説が出たあと、→第14弾フレーバー考察でそれを否定し、《夜露の神樹姫 ディアーネ》=《ヴァイヤ》説をぶち立てた。
 そもそも、なぜ《ディアーネ》=《ヴァイヤ》説をぶち立てたかといえば、それは以下のふたつの理由による。

  1. なんらかの有効手を持つ者がいないのでは、アトランティカが《滅史の災魂 ゴズ・オム》に勝てない
  2. 髪の色の変化
  3. ゾルシウスの唐突な登場

 3は意味がよくわからないという方もいるかもしれないが、推理小説で言えば、意味もなく中国人を出してはいけないようなものである。出た以上は意味があるのである――いやあるよね? 誰かが生き返ったということは、「誰かが生き返る」ということを示唆する伏線なのである――あるはず。たぶん。きっと。

15-072S《絶夢の魔黒医 オルシャ》
あら、魂の憂いを治す薬だけはどこにもないわ! 希望を捨てた後には絶望が、絶望を捨てた後には……死体が残るのよ。

 15弾で、『昇華』テキストから《ベリス・ベレナ》=《ヴァイヤ》が示唆されたことで、この《ディアーネ》=《ヴァイヤ》説は完全に否定された――かのように見えた(ちなみに15弾で《黒の覇王 ザルス・ヴァ・ラム》が登場したことで《黒覇帝 ゴルディオーザ》=〈黒の覇王〉説は逆に途絶えた)。
 だがそんなことはない。簡単な話である。
 つまり、《ベリス・ベレナ》=《ヴァイヤ》=《ディアーネ》である。

 何を言ってらっしゃるのと思うかもしれない。《ベリス・ベレナ》と《ディアーネ》は同じ世界に存在しているじゃないかと思うかもしれない。
 だが考えてみてほしい。今回の戦場がさまざまな世界線から英雄たちが集う神闘場である意味を。今回の舞台は、これまでにも世界線を跨いで存在している人物がいるということの暗喩なのだ。

 すなわち、ある世界の《ベリス・ベレナ》と《ディアーネ》は別人だが、別世界の《ディアーネ》が同一であると考えればよいのだ。
 まずスタートするのはとある世界線のレ・ムゥ――これをレ・ムゥAと呼ぶ――の《ディアーネ》からだ。彼女は我々が知るレ・ムゥと同じように《ゴルディオーザ》の実験に使用され、死亡した。だが生き返った。

 いや、転生したというべきか。もっといえば、転魂だ。

15-075C《慟哭の腐色軍団》
「希望は腐り落ちても、怨念は腐らずに残るものよ。」
~恐冥の戦導姫 キカ~

 このとき、→第14弾フレーバー考察で述べた内容と違うのは、彼女は生き返ったあとでアトランティカを目指さなかったということだ。彼女が渡ったのは、異なる世界線のレ・ムゥ――レ・ムゥBと呼ぶ――の過去であった。【ロジカ】ごときが時を渡れたのだ。であれば《ベリス・ベレナ》が時を渡ることくらい簡単なことだろう。
 その後、レ・ムゥBの歴史の流れがレ・ムゥAと同じになるように操り――己自身を見捨てながら――崩壊した世界をあとに彼女はアトランティカへと渡った。渡り――そして→第14弾フレーバー考察と同じように《黒の覇王》に取り入った。

 そうまでした彼女の目的とは何か? 前世と同じように――同じようになるようにレ・ムゥ世界を操りながら、彼女は何を目指したのか? 過去のレ・ムゥをなぞるだけでは新たな《滅史の災魂 ゴズ・オム》が生じてしまうのではないか? 彼女は何を求めているのか?
 それは、彼女が倒そうと――そして救おうとしたのは、己の知る男であり、別の世界線の〈狂暦の魔覇者〉ではなかったからではないだろうか。異なる世界。異なるレ・ムゥを救ったとて、それは真なる救いにはならないからではないだろうか。

 であれば、己の歴史を辿った〈滅史の災魂〉を倒すためには、彼女の手にはないものを手に入れる必要があった。死を通してのみ作り出された、魂を石に込める力が。黒く塗りつぶされた女には手に入らない力が

15-109S《双魂姫 レティシャ・メニズマ》
その日、非業の荒波に弄ばれた魂は、数奇な運命を乗り越えて一つになった。あらゆる罪を浄化し希望を導く、真白き翼を輝かせて。






 この〈神闘場〉はメタ的に見れば、番外編というか、サービス回というか、温泉水着回みたいなもので、すなわちサービス終了に伴い、貯めてあった設定を適当につなぎ合わせただけのなのだと、なぜならばラストクロニクルは終わるのだ。であればこれは最後の花火のようなもので、そこに背景や設定は何もないのだ――そんなふうに考えるのが当たり前だ。

 だが本当にそうなのか?
 神闘場はそれ以上の意味はないのか?

15-080U《魔生物学者 ダービル》
……だが、なんとここでは、死は終わりではなく、新たな進化の始まりなのだ! 実に興味深いと思わんかね!

 少し話が変わるようだが、《魔生物学者 ダービル》のフレーバーで述べられている内容は少々興味深い。彼は死について語っているが、「ここでは死は終わりではない」と述べている。では、「ここ」とはどこか? バストリアではないだろう。なぜならば、彼は召喚英雄ならともかく、現地英雄だからだ。生まれ育った場所でいまさら驚くもないからだ。素直に考えれば、この《ダービル》のフレーバーは、神闘場に来てからの語りであるとするべきであろう。
 
 彼は述べる。神闘場での死は終わりではなく、新たな進化の始まりだと。
 カードテキスト的にいえばこれは【ドラゴン】を捨て札から回収し、さらにライフゲインを行うシナジーを表しているだけだが、ではなぜそのシナジーが「ここでは」起きるのか?

 神闘場での闘いは、本当に戯れのようなイレギュラーな事態なのだろうか?
 この場所での闘いはヴァルハラ宇宙に――特にアトランティカ世界にとって必要な出来事だったから、生じたのではないだろうか。

15-057C《雷角生まれの雷力師》
神闘場の出現によってねじれた歴史……本来はあり得ないはずだった二つの世界の交わりは、奇妙な力と特徴を持つ者を生み出した。

 ここに奇妙なカードが存在する。それは《雷角生まれの雷力師》で、ここに書かれているフレーバーは、神闘場が単に異世界から召喚された者を闘わせるのみならず、複数の世界の能力を有するう存在さえ生み出したということを示している。
《雷角生まれの雷力師》の場合、混ざったのはゼフィロンとヴェガ、同じ紫の力であったが、これが別の色であったらどうだろう。それはマルチソウルとなるのではないか。

 →14弾のフレーバー考察、そして→第4弾のフレーバー考察で述べたように、《滅史の災魂 ゴズ・オム》を倒すためにはマルチソウル――交魂英雄の力が必要だった。

 古代中国に伝わる毒術に蠱毒と呼ばれるものがある。これはひとつの壺の中にさまざまな毒虫を混在させ、殺し合わせることで、生き残った最後の一匹を特別な毒とする呪法である。
 マルチソウルが《ゴズ・オム》を殺すための毒だとすれば、さながらこの神闘場は、マルチソウルを生み出すための蠱毒なのではないだろうか?

 この神闘場の真の姿を明らかにする前に、そもそもマルチソウルとは何かということを考えねばならない。
 問に答えるためには、ラストクロニクル初期の設定を辿る必要がある。
 アトランティカ以後はその意味付けが失われてしまったが、もともとラストクロニクル世界でザインの使徒がクロノグリフに干渉するには、ソウルストーン(SS)が必要だった――これはゲーム上ではSSをワイプすることでソウルを生み出し、ユニットを召喚したり、スペルを唱えたりすることに反映されている。

  • グランドールの白輝石(シルヴァライト)
  • ガイラントのアンクア
  • ゼフィロンの紫雲石(ユーカリス)
  • バストリアのダークマテル
  • イースラのミスラム

 ソウルストーンは名前にソウルとあるが、その産出方法はというと、どうやら他の鉱石と変わらず掘削などによって得られるものらしいが、あるいは『魂石化』を考えればそれらは遥か昔の英雄たちの魂の欠片なのかもしれない。
 重要なのは、それらには精霊力が宿っているということであり、ザインの使徒の戦いには不可欠だということだ。

 そんな重要な魂石の設定であったが、陽光編レ・ムゥに入ると魂石に深く関わる能力『魂石化』のテキストは世界からその姿を消す。

→『魂石化』and『陽光プラスワン構築』で検索

 それは陽光世界では魂石化の技術が既に失われてしまったからかもしれない。天空世界には存在しているのだから、過去には存在していたのだろう。だが、神歴召喚術に頼る間に、人々は魂を石に刻むことを忘れた――可能なのはデッキやCAヤードから直接SSを増やす行為で、使い回しでもしない限りはテンポ的にはこちらのほうが優秀な場合が多いのだが、それはともかく、陽光世界には魂石化は存在しない。

 だが唯一、召喚英雄以外で魂石化に近い技術を持つ人物がいる。

15-042R《遥遠なる赤史の神柱》
「それはたとえば、大種族の栄え、真の強者の昇天、英魂の酒宴……あらゆる力と祝ごとの象徴として、世界に刻まれる……」
~ザインの宇宙詩~

 その名は《黄金の宿命 アルマイル》。②橙橙というコストと【黄金覇者】を捨てることで、ユニット1体をソウルヤードに配置する効果を持つ。
 似たような能力として、《赤魔将 豪砕のダズール》や《地宝剣の大闘神官 レト》も遠からずの力を持っているが、これらは条件があり、限定的だ。

《アルマイル》は違う。彼女は『魂石化』を――しかも自分以外の他者の魂をも石に刻む技術をいつしか習得していた。あるいは彼女に限らず【黄金覇者】というものは、そうした能力を持つものなのかもしれない。
 でなければ、→第12弾フレーバー考察でも解説した《勇士の継承》によって、彼女は新たにその失われた力を獲得したのかもしれない。

 なんにしても、彼女の『魂石化』の力は他人に付与するほどに絶大である一方で、【黄金覇者】――すなわち自分自身を捨てなければいけないほど重い代償が必要だった。
 だが既に、彼女はその代償を払っているのだ。彼女は黄金儀式によって現世での現身を捨て、亜神へと昇華した。彼女は黄金航路への道を作り出したのだ――そして、彼女がしたことはそれだけではなかった。

 そう、この神闘場を作り出し、神柱によって英雄たちを召喚したのはザインではなく、亜神と化したアルマイルなのだ。

 そもそもレ・ムゥ世界では闘技場はオルバランやヴェガに存在するものだということは、《赤陽の美闘者 ティナ》のフレーバーからも知れる。

PR-128《赤陽の美闘者 ティナ》
神闘場だか何だか知らないけど、猛者に会えるなら大歓迎ね!
オルバランやヴェガの闘技場には、もう飽きていたところだもの!

 なぜ最終弾であるラストクロニクル第15弾公式ハンドブック~HCGC(ハイパーカードゲームクリエイター)浅原晃が全カードを開設!~(著:浅原晃)のPRカードが《ティナ》だったのか? それは、オルバランの者がこの神闘場を作り上げたことを示唆していたのだ。この蠱毒の舞台を。

 神闘場の蠱毒については、こうも表現できる。この多次元宇宙ヴァルハラはまさしくヴァルハラ館なのだ、と。
 →第1弾フレーバー考察でも述べたが、ヴァルハラという名前は北欧神話の主神である〈絞首台の主〉ことオーディンの館が由来だ。オーディンは〈力の滅亡(ラグナレク)〉に訪れる己の死の予言に抗うため、強力な戦士を求めた。豊穣神フレイヤが黄金の首飾りブリーシンガメンを手に入れるために4人の醜い小人と同衾したことを知った彼は、その行為を見逃す代わりに、彼女に英雄の魂の収集を求めた。
 かくてフレイヤは猫の牽く戦車を駆って人間世界ミッドガルドに降り立ち、英雄たちの魂を収集するようになったのである。

 このエピソードは、あるいは最初の〈戦乙女(ヴァルキューリ)〉の誕生といっても良いかもしれない。一般にオーディンの妻といえばフリッグだが、古今東西の神話というものはいくつかのエピソードが重なり合い、伝承されていくうちに様々な神々が重なり合い、また融合している。フレイヤなら現在一般的とされている美神や豊穣神としての性質のほか、オーディンの妻としての性質もあり、また戦乙女の側面もあった。
 フレイヤや戦乙女によって集められた英雄――エインヘリヤルはヴァルハラ館に集められ、日の出とともに起きて朝食を取ったあとは外に出て殺し合う。そして夜になると生き返って起き上がり、飯を喰って寝るという生活を送ることになる。こうして互いを殺し合うことで研鑽した英雄たちは、〈力の滅亡(ラグナレク)〉では540あるヴァルハラ館の扉から800人ずつ、すなわち43万の英雄が飛び出して敵を殲滅するのである。

 →第1弾フレーバー考察では、召喚英雄たちを〈英雄〉のようだと呼んだ。だがそれは正しくはなかった。彼らはただ外から連れてこられた英雄であり、利のための戦争の兵として用いられるだけの存在だった。

 この15弾の英雄たちこそが、互いに闘わせることで鍛え、真なる敵を最終戦争にて滅するための〈英雄〉なのだ。

 マルチソウルの話に戻ろう。
 レ・ムゥで誕生した《ゴズ・オム》は《宝種複製邪法の完成》によって、あらゆる精霊力、あらゆる魂石の力を操ることを可能とした。あらゆる精霊力を操れるなら、その精霊力による攻撃は功をなさないだろう。フレイザードにベギラマやマヒャドを打っても効かないようなものだ。それぞれの手で防がれてしまう。
 だが同時に撃てば話は別だ。メドローアだ。違う。そうでなくても、双つの力を持つ攻撃は、あらゆる精霊力を操る《ゴズ・オム》にも防ぐことはできない。なぜならば、5種類のソウルをそれぞれ生み出すことが可能ということと、5種類のすべての力を同時に扱えることは別だからだ。

 だから、マルチソウル――交魂能力を持つ英雄が必要だった。交魂英雄が。
 だから、作り出さなければならなかった。

 第15弾のほとんどのフレーバーは神闘場に招かれた英雄たちを語るものであるが、一部のみ、ストーリーラインを補強するフレーバーが存在する。たとえば《ヴァルハラ世界樹の霊光》がそうだ。

15-039C《ヴァルハラ世界樹の霊光》
「小太陽が、まさか世界樹の実であったなどと……にわかには信じ難い真実ですわ!」
~大神官ハルモネ、黄金航路の船上にて~

 小太陽が世界樹の実であることは既に→第13弾のフレーバーで語られているため、ザインの使徒たちにとっては目新しい情報ではない。
 しかし《黄金儀式の大神官 ハルモネ》がそれを観測し、知ったというのは大きな情報である。フレーバーによれば、これは黄金航路……すなわち陽光世界を脱出したあとの出来事なのだとわかるが、イラストのような情景を見ているとすれば、黄金船団は世界を包むヴァルハラ世界樹を観察可能な場所に出たということだ。すなわちそれは、レ・ムゥの外の世界だ。
 →第14弾フレーバー考察で述べたように、陽光世界で唯一【交魂術】を扱える《双魂姫 レティシャ・メニズマ》は交魂英雄誕生のための鍵だ。彼女はこの外宇宙でクロノグリフに干渉しようとした。だがいくら【交魂術】が扱えようと、ザインのクロノグリフを改竄するのは容易なことではない。

 だから、亜神と化した黄金船団の守り神、アルマイルが手を化した。
 世界を超え、時代を超え、魂を交わさせた。
 ――そしてアトランティカの頁に新たに多数の魂換英雄を生み出した。

15-040U《新緑世界への芽吹き》
レ・ムゥではない異世界において指し示された、新たなる未来……黄金の種は、再び必ずそこで芽吹き、巨大な希望の根を張るだろう。

 さらに《新緑世界への芽吹き》のフレーバーは「レ・ムゥではない異世界」と「黄金の種」について語る。
 ちなみに《新緑世界への芽吹き》は光碧CAだが、たとえばレ・ムゥ出身の《リンディ》なんかも光碧CAなので、セゴナがもとはレ・ムゥ出身であることを考えても、光碧CAが必ずしもレムリアナと関連あると考える必要はなさそうである(設定ミスかもしれないが、そうなったら藤田Pが悪い)。

「レ・ムゥではない異世界」とは何か? アトランティカである。
「黄金の種子」とは何か? 〈黄金覇者〉ことアルマイルが作り出した【宝樹】の――おそらくはヴァルハラ世界樹の実である【宝種】を元とした種である。

《ゴズ・オム》は陽光世界を掌握したそのすぐあとにアトランティカを目指したわけではない。彼は「ある時」その存在に気づいた。そして舌舐めずりしたくなるような【宝樹】の匂いに誘われて、アトランティカへとやってきたのだ。
 であれば、アトランティカで最初に隆盛したのがアルマイルと同じく地の力を持つ《ガイラ》だったのも偶然ではなかったのかもしれない。彼女の撒いた餌となる黄金の種子は、大地の力を育んだのだ。→第3弾フレーバー考察で述べたとおり、異世界の最初の侵略者は時空の破断を利用してやってきた。それならば、逆にその時空の切れ目を利用して誘い出すことも容易いことなのだ。

 この〈神闘場〉での戦いは無駄ではない。なぜならば、この戦いの先に道があることがわかっているから。まだ、戦い続けているから。まだ、終わっていないから。だから。

「おれたちは情報軍の人間だ。情報・通信に関するプロだぜ」と降旗。「それでだ、考えるにだな、死とは、コミュニケーションがまったく不可能になることだ、とわたしは定義したい。重大な発見だ。ちがうか」
――『死して咲く花、実のある夢』(著:神林長平)No.131/3166より

 だから、まだ死んでいない。



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